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温度  作者: 折鋸倫太郎
もびりえ ふゅねれーる
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113/395

もびりえ ふゅねれーる その15

 そう発言してから


 「――ゴミは捨てられるだけだ

  ――そして捨てるのは<簡単で>

  ――捨てるのは、誰にだって、出来るんだ」


 と"ドレ"は付け足しました。

 対し、


 「つまり、あなたはわたしに、<ゴミ漁り>をしろと言っているのですよね?」


 「そうだよ

  ――捨てなきゃなんないからな」


 そして、二人は

 ――生真面目な顔で

 見つめ合い――

 そして、口端を捩じ上げます

 ――二人で。


 穏やかになってから、


 「ですが、わたしにはまだ、これ――」


 そして、"摂"氏はノートを掲げます。


 「――これに価値があるかどうか、わかりませんから」


 「いいよ――無ければ、無いで。

  ゴミに、<ダイヤモンド>

  ――は、無いだろうけど……

  どっかの機械に使う小っちゃい<部品>でも見つかれば


  ラッキー!!


  って事で」


 そして、二人は一緒に"蜘蛛宇宙人"の部屋を出るのです。


 「電気を消さなくて良いのですか?」


 と、コンクリートの<トラップドア>を閉めている"ドレ"に声を掛けると、


 頷きました。


 その額に、少量の汗。


 外は暗くなっていました。


 "ドレ"は、部屋を閉めきりませんでした。


 二人は"ジュネス"邸二階

 ――階段を囲う手摺に沿って

 歩きます。


 そして、階段の口のところまで来て、

 "ドレ"が

 ――下ろうと

 ――階段に一歩

 足を掛けた時、


 「ぽつり」


 [=「"ルィェ"さんは、几帳面なヒトだった様ですね……」]


 と、"摂"氏が言います。


 「――部屋は綺麗でしたから」


 "ドレ"は、立ち止まります。


 「死んだ時はな

  ――もう(既に)あの部屋

  結構、片づけてあったんだよ。

  前は、もうちょっとモノが散らばってたんだ

  ――ここの廊下まで、本とか紙とか出てた。


  アイツが死ぬ前

  ――ちょっと前にさ、

  ――なんかさ、

  <変な記号とか>が書いてる紙とかが、ゴミの日にたくさん出てたんだよ

  ――燃えるゴミの日に。


  だからさ

  ――その<ノート>だってさ

  ――あの部屋にあった<フロッピー>や<パソコン>だって

  始末してた筈なんだよ

  ――アイツが、<他の>と同じ様に、始末したかったら…」


 その時、"摂"氏は気付くのです

 ――"ジュネス・ドレ"が泣きそうになっているのを

 ――いえ、<泣く>という動詞は、ここでは、表現する上で、適切ではありませんでした

 ――<声を詰まらせていた>のです……

 ――「始末」と発音し

 ――その後

 ――その声が擦れて

 ――そして息が喉へ逆流するかの様に

 ――音が死んでいくのを………。


 [それは

  ――状況が違えば、

  <単にカラオケをオールした翌日のガラガラ声>

  なのでしょう

  ――知りませんけど]


 実際、その目から、涙は零れませんでした。



 どの様な心理状態であったにしろ

 すぐに、"ドレ"は<それ>を


 無い


 事にしました。



 「オレにはアイツが何を考えてたか、よくわかんねぇよ」


 そう

 ――まるで、自分に言い聞かせる様にしてから、"ドレ"は、


 「ところでお前、あの時、一体何を話してたんだよ?」



 「あの時?」



 「あの

  ――テスト勉強しに、お前がウチに泊まりに来た日。

  アイツと何、話してたんだよ?」


 と、あの暑い週末の詳細を開示する様、要求したので、"摂"氏は解説しました


 ――詳細

 ――つまり

 ――<長かった、夜の闘いについて>

 ――それは省いて。


 シェイクスピアのソネットについて、の話をしたのです


 ――<"防御層"について>は全て省いて。


 「ほら、手に書いていたでしょう?」


 と"摂"氏がある程度の説明を終えた後

 ――ノートを持った手を掲げて

 問いかけると、


 「何を?」


 「ソネットを」


 「誰が?」


 「あなたのお兄さん――"ルィェ"さんが」


 「どこに?」


 「だから手に」


 "ジュネス・ドレ"は眉を顰めました。


 そこで、"摂"氏は話を区切りました。

 そして――


 「だから、あの時は、"ルィェ"さんと大した話をしていなかったんですよ

  ――シェイクスピア程度の話です」




 その時!!




 "ジュネス"邸一階、玄関ドアが開きました。



 ずっと落ちて行き――加速し続け――最後に落ちました。

 しかし、痛みはありません。

 衝撃が、すこしも無かった――訳ではありません――それでも、地面に叩き付けられる様な事もありませんでした――掌と足の裏で、しっかり、踏ん張ったからです。

 それでも、ぎっくり腰の様な<固さ>が、体中に発生していました。

 だから"摂"氏は、蛙の様に(和式便所式に)座っていました――ましになるまで。

 と思いや、すぐに"摂"氏は<異変>に気付きます。

 「見える――目が見える!!!」

 そして首を回します。

 落ちた先こそ――

 「ここが地獄なのか……」

 ――晴れやかな空の下。



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