もびりえ ふゅねれーる その13
そして"摂"氏は<パソコン>に手を置き
――凭れました。
釣られたのか――
"ドレ"も。
[※ しかし、<パソコンに>ではありません]
「いいよ別に――よくわかんねぇから」
宙で片手を上下に振る"ドレ"は実験台
ではなく――
――"蜘蛛宇宙人"の部屋に、実験台は無いのです……
――代わりに在る
<フュームカップボード>に凭れています。
そして、唾を呑み
――喉を隆起
――そして、平ら。
<棚>のガラス戸は開いたままでした。
"ドレ"は、落ち着きを取り戻していました
――睨みつけたままでしたが。
[――正確に言うならば
――眉の角度を鈍くするつもりがまったく無い様子であり……
――その時、瞳に宿る敵意も、意図と同じ程度に<無い>のです]
その時、
とつぜん!!
"摂"氏が、見開きました。
そして
――それまで一頻り鳴いていた
――湖畔で
優雅に
佇んでいた
――<蛙>が水へ戻ろうとするかの様に……
<段ボール箱>に跳び付きます。
"ドレ"は身震いして、見下ろします。
"摂"氏は箱の頂上に乗せられている大学ノートを手に取り
頁を高速で捲り
――そして、或場所で止めます。
"ドレ"は上から、
「で、お前、やるのか、やらないのか」
「やります」
"摂"氏は相手に目を向けません。
真面目な顔です
――唯我論者の顔付で
――つまり、独善であり
<残酷>な顔付なのです。
読文中……
読文中………
「…………嫌ならいいけど」
それを聞いてから
――それとも聞いたからなのか………
"摂"氏は見上げました。
"ジュネス・ドレ"は明らかに不貞腐れている!!
「ぜんぜん嫌ではありません
――寧ろ、進んでやりたい位です」
そして、ノートを閉じました。
立ち上がり
――小脇に抱えます。
「やらせてください」
そして
――頭を下げませんでした。
答えを耳にする前に、
「ところで、期限はあります?」と、続けた"摂"氏。
「期限?」
「しらべる――つまり調査する」
「別に無いし」
"ドレ"の不貞腐れは消えていました。
そこで"摂"氏――
「では、今日のところは、これ」
そして、大学ノートを揚げるのです
――顔の真横まで。
「――これを借りて行ってもいいですか?」
「別にいいケド……」
すると、
「あ、これはノートの最初で?」
と"摂"氏は
――挙動不審。
「最初?」と"ドレ"が意味を明らかにする様、要求すると、
「いえ――別に」
そして
――感染したのか…
――相手を戸惑わせたまま
"摂"氏は再び、<段ボール箱>に屈みこみます。
そして
「ごそごそ」
複数のノートの表紙を見比べています……
――最後に
底の方から、
古惚けて
――角が曲がっている
<ノート>を取り出しました。
「ん」
と頷いてから――
「読むのなら、最初から読んで、最後で終わらないと」
そして、"摂"氏は微笑むのです。
その時、(ロードローラーの背中、かたつむりの殻の様に乗った<箱>とその<蓋>の間にある#隙間部分#に)――<何か>が現れたのが見えました。
それは、黒い塊でした――背景の<青空>と<黒さ>の差が際立っていました。
塊から、汗なのか――水が(箱の中へ)滴り落ちている様です。
すると、どこからともなく
「とぅるるるるる」
「とぅるるるるる」
と、電話のコール音に似た音がします。
そして、
「ぴーぷるるるるる」
と今度は、ファクシミリに似た音が続きます。
"摂"氏は両手を挙げたまま。そして、#隙間#に見える黒い塊――山の様に隆起しています――の中に、怪しい光がある事に気付きます。
瞬く、二つ。
そして
「ぴゅっ!!!」
という音がして――
少し遅れて
「んーん!!!」
と別の音がして――
"摂"氏は頬に風を感じ――渇きを覚えて――てから振り返り、二番目に発生した<別の音>、すなわち衝撃の類の音、その発生源に目を向けました。
"摂"氏の背後、(砂利ではない)土の大地に、大きなクレーターがひとつ、出来ていました――凹みには水が溜まっていて、その上、薄く、煙が立ち上っています。
そして、抉れたのか、土のカケラが平らな大地の上に、散らばっていました――オセロ盤の上にある食べカスの様に。
「動くなよ」
と機械的な声が聞こえます。
そして、"摂"氏の恐怖は本格化するのです。
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