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温度  作者: 折鋸倫太郎
はじめての闘い
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はじめての闘い その42

 "摂"氏は"防御層"に覆われていない場所を打たれ、芝に向かい続ける腕を

 ――引き揚げようと意識しながら、

 胴元へ回収しようとします

 ――同時に、身体全体を後退させながら。


 痛みがありました。


 叩かれた"摂"氏の前腕

 ――具体的には、


 ――<フレクソール カルピ ラディアリス筋>


 にその時は

 ――それまでずっと、発生時に、類型的に繰り返されていた

 <痛みの段階的手順>

 ――(即ち、衝突と同時には痛みは知覚されず、感覚は遅延してやってくる)

 はありませんでした。


 痛みは直であり、より同時でした

 ――衝突と知覚の間のタイムラグが短縮された様です。

 

 [慣れの問題なのでしょう]



 筋肉の中

 ――であるにも関わらず、皮膚の上にある様な

 引きずる様な

 ――痛み


 "防御層"に守られていないが故なのか、大きな痛み。


 <<ああ、消えない…

   ――さっきと違って

   ――減少する気配すら、今のところ無い……

   ――このまま、この痛みは続くのだろうか………>>


 [ああ、痛みを表現する上で、不足した語彙……

  ――「しくしく」

  ――「きりきり」

  ――「じんじん」」

  ――「ぎーぎー」

  それらには該当しない痛み

  ――擬音からのアプローチでは、=(イコール)として対応させるべきモノが、見当たらない……

  それは、敢えて言えば<鈍痛>

  ――ですが……

  ――肉の中で、波の様に変動していて

  痛み開始の地点を暫定的、そして仮定的に設定してから考えても(数えても)

  それは直線の様に単調ではなく、

  最低の値と最高の値の間を、メトロノームの様に交互にふれていて――

  痛み領域は、それを感じる者にとって、いくら変動を見せても二次元的場で

  ―― 一次元では単に

  ――「痛い!」

  ――でしかないのでしょう……

  その痛みは、まるで電気が通る時の様な

  「ぱちぱち」

  ――それが比喩として、一番近いかもしれません

  ――そんな鈍痛

  ――ああ、鈍痛とも言い切れなかった!!

  ――ああ、

  「モ」

  「モ」

  「モ!!!」] 


 間、"摂"氏は絶対に


 「いたい!」


 と声にして、漏らしませんでした

 ――幾ら頭の中でその言葉があり、強く外の世界へ出ることを望んでいても、"摂"氏は流出を堰き止めました。


 歯を食いしばったのです。


 いつの間にか、"摂"氏の顔は地を向いていました。


 "摂"氏は手を引き寄せるのを完了してから、

 顔を上げて、相手を


 睨みつけました!!


 相手に向けられた、目つきの鋭さ

 ――それを、余裕を持って迎え入れる"蜘蛛宇宙人"

 ――不敵な笑み。


 "摂"氏は構えようと、腕を上げよう

 ――として、

 手を再び下ろし


 「だらり」


 <<もう、わざわざ構える必要など無い

   ――ただ闘うだけだ>>


 そして、"摂"氏は、再び襲い掛かりました

 ――腕を、強風に影響される風車小屋の羽根車の様に、回しながら。



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