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温度  作者: 折鋸倫太郎
はじめての闘い
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はじめての闘い その40

 そこで"摂"氏は、相手の人差し指の動きに誘いこまれる様に前傾になり

 ――そして踏み出し


 ――繰り返し、


 同時に拳を

 ――指を見ながら、

 腹まで引き寄せ

 ――腋を締めて

 ――間合いを縮め

 ――相手の姿をしっかり捉えて、

 最後に拳を付き出します

 ――しかし、躊躇いが!


 その時"摂"氏が考えていた事、それは、


 「言葉を必要としない表現形式に於いて、キャラクターの苦痛を<作者>が表現する必要がある限り、苦痛を感じているという示唆が作品表面上に言葉無く、明確に現れていても、それは間違いではない」


 というもの。


 相手の腹を目指し、進行するパンチ。


 近づいているのに

 ――遠ざかって行くまと


 "蜘蛛宇宙人"は、真面目な顔で

 頷きながら、

 胴を縦にして


 回避!!


 しました

 ――空を切った"摂"氏の拳

 ――勢いに乗って伸び続けるその腕

 その前腕を上から目線で見る"蜘蛛宇宙人"、

 ――胴が海老反りになっていて

 ――それから発条が縮むように

 ――急に上から

 "蜘蛛宇宙人"は手の甲で

 ――寧ろ中指の付け根

 その背で強く

 叩きました!!


 「ぱん」 


 乾いた音と同時に、声が聞こえてきます

 ――同時に落ちていく、"摂"氏の腕。


 「そうだろうな

  ――ただ、<それ>は世界的に見ても

  (といっても、

  <その議論を発展させられる素地を持つ程度に文明が<高度>に発達した国に>

  と話を限定させる必要はありそうだ……)

  ――19世紀くらいまでの(時代性に関しても同じ……)、

  ① 造形芸術や絵画を代表とする<美術>と、

  ② 言葉を使う<文学>(演劇も戯曲の名の下に、含まれるかもしれない……)

  の二つが<完全に分離しているモノ>として捉えられ、そして二項対立的に考えても、あまり問題とされなかった頃の話だろう……

  ――<二項対立>の話が出てきたからといって、なんか突然、

  ――個人的感覚に沿って(信じて)模型的意見を発することしか出来ないヒト

  ――つまり、人類の思考

  ――それを文化的、そして社会的にアップデートする事

  ――それを可能とさせる様なアイデア(イデアではない)を作り出す能力が不足している者……

  が議論する時にいつも使う

  ――要するに、単に自分の頭を良く見せたいヤツが使う

  みたいに

  <脱構築>

  なんて不毛な言葉は、ここで挿入させるなよ

  ――気が削げるから……

  ――時が経ても熟成しなかった言葉だ……



 そして見えるのです――イヘンが。そして、その #異変# は<衝撃>になるのです――即ち、目の前、<三本指>。五本ある筈の自分の指が、人差し指、中指、薬指の三つしかないのです――小指と親指は切断されたのか? 人差し指と薬指に合体したのか?――それは、"摂"氏には、見当もつきません。そして、その様な状態でも一応そこに<在る>三本は全て、人間であった頃より、長いのです――異様に。色は #黄緑色# でした。

 「もう人間の身体じゃないんだ……」

 不気味に思うを十分に作ってから、すぐに視線を転じます――焦点をどこに合わせれば良いのかわからないまま。

 しかし、突然!!! 頭に何かが

 「コツン」

 と当たりました。

 痛みはありません。

 当たった<何か>が頭から、目の前を落ちていき、そして、砂利に混じって転がります。

 それは、白い石でした。

 顔を近づけると、<石の正体>がわかります。それは、先が尖った石器の様な、小さな #歯# でした。

 そして、目の前、またひとつ、

 「コツ」

 石が落ちたのを確認します。

 白いそれ。

 "摂"氏 は空を見上げます。



 ⇒「『実力』と、それを包む邸宅 その9」へ


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