はじめての闘い その48
しかし、派生するそれは<痛み>ではありません
――死ぬ程の。
そして、"摂"氏は感じるのです。
<<先程より、"防御層"が薄くなっている……>>
しかし、そこに、それが<無い>という事ではないのです
――<防御効果>が失われた訳ではないのです
――相手からの攻撃によって凹みますが、"層"はすぐに壊れる程、柔な代物ではないのです。
"摂"氏は気を取り直し、急いで"防御層"に
――そしてそれに覆われた前腕に
めり込んだ相手の黒い拳に
――まるで、根元へ斧を当てられた<杉の木>の様に
[これは岸樹病……]
「ティンバー!!」
倒れ掛かり、
そのまま"蜘蛛宇宙人"の正拳突きを
――圧し掛かって潰しながら
下へと弾きました
――それも、強く。
同時に腕と腕
――"防御層"と"防御層"
その花火の様な接触音が二人の間、
夜に響いて――
「如何なる表情も、<苦痛>を<絶対的>に示すことはない
――それは<苦痛>の定義上の問題ではない
――<苦悶の表情>は、常に<それ"らしき"モノ>であり、その表情をしている人物の感じている<苦痛>を、直接的に示すとは限らない
――病気の兆候がないにも関わらず、学校をずる休みしたい子供が布団の中で親に向けてする<苦悶の表情>は、その子の<腹痛>を何も保証しない
――逆もまた然り
――他人には平然とした顔に見える人間には実際、<苦痛>があるかもしれない……
つまり、表情は何も保証しないんだ
――観察者にとっては」
ブランコの様に、高い所から落ちて
――揺れながら腰元で燻る、
"蜘蛛宇宙人"の手。
そのまま、
――"蜘蛛宇宙人"の尻の"防御層"に向かって、横から
"摂"氏の蹴り。
命中!!
「<苦痛>は観察者の問題ではない………?」
少し"蜘蛛宇宙人"は沈みました
――そのまま
「ぐらり」
と前屈みに
――"摂"氏の方へ
倒れていきます。
ぐん
ぐん
伸ばした足を回収しようとする"摂"氏を追いかける様に、
近づいて来ます
――"摂"氏はその様子を確認して、続けて攻撃するのを躊躇います。
その時!!
「答えはもうわかっている癖に
――観察者は<解釈>をすることが出来るが、それが<在るかどうか>を表象から知る事が出来ない」
「ぱ」
と手首を掴まれ
――牽かれ……
たかと思うと
「ぱ」
と
――離され
身体を回転させられ
――肩の"防御層"を掌底で押されて
――それを"感じて"から
背中に微弱の、ただ、より勢いのある衝撃
――別の種の
――足の裏の。
「では、何が<苦痛>を示すのか?
――何故、<苦痛>が表れているとヒトは考えるのだろうか?
――ある人物が、頬を片方だけ盛り上げ、引き攣らせた時、それを
①苦悶
②喜び
③狂気
のウチどれかであると判断させるモノは何だろうか?」
その時、"摂"氏は芝の上、前へと吹き飛ばされる自分
――その軽さ
を感じたそうです
――動きながら、<夜が夜である事>が、よくわかったそうです
――"ジュネス邸"のプールの煌めきが、よく見えたそうです
――そして、それまでプールを背後にして闘っていた事をすっかり忘れていた、
その事を思い出したそうです。




