はじめての闘い その29
「…いた」
と呟く、後頭部を叩かれた"摂"氏
――笑いません
――最初から、何かをして、誰かを笑わせるつもり
――それも、ありませんでした。
そこには、<叩かれた>という意識が本当であることを保証する感覚が、はっきり、ありました。
後頭部を押さえながら、見返します
――照れている訳ではありません。
「いたい」
「痛いか?」
――"蜘蛛宇宙人"は、不敵な笑みを浮かべています。
「痛い?……です」
と、特に
<激痛!>
という意味での<痛み>はないのですが、攻撃されたことを感覚によって認識したことは、<痛み>という言葉を使って認める"摂"氏がいます。
「だろ?」と得意気な"蜘蛛宇宙人"
――実際、顔を斜めに傾けて
――鼻高々。
「だろ?」と怪訝を返す"摂"氏。
「そうだろ?――痛いだろ?」
「なら、するな」
と、"摂"氏は言い
――ませんでした。
代わりに、
「背中は感じないのに、どうして頭は?」
――と、なんの捻りもない質問。
「知らん。ソネットを唱えても、頭部だけはどうしても守れないんだよ――」
「首はどうですか?」
すると、
「どうだ?」
"蜘蛛宇宙人"は"摂"氏の首に触れた様です
――感触はなかった、
ということです。
やはり、防御層(プラスティック層)が発生するのは、
足の下から首まで
――それも、背後だけ。
「何故なのでしょう?」と、しつこく疑問し続ける"摂"氏。
「知らん――とにかく闘う時は、基本は<背中で防御>、そして頭は攻撃を受けない様、別の方法で守る事を考えなきゃいけない」
「すごい難しいと思いますが…」
「でも、顔や頭を殴る様な輩は、"敵"にいないけどな――そんな卑怯なヤツ」
――表情を、<唾棄>に相応しく、曲げました。
「そうなのですか?」
「さっき言っただろ?――<知の闘い>なんだって。闘う上で、プレイヤーの中枢となる場所を攻撃するということは、相手の息を止めること同じだ――基本、尊重する相手にそんなことしないだろ?
<ショーギ>プレイヤーで、対戦者の頭にショーギ盤を叩きつける奴がいるか?
――いるかもな
――でもそんな奴、ろくでもない筈だ
――そんな闘いは、<ショーギ>ではない
――単なる<殺し合い>だ
――おっと、反論はいらない
――それに、頭を攻撃したらただでさえ"敵"は数が少ないのに、さらにいなくなってしまう
――相手がいなくなる
――それは困ることになる」
"摂"氏は、相手の話を、頭の中でまとめようとしました
――極めて難しいことが分かるだけでした。
<<情報が足りない………>>
それでも、
「そうですか
――これまでの、あなたからの解説で、初歩らしき事は理解しました
――その初歩が何の役に立つのかは全く予想がつかないのですが」




