はじめての闘い その33
二人がいる"ジュネス"邸<離れ>という、多くのモノが共存して成立している<空間>は暑さの中、よく煮込んだ<シチュー>の様に、澱んでいました。
[※形容において「ミソシルの様だ」は、ここでは適切ではありません
――<トンジル>なら、外れていませんが…]
ヒトはそれを単に
「じめじめ」
と表現します。
その、母屋から隔離されて建てられた<離れ>は、密閉された空間ではありませんでした
――窓を通じて、風に攪拌される大気
――しかし、それは同じ場所を巡回しているだけ。
それでも、暑さが、確実にありました。
「……いたかった」と、"蜘蛛宇宙人"。
「は?」
と、
<<わたしは理解していない>>
という意味を返した"摂"氏。
すると、
「痛かったよ――ホントに」
当時はまだ、「本気」と書いて「マジ」と読む一般学生が登場したばかりの頃でした。
そしてその言動が
「変なの」
と思われる頃
――勿論、いまも変わらず、その読み方は下品ですけどね。
「ビリビリ来たよ――こんなの久しぶりだ」
――そして、"蜘蛛宇宙人"は自分の足で立ちました。
"摂"氏は、支えていた手を離そうとします。
その前に、
掌の上で、<重さ>から突然<軽さ>へとすり替わる
――そして、軽さは<無し>の方へ。
最初に背中
――そして剥がれる様に、肩
――<デタシェ パクフェットマン>
――そして確立される、"蜘蛛宇宙人"の<デタシュマン>…
それでも部屋には
――互いをよく知らない二人の間には
――モノとモノの間には
<グル―オン>があるのでしょう。
二人は身体の角度を変えて、向きあいました。
「どうだった?」
「どうって……」
「で?」
「何も」
「何も?」
「何も感じません」
「手にか?」
「そうですね」
「ま、そんなもんだろう――じゃ」
そして
「じゃあ、これから外に出よう」と、"蜘蛛宇宙人"
――極めて真面目な顔。
「外?」
「そう<外>」
そして、実際に、親指で方向を示します。
「どこかに出かけるのですか?」
「いや――外に出るだけだ」
「どこへ行くのですか?」
「だから外だ」
「いま、何時でしょう?」
そして、部屋の中を見回します
――時計などないのに。
「知らん」
「でも……」
<<いま、深夜ですよね?>>
"摂"氏は言外で理解した欲しかった様ですが、"蜘蛛宇宙人"はそうしないのか
――またはテレパシー能力がないのでしょう…
何も発言しないので、
「深夜ですよね?」と、自分で"摂"氏。
「で?」
明日も早いですし…
と言いかけてから、"摂"氏は止めました。
窓に近づき、
窓の外を見ます
――"ジュネス"邸・母屋の玄関スペース、その明かりが未だ灯っています
――他はすべて、消えたまま
――先程までは点いていた、"ジュネス・ドレ"の部屋のそれも、消えていました。
「行くぞ」
"蜘蛛宇宙人"は<離れ>のドアを開け、部屋から外へ、退出しました
――"摂"氏も後に続きます
――勿論、ドアを後ろ手に閉めて。




