はじめての闘い その44
「やりやがったな……」
と"蜘蛛宇宙人"は、
言いませんでした…
――しかし、攻撃を仕掛けてきた相手に向けた目つきは、明らかに、険しくなっています。
先程まで、顔の上に頻繁に現れていた、
<スマーク>
や
<にやり>
は、在りません
――余裕が無くなったのかもしれません。
腹を押さえています。
中腰になっている"蜘蛛宇宙人"はすぐに
――しかし、一拍開けてから
――来た道を戻り
"摂"氏に、飛び掛かりました!!
[この図は、なにか、負けず嫌いな<もやし男>が泣きながら、暴力反対主義の<オタク>と呼ばれる外見をしたヒトに、向かっていく姿に似てなくもありません……]
"摂"氏は、立ったまま、相手を待ち受けます
――最早、構えのポーズをとりません。
[ここで格闘漫画なら、特別な呼吸法などを使用して、<気>を溜めたりするのでしょうね……。
うむ、確かにこの時、"摂"氏は呼吸をして、気を静めていました
――ラマーズ法ではない規則性で…
――"摂"氏は妊婦専門家ではありませんからね。
それが、知性にどの様な影響を与えたか……
は、ここでは<謎>として置きましょう]
そして遂に、
十分なリーチ範囲内に入り、
突き出される
――黒地に囲まれた、
ストレートな<夏のソネット>!!
"摂"氏は両腕で、必死で防御
――見事、肉体ではなく、"防御層"を盾として、当てることができました。
当たった途端
――しかしながら
"蜘蛛宇宙人"の身体が反転
――背を軸として
――回転を続けて
――ワルツを踊る舞踏手の様
[これは言いすぎですね………]
「あ」
という間に
――ストレートに使わなかった普通の拳
その背を、"摂"氏の肩に叩きつけました。
直撃!!
しました
――<裏拳>というヤツですね
――知りませんけど。
その時、
「じゃあ、<言葉を使用せずに表現する芸術>について、話しを続けようか?
言葉を使用せずに、時間の中、ある瞬間(一瞬)を捉えて
――それを切り取って
それを作者が自分なりに表現する造形芸術では言葉で苦痛を示すことができないのだから、その<素材>と<形>で<苦痛>を示す必要がある
――もし苦痛を示す必要がある場合…
――その通りだろうな。
では次。
<苦痛>は、どの様に表されるべきだろうか?
――現代アートの様に、机の上に<消しゴム>をひとつだけ置いて、<苦痛>を表すことが出来るのだろうか?
――タイトルさえ「苦痛」であるなら、作品はすべて<苦痛>を表すことになるのだろうか?」
[解釈と評価は「観察者の自由だ」なんて暴論はうんざりです……]
揺れてバランスを崩す"摂"氏。
<痛み>はそこに在り続け
――強すぎて他の行動や感覚を妨げるほどではないが、
意識されている状態。
しかし、"摂"氏は、先程とは異なります
――つまり、ぐらつきながらも反撃を試みて
「カーライルか
ソシュールが、必要ですか?」
「やめておこう」
と、すぐに"蜘蛛宇宙人"
――殴りかかった"摂"氏を躱し
――しかし、指がチップ………
――「ミス!」に近い、接触。
そのまま――
"蜘蛛宇宙人"の攻撃!!
――が、来るかと"摂"氏は思いました
――そして、予想は当たりました。
「では、どうやって痛みを表せばいいのだろうか?
先ず、作品が人間だったとしよう
――身悶えすればいいのか?
――恋をしている人間が、恋するヒトを目撃した時の身悶えと、<苦痛>のそれでは、どの様な違いが見られるのだろうか?
――腕を不自然な形に捻れば、それは自動的に<苦痛>という表現になるのだろうか?
――そのキャラクターが軟体人間だった場合はどうなる?
――血が流れていればいいのか?
――死体から死後に流された血は、自動的に<苦痛>を表すか?
(出血は、その死体の死因ではないと仮定する)
――身体と動作で、言葉なく、<苦痛>を表現することが、人間には可能なのだろうか?




