もびりえ ふゅねれーる その17
"摂"氏が"ジュネス"邸<玄関スペース>を出て
――踏みしめられる、御影石
――あの<暑い週末>から日が経ても、古く汚れた様子がありません
歩き出そうとすると
「ちょっと待ってて!!」
と、"ジュネス・ドレ"。
閉まるがままにさせようと、ドアを放した"摂"氏は
「ぱ」
と、その指で、引っかける様に端を掴み
――"ドレ"は屋内で母親に向き直り
――"摂"氏は<掴み>を
「す」
――と外してから
――"ドレ"の口が開き
「アイツの部屋の事なんだけど……」
"摂"氏は閉まりかけたドアを
意志を持って
その手で閉めようとします
――固い蝶番の、強制への反発……
――ガラス戸に
「べったり」
――付いた指紋。
「するり」
と閉まると――
中では"ドレ"が、"ジュネス"夫人と
何か
話をしています
――ガラス越し…
――詳細はわかりません。
籠った
――言葉にならない
音が
――振動して
[――それとも、風?]
――室内だけで自律的に
在る様でした。
"摂"氏は、玄関ポーチで、待ちます。
音がして――
振り返ると
――"運転手"氏の接近………。
「じゃり」っ
「じゃり」っ
――と、引き摺る様でした。
それはまるで――
豪華客船で船旅の途中、嵐に巻き込まれた結果、小型ボートに命からがら乗り込んだ船旅客が救助されずにナンパ中、久方ぶりに訪れた穏やかな日に安堵して、水の上を「ゆらゆら」揺れていると視界の隅、
「救助隊!?」
と、目を水平線へ凝らすと
それは
<鮫>
であり
その接近を
その尾鰭
で知る
――そんな様子と似た状況でした。
そんな状況も、終わります。
"摂"氏は、御影石ポーチ上。
("ジュネス"家で働く)
"運転手"氏は、下
――二人は、立ち止まったまま
――会釈。
"運転手"氏は、目を細めて、柔和に微笑んでいます。
「いいヒトそう……」
だと、どこかの誰かは、言うのでしょうね
――知りませんけど。
"摂"氏は警戒しました。
すると、"ジュネス"邸・玄関ドアが"摂"氏の背後で開き、
「"運転手"さん、いつもご苦労様です」
――"ドレ"は、ドアノブを掴んでいます。
"運転手"氏は
――首肯します。
笑顔は崩れません。
そして
"運転手"氏は木製階段を上がり
"摂"氏は下がるのです
――ドレが続くのです。
立ち位置が入れ替わると
目の前、
砂利道に囲まれた<アザレア>は、枯れていました。
――背後でドアが開き
閉まる
音がしながら
――そして、しなくなってから、
"摂"氏と"ドレ"は、
――音を立てず
――滑る様に
――宙に浮いているかの様に
公共の歩道まで、歩くのです。




