もびりえ ふゅねれーる その15
そう発言してから
「――ゴミは捨てられるだけだ
――そして捨てるのは<簡単で>
――捨てるのは、誰にだって、出来るんだ」
と"ドレ"は付け足しました。
対し、
「つまり、あなたはわたしに、<ゴミ漁り>をしろと言っているのですよね?」
「そうだよ
――捨てなきゃなんないからな」
そして、二人は
――生真面目な顔で
見つめ合い――
そして、口端を捩じ上げます
――二人で。
穏やかになってから、
「ですが、わたしにはまだ、これ――」
そして、"摂"氏はノートを掲げます。
「――これに価値があるかどうか、わかりませんから」
「いいよ――無ければ、無いで。
ゴミに、<ダイヤモンド>
――は、無いだろうけど……
どっかの機械に使う小っちゃい<部品>でも見つかれば
ラッキー!!
って事で」
そして、二人は一緒に"蜘蛛宇宙人"の部屋を出るのです。
「電気を消さなくて良いのですか?」
と、コンクリートの<トラップドア>を閉めている"ドレ"に声を掛けると、
頷きました。
その額に、少量の汗。
外は暗くなっていました。
"ドレ"は、部屋を閉めきりませんでした。
二人は"ジュネス"邸二階
――階段を囲う手摺に沿って
歩きます。
そして、階段の口のところまで来て、
"ドレ"が
――下ろうと
――階段に一歩
足を掛けた時、
「ぽつり」
[=「"ルィェ"さんは、几帳面なヒトだった様ですね……」]
と、"摂"氏が言います。
「――部屋は綺麗でしたから」
"ドレ"は、立ち止まります。
「死んだ時はな
――もう(既に)あの部屋
結構、片づけてあったんだよ。
前は、もうちょっとモノが散らばってたんだ
――ここの廊下まで、本とか紙とか出てた。
アイツが死ぬ前
――ちょっと前にさ、
――何かさ、
<変な記号とか>が書いてる紙とかが、ゴミの日にたくさん出てたんだよ
――燃えるゴミの日に。
だからさ
――その<ノート>だってさ
――あの部屋にあった<フロッピー>や<パソコン>だって
始末してた筈なんだよ
――アイツが、<他の>と同じ様に、始末したかったら…」
その時、"摂"氏は気付くのです
――"ジュネス・ドレ"が泣きそうになっているのを
――いえ、<泣く>という動詞は、ここでは、表現する上で、適切ではありませんでした
――<声を詰まらせていた>のです……
――「始末」と発音し
――その後
――その声が擦れて
――そして息が喉へ逆流するかの様に
――音が死んでいくのを………。
[それは
――状況が違えば、
<単にカラオケをオールした翌日のガラガラ声>
なのでしょう
――知りませんけど]
実際、その目から、涙は零れませんでした。
どの様な心理状態であったにしろ
すぐに、"ドレ"は<それ>を
無い
事にしました。
「オレにはアイツが何を考えてたか、よくわかんねぇよ」
そう
――まるで、自分に言い聞かせる様にしてから、"ドレ"は、
「ところでお前、あの時、一体何を話してたんだよ?」
「あの時?」
「あの
――テスト勉強しに、お前がウチに泊まりに来た日。
アイツと何、話してたんだよ?」
と、あの暑い週末の詳細を開示する様、要求したので、"摂"氏は解説しました
――詳細
――つまり
――<長かった、夜の闘いについて>
――それは省いて。
シェイクスピアのソネットについて、の話をしたのです
――<"防御層"について>は全て省いて。
「ほら、手に書いていたでしょう?」
と"摂"氏がある程度の説明を終えた後
――ノートを持った手を掲げて
問いかけると、
「何を?」
「ソネットを」
「誰が?」
「あなたのお兄さん――"ルィェ"さんが」
「どこに?」
「だから手に」
"ジュネス・ドレ"は眉を顰めました。
そこで、"摂"氏は話を区切りました。
そして――
「だから、あの時は、"ルィェ"さんと大した話をしていなかったんですよ
――シェイクスピア程度の話です」
その時!!
"ジュネス"邸一階、玄関ドアが開きました。
ずっと落ちて行き――加速し続け――最後に落ちました。
しかし、痛みはありません。
衝撃が、すこしも無かった――訳ではありません――それでも、地面に叩き付けられる様な事もありませんでした――掌と足の裏で、しっかり、踏ん張ったからです。
それでも、ぎっくり腰の様な<固さ>が、体中に発生していました。
だから"摂"氏は、蛙の様に(和式便所式に)座っていました――ましになるまで。
と思いや、すぐに"摂"氏は<異変>に気付きます。
「見える――目が見える!!!」
そして首を回します。
落ちた先こそ――
「ここが地獄なのか……」
――晴れやかな空の下。
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