表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
温度  作者: 折鋸倫太郎
はじめての闘い
PR
50/395

はじめての闘い その16 ―あん ばん…―

 <<気のせい?>>


 すると、


 「おい」と再び、声。


 シャワールームの中は、滝壺に類似した音が、続いています。


 「おい、聞いてんのか?」


 ――と、硝子ガラス越しに


 <<"ジュネス・ドレ"の声だ>>


 ――いつの間にか、"ジュネス・ドレ"は、バスルームの中に入ってきている様です


 ――ドアの開閉音はしませんでした。



 二人の間には、曇り硝子ガラスの壁。



 "摂"氏には、相手の影さえ、見えません。


 「そこにいるんですか?」と、びしょ濡れの、口に水を溜めた"摂"氏


 ――吐きだします

 ――放射線。


 「何**も


  **声で


  声


  **けてん


  だか**


  返事**らい


  **ろ!」と大声だから、

 

 「何ですかー!?」


 と、水の落下音の隙間を縫って、大声で、"摂"氏は返します。


 「**ャンプー


  **かー


  場所ぉ


  わ**るか―!?」


 「わかりますよ!」


 ――わかりませんでしたが

 ――相手が具体的に、何を言っているのか。

 しかし、予想を立てる前に、

 シャワーの栓をひねりました。


 「きゅ」


 とつぜん、静寂。


 そして、バスルームに浸透します。


 そして、シャワーヘッドから、一滴の、しずく


 落ちて――


 それが床にたむろした大勢に加わって個性がなくなる前に"摂"氏が硝子戸を開けると、


 「わ、ちょっと待った――」


 そして、慌ててドアが開く

 ――そして閉まる

 音がして

 ――ドアは実際、閉まっていました。



 "ジュネス"邸のバスルームは、"摂"氏が入ってきた時と、同じ情景です


 ――否、部屋にはひとつだけ、異なる点がありました


 ――"摂"氏がシャワールームを出ると、それまで無かったタオルが、出ていたのです。


 それが、バスルームに設置された、閉じられた便座のふた

 ――この便座も、高級感あふれて見えます――

 その上に置いてありました。


 畳まれた、毛羽だったタオル。

 触ると

 ――柔らかい

 ――天日の下、乾してから取り込んで、間もないのか

 ――それともキッチンにある乾燥機から出したばかりなのか、

 ほんのり温かい、タオル。


 それは、タオルそのもの(素材)が<高級>というより、

 <洗い方と仕上げ方こそが、高級である>

 そういう印象を使用者に与えるタオルでした。



 それを手に取り、"摂"氏が身体を拭いている間、妙な気分が続きました

 ―-便座の上にあったという<不潔>を連想した訳ではありません

 ――蓋は閉まっていましたし、"摂"氏は"潔癖"と呼ばれる程、小うるさくありません

 ――悪しからず

 ――そのタオルを使えば、身体のしずくは拭えます

 ――しかし、いくら背中にタオルをかけても、背中の水だけは拭えないのです

 ――それが、どうも妙なのです。


 シェイクスピアのソネットを唱えた所為せい

 ――それ故なのか?――

 で発生した様に思われる背中の<プラスティック層>が、いつまで経っても、邪魔なのです。


 "摂"氏が亀の甲羅の様に背負ったままのそれは、なかなか手強い相手の様です

 ――"摂"氏にはこの時、いつそれが消えるのか、わかりませんでした

 ――それに、それが自然消滅するかどうかも、わかりませんでした。


 <<もっと、あのヒト(蜘蛛宇宙人)に話を聞ければ良かった…>>


 ――これは後悔ではなく、願望です。



 "ジュネス"邸1Fに設置されたバスルームに設置された全身鏡を使い、何とか、拭き終わりました

 ――しかし、終わりではありません。

 背中が痒いのです。

 まるで、全身びしょ濡れのまま、カラダにフィットする<全身スーツ>を来て、それが簡単には脱げないカンジ。


 <<どうやれば?――どうすればこの、皮膚との間に溜まった水を拭けるんだ!?>>


 これは、"摂"氏が取り組んだ中でも、難問のひとつでした

 ――ま、すぐに解決するのですがね。



 シャワーを終えて、

 ――ドアを開けて

 "ジュネス"邸のキッチンに出ると、



 …誰もいませんでした。

 だから、ダイニング・ルームへ行きました。

 

 ここも、誰もいません


 ――すると、電子音が。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ