表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
温度  作者: 折鋸倫太郎
はじめての闘い
PR
48/395

はじめての闘い その14 ―す ね ぱ あん こーまん あんてけっさん―

 朝食が終わると、


 「オレ、汗だくだよ」と手を扇にする"ジュネス・ドレ"。


 そして、わきぐジェスチャーをしながら

 ――それとも本当に嗅いでいる?

 

 「オレ、くっせーわ」


 そして、"摂"氏に向き直ります。


 「シャワー浴びる?」


 「そうですね」と返す"摂"氏。


 その時、"摂"氏は昨晩、汗を落とさなかったことに気付きました。

 その時はそれほど汗が噴き出していませんでしたが、指摘されたことを念頭に置くと、肌と服がべたつく関係にある様にも、思われます

 ――そんな事、"摂"氏には基本的に、どうでも良いことのひとつでしたが

 ――しかし、社会生活を営む上で、清潔を保たなければならないことは、十分に理解していました。


 「では、シャワーを頂きます」と"摂"氏。


 「それとお前、いい加減、敬語やめろよ」と、"ジュネス・ドレ"による、冗談にしたつもりの、本気。


 「無理ですね」と、真摯しんし。「下品な言葉は極力、使用したくないのです」


 「じゃあ、そこ入って」と諦めた、"ジュネス・ドレ"。


 そして、キッチンスペースの壁に埋め込まれている、洗濯機と乾燥機の隣りにあるドアを指しました。


 「タオルはそこにあるの、勝手に使って」


 [因みに、"ジュネス"邸のキッチンと、"ジュネス・ドレ"の部屋の間――その隙間部分に、バスルームがあります。そのバスルームへは、キッチンからも行けるし、"ジュネス・ドレ"の部屋、どちらからも行けるようになっています]



 シャワーの高級さは、水の奔出ほんしゅつの強度によって測ることが出来る様です。

 バスタブが併設されていないシャワーから吹き出す水が適度に(でも強く)肌を叩くのを感じながら、"摂"氏はそう考え

 ――ませんでした。

 シャワースペースに立つ"摂"氏には、考えなくてはならない、もっと重要な問題があったのです。


 <<あの"蜘蛛宇宙人"は、一体何者なのか?>>


 "摂"氏には、詮索趣味はありませんでしたが、気になる対象であることは、間違いがありません。



 先程、"ジュネス・ドレ"は、"蜘蛛宇宙人"が<兄>であることを否定しました。

 "蜘蛛宇宙人"は、"摂"氏についての情報を


 「弟から聞いた」


 という発言を行いました

 ――しかし、弟が「"ジュネス・ドレ"である」とは認めませんでした

 ――つまり、弟とは、"ジュネス・ドレ"ではない?


 <<じゃあ、弟って誰だ?>>


 あの"蜘蛛宇宙人"と"ジュネス・ドレ"の外見は、似ていると云えば似ているし、似ていないといえば、似ていません。


 <<もしや、あのヒトは、本当に泥棒だった?>>


 その場合、"ジュネス・ドレ"の取った泰然たいぜんとした態度が解せません

 ――泥棒なら、警察を呼ぶでしょう

 ――親に連絡を取るでしょう

 ――<普通>のヒトなら。

 "摂"氏は<普通>ではありませんが、"ジュネス・ドレ"はそうなのですから、そうすべきなのでしょう。


 <<しかし、しなかった>>


 つまり、少なくとも、"ジュネス・ドレ"と"蜘蛛宇宙人"は、知り合いなのでしょう

 ――ひどく冷たい間柄の。



 そこまで"摂"氏が考えてから、問題は次に移ります


 ――シェイクスピアのソネットによって発生するかもしれない、<防御効果>について。


 <<身を守る?――何から?>>


 そうこうしているうちに、"摂"氏は、ソネットを口ずさんでいました

 ――タイルに落ちる水滴の音は、59番のリズムにマッチしています。


 <<そういえば、"蜘蛛宇宙人"は、ソネットが「背中に壁を作る」って言っていたな>>


 その時、<何か>が


 「変」


 ――であることに気付きました。



 すると背後から

 「ぴゅ」

 と音がして――"摂"氏は振り返ろうとしました。しかし、振り返りきらずに――やって来るモノへ、視線を戻しました。

 「どぉぉぉん!!!」

 衝撃音と共に目の前、"蚊人間"が、宙で一度、静止して――から、後方に吹っ飛びました。"蚊人間"の身体が、落ちます――大地の上、叩き付けられる様に、落ちました。一度弾んだ後、横たわっています。

 顔を上げました。

 びしょ濡れの髪が、垂れていました。その髪の中から、銀色の唇(むしろ嘴)が突出していて――"摂"氏の方へ近づいて来ます。這っています――<狙った目>で。

 "摂"氏は立ちすくんでいます。

 そしてまた

 「ぴゅ」

 と"摂"氏の背後で音がして――

 <塊>が、"蚊人間"の顔に当たります――"蚊人間"は攻撃を受け、転げる様にして、後方へ寝返りました。

 停まり、仰向けになった"蚊人間"の身体の上、何か<液体>が宙に弾けているのが見えます――透明の液体でした。そして小さく

 「ピリピリピリ」

 と音を立てながら、輝いていました――泡を伴いながら。

 そして、何度も攻撃が続きます――"蚊人間"は寝そべったまま、飛んでくる<かたまり>を受けています。防御の体勢を取らないのが不思議です。ただ、一方的な連続攻撃を、受け続けているのです――声を出さずに。

 "摂"氏は、振り返る必要がありませんでした――攻撃がどこから来ているのか確認する必要はありませんでした。そんな"摂"氏は、不思議な事に、自分が攻撃されるとは微塵も思わないのです。そんな、ただ目撃するだけの"摂"氏"はある瞬間、観察の結果、新たに気付くのです。

 「あの<塊>は、水で出来てきた弾なんだ」



 ⇒「縁日は、なぜたのしいのか? その1」へ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ