↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
温度  作者: 折鋸倫太郎
もびりえ ふゅねれーる
PR
116/395

もびりえ ふゅねれーる その18

 二人は公道で、向きあいました。

 隣の車道にて――行き交う

             自動車

 は、在りません。


 "摂"氏はノートの表紙を相手に見せて、


 「では、帰って、<何か>を調べてみますね」


 「そんなに急がなくていいから」


 「急ぐべきなら急ぎますし、急ぐべきでないなら、そうしません」 


 「――ただ……」


 と、"ドレ"


 ――"摂"氏はそれを耳にしてから

 ――語尾を質問形に変えて

 ――鸚鵡返し。


 「――ずっと在る訳じゃないからな」


 と、"ドレ"は濁した語尾を、<クレークマン>に補完しました。


 "摂"氏:「在る?」


 と詳細を問うと、


 "ドレ":「<ノート>とか<フロッピー>とか……色々なモノ――ずっと、とっとける(保存する事が出来る)訳じゃないからな」


 「何故?――どういう事ですか?」


 「オレの父親は、そろそろ……あの……あの部屋("蜘蛛宇宙人"の部屋)を片づけようとしてるから――」


 「そうですか」


 「他のヤツも、もう忘れようとしているし………」


 「そうですか」


 「<全部>は、とって、おけないから」


 「そうですか…」


 「早い目に、<どの程度まで、とっとくのか>、教えてくれないと……」


 「その為には<ノート>だけでなく、あの部屋の全てを一度、軽くでも調べないと……」


 「じゃあそうして」


 「<いつ>が良いですか?」


 「いつでも」


 「では――」


 「あ、今日

  ――これから

  は、もう、ちょっと……」


 そして"ジュネス"邸を見返ります。


 "摂"氏:「では明日」


 「――明日」


 「明日また参ります」


 「――明日は困る」


 「では<いつ>なら?」


 「今度の休み」


 「わかりました――ではその時に」


 そして、


 「その前に――」


 と前置きをして、


 「それから、データも勿論なのですが……」


 と続ける"摂"氏。


 "ドレ"は、無言で先を促します。


 "摂"氏:「データ以外に、特に、<あの手袋>をとっておいてもらえますか?」


 「どの手袋?」


 「入口から入ったところにあるテーブルの上に乗った――」


 「ああ、あの黒の……」


 「ええ」


 「アイツがいっつも着けてた…」


 「ええ」


 「家の中でも外さなかった…」


 「知りませんけど、そうです

  ――捨てないでください」


 [手袋の中身はもう、無いのに――


  "摂"氏も結局、ヒトの子ですね]




 諒解した事を告げられてから、別れを告げます。


 そして、二人は互いに背を向けるのです。





 

 バス停まで歩いていく途中、"摂"氏は口ずさんでいる自分に気付きます。


 誰でも知っている

 ――誰でも暗唱の出来る

 ――有名すぎて陳腐な

 あの



 <シェイクスピアのソネット、第18番>



 ――その時、季節は"夏"でもないのに………。 



 それまで"摂"氏は


 <18番>が<恋愛詩>だ


 と、ずっと思っていました


 ――偉いセンセイ方がそう解説してきた様に……


 ――しかし、"摂"氏には違うのです


 ――違う<意味>なのです


 ――<恋愛>とは、何も関係が無いのです。




 その内容――「思い出」。




 14行目の最後


 「あなた」


 を


 「しー」


 と発音した後、"摂"氏は


 「ふ」


 と、空を見上げます。


 星ひとつ


 月ひとつ


 在りません


 ――でも、何も問題はありません


 ――電柱の上、電気が


 「明々」


 ――点っているのですから。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。