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温度  作者: 折鋸倫太郎
もびりえ ふゅねれーる
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115/395

もびりえ ふゅねれーる その17

 "摂"氏が"ジュネス"邸<玄関スペース>を出て

 ――踏みしめられる、御影石

 ――あの<暑い週末>から日が経ても、古く汚れた様子がありません

 歩き出そうとすると


 「ちょっと待ってて!!」


 と、"ジュネス・ドレ"。


 閉まるがままにさせようと、ドアを放した"摂"氏は


 「ぱ」


 と、その指で、引っかける様に端を掴み

 ――"ドレ"は屋内で母親に向き直り

 ――"摂"氏は<掴み>を


 「す」


 ――と外してから

 ――"ドレ"の口が開き


 「アイツの部屋の事なんだけど……」


 "摂"氏は閉まりかけたドアを

              意志を持って

 その手で閉めようとします


 ――固い蝶番の、強制への反発……


 ――ガラス戸に


 「べったり」


 ――付いた指紋。


 「するり」


 と閉まると――


 中では"ドレ"が、"ジュネス"夫人と

                 何か

                   話をしています

 ――ガラス越し…

 ――詳細はわかりません。


 籠った

 ――言葉にならない

 音が

 ――振動して

 [――それとも、風?]

 ――室内だけで自律的に

 在る様でした。


 "摂"氏は、玄関ポーチで、待ちます。

 音がして――

 振り返ると


 ――"運転手"氏の接近………。



 「じゃり」っ



 「じゃり」っ



 ――と、引き摺る様でした。

 それはまるで――




 豪華客船で船旅の途中、嵐に巻き込まれた結果、小型ボートに命からがら乗り込んだ船旅客が救助されずにナンパ中、久方ぶりに訪れた穏やかな日に安堵して、水の上を「ゆらゆら」揺れていると視界の隅、


 「救助隊!?」


 と、目を水平線へ凝らすと

 それは

    <鮫>

 であり

    その接近を

         その尾鰭

 で知る




 ――そんな様子と似た状況でした。


 そんな状況も、終わります。


 "摂"氏は、御影石ポーチ上。

 ("ジュネス"家で働く)

 "運転手"氏は、下

 ――二人は、立ち止まったまま

 ――会釈。



 "運転手"氏は、目を細めて、柔和に微笑んでいます。



 「いいヒトそう……」



 だと、どこかの誰かは、言うのでしょうね

 ――知りませんけど。


 "摂"氏は警戒しました。


 すると、"ジュネス"邸・玄関ドアが"摂"氏の背後で開き、


 「"運転手"さん、いつもご苦労様です」


 ――"ドレ"は、ドアノブを掴んでいます。


 "運転手"氏は


 ――首肯します。


 笑顔は崩れません。


 そして

 "運転手"氏は木製階段を上がり

 "摂"氏は下がるのです

 ――ドレが続くのです。



 立ち位置が入れ替わると

 目の前、



 砂利道に囲まれた<アザレア>は、枯れていました。



 ――背後でドアが開き

         閉まる

 音がしながら

 ――そして、しなくなってから、

 "摂"氏と"ドレ"は、

 ――音を立てず

 ――滑る様に

 ――宙に浮いているかの様に

 公共の歩道まで、歩くのです。



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