384.光の魂、闇の魂。
バトル回、開始。
そもそもこの世界において魂というものは、リソースの一種、であるらしい。
神様目線だと、って話ねこれ。
で、リソースである以上、本来、魂そのものは属性を持っていない。
我々、魂持つ生物がいろんな属性を持っているのは、素のリソースとしての状態から加工して、魂という存在を構成し、肉体に定着するときに発生する後付け要素であるらしい。
で、そこらへんは基本的に世界というシステムが、画一的になりすぎないように、ある程度の振れ幅を持たせつつもフルオートで作業するので、そこまで突拍子もないイレギュラーはたまにしか発生しないようにできている。
というか、イレギュラー自体は一定数発生するようにはなっている。
頻度はリソース残数とか世界の状態を自動で参照して変化するそうな。
ただ、イレギュラー要素が発生したとしても、意図的に維持する努力をしない限り、その要素は比較的短い期間で拡散し、最終的に一般レベル、所謂平均値に収束していくようにもなっている。
あたし達異世界人や、特殊な異界の血を持つ王族なんかは、この法則には直接は当てはまらないわけだけどね。
ただ、異世界人の黒髪が遺伝しにくいのはこの拡散作用が原因であるらしい。
魔力増加の方はある程度遺伝しながら徐々に薄れていくそうな。
この、ある程度振れ幅のあるフルオートシステムにおける上振れ要素を凝縮し、更には弛みない努力と根性で維持し続けているのが、王族や貴族といった、魔力の多い血統だったりするんだよねえ、この世界。
あたしがこの世界に落ちてきた当初に習った、魔力が余程多いと平民でも貴族家に取り込まれるよ、ってのはこの上振れ凝縮の為の努力の一つというわけですね。
そして、かつてのヴァルスンド家や旧サンファン王族みたいに、先祖の成果の上に胡坐をかくような輩が増えると、お家は一気に衰退するってわけだ。
そう、魔力の多さや特定の属性が強い、といった魔力的要素の方は、実は肉体由来になるのが基本だ。
例外はこれまた異世界人と転生者だけども。
但し魔法適性とスキルは、ベースは魂由来だそうな。
でもそうすると転生者の魂ってどうなってんだろうな?魂と意識と記憶の関係って?
ああ、思考が逸れた。
ともかくだ、魂というものは、生まれ育った結果の性格や傾向は持っているけど、本来それ自体に属性はない、というのがこの世界における概念規定だ。
だというのに、今、レナール三世と思しき人物が連れている?憑けている?なんとも言い難い状態で共にいる、推定コルネリオ元王子の魂は、明らかに強い光属性を帯びているのよ。
なんでだこれ……ってわあ、レナール三世側に闇が集積されてないか、これ??
呪術を込めた道具を介して、属性のバランスを著しく偏らせた状態、それが今のこの一人と一体だ!
なんだこれ、まさか王自身が呪術師だったわけじゃ、ないよね?
「あれは王のようだが、随分と奇妙な事をしているな?」
ランディさんもそれに気が付いたのか、なんだか随分と嫌そうな顔をする。
「属性バランスを極度に偏らせて、コルネリオ元王子の魂を鉄砲玉代わりにしよう、という風に見えますね……」
技能が微妙に発言をアシストしている。
うわ、魂の自爆特攻とか可能なんですかこの世界?!
《……普通の人はそんなこと、考えもしないでしょう。
というか、上でも初めて見たという話で大騒動していますわ……》
普通はそうよね……って、あー!コルネリオ元王子、転生者だ!!!
さては、こいつが妙な事を考え付いたのね!!!!
「……無茶苦茶な事をしようとしているのは判った。で、それは効果としては如何ほどだね?」
ランディさんの声が冷たく感じる。
心底呆れている、もしくは無謀な行為に幻滅している?
「流石にあのクラスを倒すのには到底足りません。
あれでも頑張ったほうなんでしょうけど、〈ライトレーザー〉一発分に満たない、そうですね、その半分くらいの攻撃力ですね」
まあ逆をいえば、魔物がいきなりこんな大物に育っていなければ、彼らのやり方で解決した可能性はあるってことだ。
かつて削除されたという光中級魔法程度の威力はありそうなのよねえ。
「リソースの無駄になってしまいますから、彼らの攻撃は阻止します。
その後はまあライトレーザーを……一斉射だとちょっと足らないかなあ……余り建物に影響させたくないんだけど」
魂、つまりリソースというのは有限なんだそうだ。
世界によって総量は違うし、ズボラが食い過ぎてなければ、この世界のリソースは異世界召喚のせいもあって、過剰気味に多い方だったとはいうけれど。
あたしの元いた世界なんかもそういうリソース式だったりするのかなあ、世界によってそこいら辺は設定が違う場合があるとしか聞いてないや。
そもそも神や魂の実在は信じられてすらいなかったしな、あの世界。
どのみち知りようがないわね。
「判った。ならばある程度削るか……〈召喚:ヴァルキュリア第二部隊〉、前回のような無様は許さん、きっちり削れ」
わあ、ランディさんが召喚師として本気になった。
呼び出されたのは六体の光輝く武装乙女達。
主に敬礼するや、素早く降下して、デカイ老人の顔と交戦しはじめた。
また触手系が相手だね、ごめんね……
第二部隊というと以前ランガンドの突撃で大怪我した子達か。
動きはすっかり元通り、いや、あれより良くなっているようだけど。
「ではこっちは王様に〈結界〉っと」
あたしの方は、まずは王とコルネリオ元王子を現場から隔離する。
一見ドーム状、実は球形の結界は、今回は魔法は通すが魂や瘴気は通さない仕様だ。
無駄死には許しませんよ!
行く手を阻まれた一人と一体がじたばたしてるのがいっそ滑稽だけど、後で事情聴取くらいはするからね!?
半分崩壊した建物の、無事な部分の屋根に移動する。
あたしは一人でそんな器用な動きはできないから、ランディさんに抱えられたままだ。
まあ見た目は宜しくないけど、上の方まで見てる人は……け、結構いるな……ああそっか、ヴァルキュリア部隊召喚した魔法陣が結構目立ったから……
ヴァルキュリア達はサイズ的には普通の人間と大差ない。
顔も隠れる全身武装のせいで、ちょっと大柄に感じるかな?程度だ。
だから無数に伸ばされる触手は、ヴァルキュリア達と戦いながらも、まだ生き残っている怪我人たちに伸ばされたりしている。
ある程度はヴァルキュリア達が弾き飛ばしているけど、限度はある。
「こっちも〈結界〉、魔物本体の場所中心に。一応戦える程度のスペースは付けました」
いちいち人間の方を保護するのはキリがないから、今度は魔物側を隔離する。
といっても戦闘中だから、あくまでも大雑把に、だ。
本当は人間側を保護しないと、戦闘で更なる建物の崩落が発生した場合に死者が増えてしまいかねないんだけど、いくらあたしの結界術が常人離れしていても、限度はある。
これにも熟練度が存在するなら恐らくカンストしてるんじゃ疑惑はあるけど、一度に張れる結界の枚数は六枚が限度だし、場所を変えて、となると、四か所が限度かな?
それ以上を、となるとカナデ君が持ってる〈積層詠唱〉スキルでもないと無理。
そしてあれはあたしには取得できない。スキルが載っているシステム自体が別物だからだ。
あたしの魔法は、これでもこの世界の基本法則に従ったものしか使えないからね。
エクステンド属性は地元民は使えないけど、これあたりは、単に異世界人専用なだけ、らしいんだよね……
シエラによれば、ライブラリの隠しエリアに載っているんだそうな。
「些か狭いが、これ以上幅を取ると建物の崩落が進むし、止むを得んか。
ある程度削ったら撤退させるが良いか?」
ランディさん的にはもう少し広い方がいいようだけど、元が建物の中だから、そこは申し訳ないけど限度があるんですよね……
周囲を確認していたら、兵士達が風魔法の〈分解〉を使ってがれきを壊し、生きていそうな人を救助しはじめた。
結界が張られて魔物が封じ込められたことは見えたらしい。
マルジンさんが無言で飛び立って、がれきの下の人達の存在を教える補助作業を始めた。
「削ったにしても、取り合えずあのへんが救助されるまで様子見ですかね」
こちらの目に付いた重傷者には、上位治癒なども投げておく。
焼け石に水感はないでもない。
いや結界張ったから新規の怪我人は暫く出ないはずだけど。
ただ、業務時間中だったせいで、巻き込まれた人が、とても多い。
マルチロックも大概熟練度っぽいものは上がったんだけど、相変わらず上位治癒は対象外のままだから、見えない人に飛ばすのは無理なのよ。
一応初級でざっとマルチロックかけて流してもみたけれど、手ごたえは微妙だ。
重傷者が多いなこれ……
最初から、後手に回ってしまったらこうなるのは判っていたから、さっさと片付けたかったんだけれど。
結局正規に王に近付く手段がないままだったからな……ああ、ままならない。
上位治癒がマルチロックに対応する日は来ねえんだなこれが(仕様の制限)
ただ初級治癒でも瘴気の影響を相殺する効果はあるのでやらないよりはマシですよ。




