表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
温度  作者: 折鋸倫太郎
はじめての闘い
39/395

はじめての闘い その5 ―けれ "るぃぇ"?ー

 振り返ると、


 「チビ」


 そう発する相手は

 ――確かに小柄です。

 そうです――全体的に小さい印象なのです。

 小顔で、胴が短い。

 身体を構成するパーツすべてが、それぞれ、小さいのです

 ――対し、手と足は、異様に長いものでした。


 昆虫の、蜘蛛くもの様でした。


 発達した三角筋があり、肩が、異様に盛り上がっています

 ――現実の中で夢を見る、赤毛の文学少女が着ることを夢見る<パフ・スリーブ>の様に。

 そんなの矛盾している

 ――もちろん理解済み。

 <筋肉が発達している>と表現すると、その小柄な相手は自動的に<イカツイ>印象となり、蜘蛛の様な<せせこましさ>はその身体上に現れていないことになる=「矛盾している」、そう云えるのかもしれません

 ――が、その人物の、胴に対して長すぎる腕と脚は、極端に細いのです

 ――だからこそ、蜘蛛、という形容が妥当に思われるのです

 ――しかし、細さから自動的に連想が働く<弱さ>、それは微塵もありません

 ――雑誌か新聞紙をまるめて、上から叩いても生き続けるスュルビバントな強さ。


 腕は、丸み、というより、<岸壁>(がんぺき)の様でした

 ――上腕の筋肉が削ぎ落ちて、肩からの曲がり角、その下のラインまでが急なのです。

 先程、肩を「パフ・スリーブの様だ」とたとえましたが、シュー・ア・ラ・クレーム(シュークリーム)の様な柔和さは無く、<岩石>の様でした

 ――斜め掛けのショルダーバックをかけるには、首に引っかけなければならないでしょう。

 同じ肉体に於いて、つながっているそのファンな<腕>とロシューな<肩>、その二つの、<両極>とも云えるほど異なった特徴的差異が、

 <この人物は、普通ではない>

 ことを、視覚的に知らせています。


 その蜘蛛は、"ジュネス"邸ダイニング・ルームの「L」(える)の曲がり角に立っていました

 ――まるで、いまキッチンから出てきたばかりという様に。

 この細さで、どうやって身体を支えるのか、疑問に思われる程です

 ――しかし、上半身だけ宙に浮いている、亡霊の様では

 ――ありませんでした

 ――そこらへんの人間よりも、身体に生命が満ち溢れているのです

 ――それは生き甲斐を持った人間の楽観主義ではなく

 ――せいが同じ量を維持し続けるものではなくて失われるものなのだ、と知った者の<遅ればせながらのすがりつき>

 ――それが、滲んでいるかの様です

 ――つまり、汗濁あせだくなのです。


 腕が、


 だらり


 と垂れています。

 そして、上腕と同じ太さの前腕が来て

 ――骨。

 そうです。

 皮と骨だけ、という表現があるかもしれませんが、その腕は「骨だけ」という描写に近いほど、白く、細いものでした。

 そして、表面に模様が入っています

 ――透かし彫りのツタのよう。

 腕、ということで考えると細いですが、それが骨、として考えると大変太い棒なのです

 ――骨粗鬆症こつそそうしょうなど、訪れようとしても、怖気づく様な腕。


 その腕の先についた<手>は、爪の先が、

 ――まるで両極を緊張で引っ張り、ついに耐えられずに千切れた糸の中心点の様に、ほつれて、下がっていました。

 そんな指も、フィクション作品で典型的にあらわされる<宇宙人>像の様に、細長いものでした。


 そして、片手にだけ、黒いガン(手袋)がめて、あります。


 黒革の、ガン。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ