はじめての闘い その34
"ジュネス"邸の<離れ>を出ると、庭には
先にドアを出た筈の"蜘蛛宇宙人"の姿が、影も形もありません
――忽然と
――だから"摂"氏も兀然と。
<<どこに行ったのだろう?>>
それから"摂"氏は闇雲に
――しかし、まっすぐ、
屋外プールの方に向かって、歩き出します。
三歩ほど踏み出すと、
少し離れ、水面に波立った光の明滅を、その目で捉えました。
[ここはフランス語で表現するより、英語の「グリッター」とした方が適切でしょう]
そして、湿気では
――ない
水気が
――前から
"摂"氏の顔を叩き
――潮要素は、そこに
――少しも
――含まれていない……
水に入りたい――
<<冷たいのだろうな…>>
と、誘惑に駆られ――
「おい、こっちだ」
声は、そちらの方から
――聞こえませんでした。
振り返ると、"蜘蛛宇宙人"が夜の中、手招きをしています
――<離れ>という小屋の、ファサードのちょうど端
――建物のちょうど角の所に
――引っ込んで、
立っています
――勿論、幽霊の様
――ではなく
――その姿、はっきり。
時間は依然として夜に属するものですし、庭には電燈が少ないのですが、対象の輪郭がはっきり見えるのです
――状況は、"ジュネス"邸、滞在第一日目と同じである筈なのに。
即ち、暗いのに、<明るい>のです。
そして、"摂"氏は気付きます
――見上げます
――空には
――空という領域に対して、あまりにも不釣り合いな程、大きすぎる<月>があります
――星はありません
――雲はありません
――あったとしても、月を縁取る、ただの黒。
<月明かり>が光線の様に、地に落ちている様子は見えません
――スポットライトの様に、光源は絞られていません
――スポットライトの様だとしても、末広がりの円錐は
――何かを、特別扱いをしないのでしょう
――ただ、地に在るモノそれぞれの持つ輪郭がすべて
――すべてと言っても、<"摂"氏の目に映るもの>という前提条件があります…
ただ、明確になっているだけ。
「こっち」
<イル ス トゥルネ…>
<離れ>の壁、その側面に沿って
――さらに奥へ
――背後の方へ
――芝を踏みしめながら
――あ、裸足です!
"蜘蛛宇宙人"は進んでいきます。
その背中を、深夜には明るすぎる<月明かり>の助けで、"摂"氏は目撃します
――そして、ついていきます。
"蜘蛛宇宙人"の辿る道は、<離れ>の裏で、"ジュネス"邸母屋からは見えない場所にありますが、
その日、月明かりが、とてもよく当たる場所でした
――そして、<離れ>の窓から入る、部屋の中の明かりも加わり、より明るくなっていて、
深夜でも、"蜘蛛宇宙人"の姿を見失うことは、ありそうもありません。
そして、ちょうど<離れ>のバスルームがある辺りでしょうか…
"蜘蛛宇宙人"は立ち止まり
――"摂"氏も、そうして、
二人は向きあいました。
ついにバトル――…




