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温度  作者: 折鋸倫太郎
もびりえ ふゅねれーる
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108/395

もびりえ ふゅねれーる その10

 「これ」


 そして

 ――ディスプレイに乗せていた手を……

 外し、

 "ドレ"は蹲りました。


 テーブルの下で

 ――何か


 「ごそごそ」


 ――しています。


 その間――[時間が掛かりそうなので……]

 上の空だった"摂"氏は、パソコン

 ――その脇にある

 ――フロッピーディスクが並列するケース

 ――その脇にある

 


 <奇妙なオブジェ>



 を見つけ

 ――見入りました。



 <壺>です

 ――土器の様な、小さな壺

 ――口に、糸で切り取った様な<シャープさ>を残す壺。

 ――テーブルの上、<宙に浮いた>壺。


 壺の底から、太い、人間の、二本脚が生えているからです

 ――足にはちゃんと、爪先があります

 ――子供がする工作の、粘土細工の様です。


 そしてそれは<仁王立ち>

 ――ではなく

 足の裏と裏、前後に間隔をとって――

 横から見ると、足の間に<三角形>の空間を作っています。


 <<よくバランスが取れている……>>


 壺の表面には、ニッポン語の<かな>で



 「イイネ!」



 と、記されています。


 壺の中には一本のボールペンが

 ――斜めに

 立ち、

 その尻には

 ――消しゴムなのでしょう……

 緑の<葉>の形をしたモノが付いています。

 と、


 「ごそごそ」


 が終わり、


 そして、パソコン用のテーブルの下から出てくる目的のモノは、



 <段ボール箱>。



 蓋が

 ――枝から芽吹く若葉の様に

 開いていて…

 ――分岐点に


 <大学>ノートが見えました


 ――そして一冊、地面に滑り落ちました。


 「これ」


 そして、"ドレ"は

 ――先に落ちた大学ノート

 ――その脇に

 その段ボール箱を


 「どす」


 と置きました


 ――段ボールの中は、やっぱり<ノート>。


 "摂"氏は

 ――"ドレ"と入れ替る様に

 跪きます。


 梃子の様に上体を起こした"ドレ"は

 ――腰に手を当てました。


 "摂"氏は、床に落ちた方のノートを拾います

 ――表紙には、年と日付が(数字で)書いてあります。

 開きます。


 <ラテン語>です


 ――極めて<現代的>なアルファベットで

 ――それも、ブロック体で

 ――丁寧に

 ――わかりやすく

 書かれています。


 「ぺらぺら」


 と捲り、"摂"氏は


 「これが、わからないのですか?」


 と、上目使い。


 「あなたは、これ ["摂"氏はジェスチャーを付します] の内容が知りたいのですか?」


 「オレが知りたいって云うか……」


 と"ドレ"が、語尾を汚します

 ――視線が地面を彷徨います。


 地面は、色の無いタイルで舗装されていました。



 「お前が知りたいだろうと思った

  というか……」


 と、"ドレ"が補完したので


 「どうしてわたしが?」


 と"摂"氏は

 ――自分の顔を、人差し指で示します。


 「知らねぇ――」


 そして、視線を逸らしました

 ――宙へ。



 それが泳いでいる間、"摂"氏は、<段ボール箱>の中を調べてみました。



 上から下まで、大学ノートの山。



 「これから、何がわかるというのですか?」


 と一、二冊を捲りながら、"摂"氏が尋ねると


 「だから――知らねぇって」



 吐き捨てる様でした。



 "摂"氏は、戸惑いました。



 だから手を止めて、


 「この程度のラテン語なら、辞書を引けば、あなたにだって……」



 「オレが知りたいんじゃない!!」



 ――叫ぶかの様に、"ドレ"は大声を上げました。


 "摂"氏は

     ゆっくり

         相手を見上げます。



 「オレは、アイツなんか嫌いだ!

                ――キライなんだ!!

  オレはアイツなんかどうでもいい…

                 ――どうでもいいんだ!!!」


 実際に、唾の粒が飛んでいる――

 それが、見えました

 ――それは床に

 ――落ち……


 「帰った方が良いですか?」


 と、立ち上がる"摂"氏

 しかし、


 「そうじゃなくて――」


 と、言葉で邪魔をされ

 ――結局、<立ち上がり>は完了せず、

 中腰をキープする"摂"氏。

 そして

 ――相手が言葉を継がない為、再び腰を落としました。



 暫しの間を<沈黙>で埋めてから

 "ドレ"は、


 「アイツはずっと<何か>を調べていて

  ――アイツは<それ>を発表しようとしなかった……

  ――みんな、言ったんだよ……


  『論文にすればいい!』


  『学会でプレゼンテーションすればいい!!』


  『それがダメなら、どこか別のところに発表すればいい!!!』


  『この国が嫌なら、海外に行けばいい!!!!』


  そう勧めた

       ――でも、アイツは何も言わなかった

       ――何もしなかった

       ――<発表>に関しては、な。

  ウチの兄貴も言った

  ウチの母親も言った

  口を酸っぱくして言った

             ――でも、アイツは黙ったままだった。


  全部、無視したんだよ!!


  ――ぜんぶ、むし、したんだよ!!!


  そんでずっと

        <何か>

            をしていた――

  <何か>をしていたんだ




             ――独りで。





  オレはアイツが大嫌いだ!!

  ――いま考えても、アイツの態度にゃ腹が立つ

  ――ムカつく。

  アイツなんか家族じゃねぇ!!!

  でも――」


 そして言葉を切りました

 ――そして、窓外に目をやります。


 「でも、アイツが

         ――アイツが何かを残そうとしたのなら、

  それの邪魔をしたいとは思わないんだ………」



 外には、<夜の兆し>がありました。



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