はじめての闘い その38
肩に向けられた<上から攻撃>を、"摂"氏も手の甲で
――手首にスナップを効かせて
弾きます。
[この表現だけ見ると、天才的格闘センスを<イネ>に持った学生が、作者の手を借りて何年にも及ぶ修行シーンを端折りながら、オモシロい所だけ抽出して、世界一を目指すバトル漫画の一コマの様……]
目的を達成することの出来なかった、金槌の様に変化していた"蜘蛛宇宙人"の<小さな拳>は、飛んでいきます
――闇の中、彗星の様に
――皮膚の色をした<夏のソネット>が、夜に流れて、尾をひいているのです……。
"摂"氏は触れ合った時、感覚はなく
――
「かぁん」や
「きぃん」や
「どすっ」
――等といった音も聞こえず、
それでも――
“痛みがある(少なくともそう感じられた)場合、苦しくても、歯を食いしばって悲鳴をあげない様、努力しなければならないのか?”
“痛みのある場所に手を当てて、<痛い事>を対外的に示さなければならないのか?”
“表情筋を強く(ただ螺旋にならない程度に)捻ることは許されないのか?”
“口を開くことは――?”
――それらが
「ぱん」
に似た響きでひとつ、弾け――
"摂"氏が<それら>を認識してから、相手を
<<弾いた!!>>
と、溜息なく安堵した
――途端に捉えた、
"蜘蛛宇宙人"の顔
――その表面
再び、<スマーク>。
"摂"氏――ひと息。
溜飲が下がります。
[蟠りは、少しも解消されていませんがね……]
――そして再び、
<痛み>
――"防御層"の接触点だった場所の下、その中心点から<ガルヴァニゼ>に派生していく
――それでも限界はある……
――ここからは自由境界……
――何にしろ、人間が意識できるモノは領域内、全体への均一化のプロセス
――その結果。
手の甲に発生した<それ>は、「我慢できない!」程ではありません。
それでも、痛みの発生したと思われる場所に、"摂"氏は<痛みの発生していない方の手>を当てます
――それは習慣的行為……
――<それ>は包んでいますが、痛みそのものが在る場所に直接、触れる事は依然として、出来ません
――衝撃の名残は、緩和されません……
[ああ、<形而上学的>
――肉体と思考の間にある、薄いが厚い<壁>!!]
「言わないで、どうやって伝えれば?」
と"摂"氏
――それは呟きに似ていました
――が、「え」の音にアクセントを強く置いていました。
それに、すぐに答えない"蜘蛛宇宙人"の拳は、ゴム紐のついたテニスボールの様に
――行って
――行き続けて
――遠ざかることの出来る限界に達すると
――戻ってくる
[ああ、領域に閉じ込められた中で四方へ向かう勢いを持った若きフォーティンブラス!!]
そして"蜘蛛宇宙人"の声が聞こえます――
「多くの人間には、言わなきゃ伝わらないだろう
――言ったって伝わらない、そんな時だって、無駄を省いて言わなけりゃ腹を立てるヤツがいるし
――言ったら言ったで腹を立てるし……
――ほら、問題点が明確であり、それを解決する為の方法が双方から模索された結果、妥協点が見られないにも関わらず、言う奴がいるだろう?
“話し合いましょう!!”
って
――そして、本来進められていた議論とは何も関係がない方向へ話はベクトルづけられる
――<個人攻撃>へ。
いつも思ってた――
“どうしろって言うんだ?”
でもな――"敵"は、そんな "その他大勢" ではないんだ
――最低限の言葉は必要でも、全体をわざわざ噛み砕いて情報をゲル状にして、赤子にでも消化しやすい様に加工して説明する必要はないんだ!!」
ラリアットに似た
――ナックルパンチ!!




