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温度  作者: 折鋸倫太郎
はじめての闘い
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はじめての闘い その46

 そして、"摂"氏は手をついて、地を押します。


 "蜘蛛宇宙人"は、上半身を無動のまま、下がります

 立ち止まるべき場所に来てから足を揃え

 ――構えません。


 幽霊の様な、音の無い、動きでした

 ――<優雅>とは、ほど遠い、それ。


 "摂"氏は、二本の腕を軸にしたせいで

 ――<コロヌ>の上、

 浮いて見える肩

 ――格闘家程の、筋肉としての盛り上がりを見せないが、有無で考えれば<在る>と云える僧帽筋

 ――その頂点の上昇……

 その下

 ――腰が浮き

 ――膝から下を畳み込む様にして

 ――地に対して垂直な

 ――しかし、三日月の様に曲がった

 ――土踏まず

 ――そして、

 立ち上がりました。


 直立してから俯いて、腰から膝までの領域全体を、掌で払います

 ――丹念に。


 芝は、粉の様に

 ――宙を舞って

 落ちていきます。


 物事を可視化させるに十分な量の月の光で

 「ぱらぱら」と反射

 ――光っている様に見えるのです

 ――それは夜の中、<クレール>や<エブルイサン>というより、<サンティヤン>という表現が適当な<光輝>でした。


 そして、重力に則しながらも依然として疎らに

 「ふわり」

 と葉は浮かび続け

 ――すべての<落ちる事>が完了する

 その前に、

 "摂"氏は相手を見ました

 ――無言のまま。


 同じ状態の二人は、向かい合います。


 光がありながら、<ソンブル>な


 そして"蜘蛛宇宙人"は、

 不敵な笑みを浮かべて、

 半身になり、

 前腕を上げます

 ――肩のラインに平行な位置にある手首を直角に

 ――外側に、

 曲げました。


 相手から戦闘準備のポーズが示されると、"摂"氏は腕から力を抜いたまま、飛び掛かります


 ――下段蹴り!!


 ――それを膝横の"防御層"で受ける"蜘蛛宇宙人"。


 打った後、"摂"氏の腰は、前に伸びた足を<自然状態>に戻そうとします

 ――頭も体も、

 <連続攻撃>

 という考えを起こす事のない、忙しなさ。


 それが念頭を過る

 ―-ことで起こる


 「シ」


 ――頭の、限界のある形而上学的領域で、<コム レキューム>に増殖していくそれ。


 腰と意志を合わせながら"摂"氏は感じます

 ――"防御層"で覆われていない足の甲で攻撃した為、そこに

 ――<より大きな痛み>

 ――が発生したこと。


 その<より大きな痛み>は霧消すること無く<足>の中で<ラピデュマン>に拡散し

 ――皮膚から肉へ

 ――そして骨へ

 ――その裏の肉へ

 ――足の裏

 に到達すると、

 面した"防御層"に接触し――


 「<顔の表情>を重点的に考えると肉体上の<苦痛>について、身体の他の部位を参照しながら考えるより、結論への進み方が容易となることはあると思います

  他の部位は感情を表す事が……

  えーと………

  ――<難しい>としておきます

  ――あ、膝は笑うものでしたっけ?

  ――しかし、<笑った膝>は、膝を持つ者の喜びが如実に、対外的に表われた現象である、とは限りません

  ――恐怖のそれ、かもしれません」


 "摂"氏は片足ではバランスが取れないのか、

 足を地に着けようとして

 ――そうすることが、出来ました。


 "蜘蛛宇宙人"は、邪魔しませんでした

 ――しかし、相手の両足が据えられたのを確認するや否や、打って出ました


 ――へっぴり腰パンチ!!


 "摂"氏は身体を捻って


 ――肩の"防御層"にそれを当てました。


 痛みはありません

 ――先程の<大きなモノ>に比べれば、その量は<無い>に限りなく近いものでした。


 「オレの膝は笑っていない!!」


 「でしょうね」


 "摂"氏は何故か、笑っていました。



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