『実力』と、それを包む邸宅 その12 ―オチ おかーず―
明日
――というより朝――には、まだ、なっていません。
夜の下、"摂"氏は、小屋に辿りつきます。
鍵はかかって、いませんでした。
入って、かけました。
そして、電気をつけず、ベッドに倒れ込みます
――すぐに眠りにつきました。
が、すぐに目覚めました
――眠りに入ってから、どれくらい経ったのか、わかりません。
しかし、部屋の中の様子は、黒の中で、よくわかります。
モノの輪郭。
目が慣れたのか――
<月光>故か――
"ジュネス"邸母屋の明かりが、間接的に役立っているのか――
"摂"氏はベッドの上で顔を起こし――上半身を起こし――そして腰掛け、
――そのまま、窓外を見ました。
"ジュネス"邸の母屋1Fは、まだ明かりがついています。
カーテンが閉めてあるので、"ジュネス"が起きているのか、<離れ>からではわかりません。
<<勝手に入って、探ったりしない方が良い>>
そして、尿意を抱きます。
「そういえば、ここの隣りの部屋がバスルームって、"ジュネス"は言っていた」
その時、"摂"氏は、つもりも無いのに連想で、
<<深夜だから、風呂を入れては、近所迷惑になりそうだ>>
と思ったそうです
――"ジュネス"邸の敷地は宏大ですし、
――さらに隣りの家までも結構距離があり、
――"ジュネス"邸<母屋>さえも、離れて建っている為、
バスタブに大音量でお湯を入れても文句は言われそうにないですが
――まぁ世の中には、色々なヒトがいますから
――汗ばんではいても、かきすぎている程ではありませんから。
[そういえば、HIPHOPも、ベートーベンの『月光』も、聞こえません]
遮るためには窓もカーテンも役に立っていない暗い夜の中、バスルームへのドアは、白壁に埋まっている様に見えました
――ノブさえ、どこにあるのか?
よって、"摂"氏は立って、電気をつけます。
<地中海風>でイメージが統一された部屋。
最初に荷物を置きに来たときと、変化がありません。
とつぜん、"摂"氏は、
<<荷物が動かされている?>>
様な気がしました。
調べると、あるべきものは、すべてあります。
尿意を思い出し、隣りの部屋へ繋がるドアを開けました。
電気のスイッチは、すぐに見つかりました。
用を足しながら、観察します。
バスルームは、水色を基調としたタイルで、アメリカ的というより、西洋の海辺のコテージにある――そんな雰囲気です
――ビクトリアンは微塵もありません
――あくまでも、現代的。
「<西洋>では概念領域が広すぎて特定できない!」
「では東洋」
「"セッド"によると…」
「うるさい! じゃあ、西欧、ってことでよろしく。西欧の、寒さが厳しすぎない、平和な国の海辺――入れ墨が入って、鼻ピアスの女が大活躍する国ってことで」
――知りませんけどね。
蛍光灯の、ワット数値の低い、淡いライトが壁に――二つある洗面台に――落ちています。
そして、部屋の隅に出来た闇は、ライトとコントラストを作り、ムードを高めています
――それか、掃除機の届かないところを隠しているのかもしれません
――それにそれが、別の意味でいくら効果的でも、<ひとりきり>の"摂"氏には無意味でしたが。
そして、大きな、白いバスタブが、窓辺にありました。
真っ白過ぎるほど、真っ白です。
バスタブがアゲインストしている窓は、壁一面を、上から下まで占めるほど、大きいモノでした。
その時は、カーテンが、かかっていました
――閉められていました
――だから、"摂"氏にはまだわからない情報です。
水を流し、手を洗って、鏡で歯の隙間を確認してから、"摂"氏はカーテンの隙間から、外を覗いてみました。
何もありません。
裏庭と夜が見えるだけです。
カーテンを
「しゃ」
と開けました。
窓はまるで、一枚ガラスの中に小さな、正方形の別の窓をたくさん埋め込んでいるかの様に、ひとつの外の世界を分断して、"摂"氏に提示していました。
バスルームを出て、<離れ>の寝室に戻ると、電気が切れていました
――そして、窓に
<人影>が!!!
その怪しい人影は、すぐに壁の中へ消えました。
カーテンが、風に揺れています。
だれかが立ち去る足音はしません
――風の擦れ声すら、しません。
"摂"氏は ドアに近づきました。
鍵は、かかっています。
"摂"氏は、窓とカーテンを閉めました
――窓の外を見ず。
そして、閉め切った部屋の中、そのままベッドに倒れ込みました。
そして、眠りに落ちました
――そして、朝まで起きませんでした
――"摂"氏はそういうタイプなのです
――ただ、寝る前に歯を研くことを忘れるタイプでは無いので、妙ですね。
さて、長い長い――描写過多な――<ロンギベール>(長い冬)な
――前置きは、これまで、です
(その予定です)
――この作品世界の設定は<夏>ですけど、上記比喩は、適切でなくはない筈です。
次回からもこの話は続きますが、タイトルは変わります
――悪しからず。




