はじめての闘い その50 ―トロイよ木馬―
"摂"氏は身体を捻り
――芝の上を転がりながら
避けようとしますが………
最初に仰向けになった時
――それでも転がりを止めません……
同じ場所で佇む"蜘蛛宇宙人"の、自身を追う視線を確認して
――俯せになり
もう一度反転してから
――月が夜空に
見えました
――落ちかけている
――怪しくはない
――ひかり過ぎてもいない
――雲に霞んでもいない
――丸すぎた満月でもない
月――
そして二次元的に見るとその下、
"蜘蛛宇宙人"の<フィギューク>が
ジャンプ!!
していて
――上から、身体全体で圧し掛かってくる…
"摂"氏は転がるのを止めていて……
馬乗りが完成しました。
[その時、"摂"氏は相手の体重を感じなかったそうです]
"蜘蛛宇宙人"の膝が
――胸の脇
芝に軟着陸するのが見え、
「では、そういう事にしよう
――感じ方は、ヒトそれぞれだ
――<苦痛>は<感じ方>であるから、<苦痛>も<ヒトそれぞれ>だ、とする。
しかし、どれだけ<ヒトそれぞれ>でも、世の中には<苦痛>という言葉と<無痛>という言葉があり
――それぞれに当てはめられる状態があり、
二つは同じでないモノとして設定されている
――程度に於いてヒトそれぞれでも、多かれ少なかれ<苦痛>という状態がある。
そこまではいいだろう?
ここで<ラオコーン>に話を移してみよう
――論点から外れない程度に
――というより、<戻してみよう>という方が適切か。
ラオコーンの顔に"K"がある、とする
――そして、身体は大蛇に縛られている
――というより、纏わりつかれている、という感じか…
――すると"K"は<苦痛>を表しているのだろうか?」
そして、相手の<軽い重さ>を認識し
[それは、ホチキスの歯の様なカタチに思われた、との事]
――"摂"氏は横たわったまま腰を上げて、小柄な相手をふるい落とそうとし――
「あのバチカンの有名な彫像だけを見る限り、答えを断定することは出来ません
――"K"の暫定的設定条件を見れば<無痛>では無いのでしょうが。
[後になって、この出来事を思い返して"摂"氏は、議論に於いて避けるべきだとした造形芸術に関する例をここで挙げるべきではなかったと反省したそうです
――最早、二人の間で取り交わされるラオコーンは、あの有名な彫像だけに限定した対象ではなくなっていたのですから]
蛇が絡みついてはいますが、あなたも指摘した通り、
<力を入れて縛り上げている>
とは言いきれませんね
――蛇の胴体がラオコーンらしき男の肉にめり込んでいる様子は見られません
――それに、蛇を嫌う人間が蛇に触れることで<嫌悪感>というものを抱くとすると、"K"は<嫌悪感>である可能性がうまれてしまいます
――<ダカツ>の如く。
やはり<苦痛>であるとは言い切れません。
ただ、タイトルが"ラオコーン"と設定され(ているとして)、その上で神話的な物語(背景)を考えれば、あの彫像の表情は<苦痛>である可能性が十分にあると考えられるでしょう
――神話と謂えば、蛇の縛りだけではなく、蛇からもたらされる<毒>という観点から考えても、あの彫刻に描かれたラオコーンが<苦痛>を感じていると推測出来ない訳ではありませんし」
出来ませんでした――
「合致」
――と、"蜘蛛宇宙人"の膝による、蟹ばさみ
「そうだろうな
――しかし、彫像のラオコーンの話を混ぜるなら、<毒>に関しての話は止めよう
――毒が有るか無いか
は、わからない
――既に毒がラオコーンの身体に注入されているかどうかさえ
わからないから」
――甘締めですが。
"蜘蛛宇宙人"の上から目線!!
――冷たいそれ。
それは、
「彫像の話が出たついでに、古今の批評家が論点とする問題を引っ張り出してこよう
――つまり、ラオコーンの開いた口から、悲鳴は漏れているだろうか?」
とのこと。
["蜘蛛宇宙人"は相手に合わせるのがうまいのです]
そこで"摂"氏の攻撃!!
――唇を引き締めて…
――手の甲で、相手のを太腿を叩こうとして……
「そうとは限りません
――呻きかもしれません。
否、声が出ているかどうかすら、わかりません。
神話的韻文描写から考えて、声が出ていたとして――」
――"摂"氏は考え直して
"蜘蛛宇宙人"の<ラティシムス ドルシ筋>へ
「<マレウス フェレウス!」
<<――そもそも悲鳴の定義は? 何デシベルから――?>>
――それが余韻として、木霊します。




