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温度  作者: 折鋸倫太郎
もびりえ ふゅねれーる
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106/395

もびりえ ふゅねれーる その8

 <黒革のガン>………。


 それを見て

 ――ショックを受けた後

 ――落ち着きながらも

           (正確に表現するならば、<落ち着こうとしながらも>)

 駆け寄る様に――

 開いたばかりのコンクリートのトラップドア的<壁>を過ぎ……

 "摂"氏は

 ――部屋に飛び込み

 テーブルに近寄りました。


 そして"蜘蛛宇宙人"の<ガン>を見下ろし、

 掴み……


     ――ませんでした。




 触れる事に、躊躇いを覚えたのです。




 手入れが行き届いているのか、しわがある

 ――が、全体的につやのある

 [――味のある………]

 ひかく。


 [恰も野球選手が大切な道具にクリームを塗るかの様に

  ――そんな風にガンの所有者が手入れしている様子が見えなければ

  ここでは<皺>と形容せずに、<罅割れ>としたでしょう……

  ――それは<直線>であり、あの、怠け者の所有品によく発生する、枝先が派生してその先に無限の可能性を暗示させる<樹形図>にはなっていませんでしたので………]


 そして、"摂"氏の意識は

 ――すぐに

 ――他に

 占められるのです。


 <それ>と同じ色の<闇>が部屋に満ちている事

 ――空気と同じ様に、<籠っている>という事……。


 それは、図書館のニオイと似ている


 ――事はありませんでした………。


 <それ>は歯医者の

          ――処置室のニオイ


 ――でした。



 暗い部屋の隅、幾筋かの光が壁から

 ――将に

 漏れている

 ――かの様に

       ――まるで死んだ毛虫の様に

 動かず

    ――直線で

         同じ場所に

              キラキラと

                   在り続けています。


 [それらは幾つか在りますが

  ――部屋のモノすべてを

  はっきり見せるには、役不足]



 その時、"ドレ"は机の傍に立って

 ――何か、調べていました。


 「窓を開けないのですか?」


 と、"摂"氏が声を掛けると、


 「開けた方がいい?」


 と――横目。


 テーブルランプの間接照明では、その顔から<印象>を捉える事が難しい様です。


 「そうですね……」


 と、"摂"氏

 ――そしてひとつ、咳。

 すると、


 「アイツがほとんど、塞いじゃったからね」


 そして

 ――"ドレ"は調査

 ――らしき行為

 を中断して――

 さらに部屋の奥へ進みました。


 その、遠ざかり、翳った後姿を確認してから、"摂"氏は気付くのです。


 ライトとガンの乗った机は

 ――壁に

 つまり

 ――窓に

 面している事。


 そして、窓には、カーテンが付されて無い事。


 さらに窓が

 ――窓の形に

 コンクリートで隙間無く

 ――平らに

 ――内側から

 埋め立てられている事。



 見回すと、それは唯一の例外ではありませんでした



 ――"摂"氏の立ち位置から見える全ての窓が、コンクリートで埋まっている様なのです。



 窓それぞれに宛がわれたコンクリートとコンクリート

 ――その間

 ――"ジュネス"邸の<その他>と同じ素材が使われた壁

 ――それを覆う

 ――闇の中

 部屋には色々が

 ――大きいモノから小さなモノまで

 ――壁に面して

 ――床に沿って

 立ち並んでいる事が分かります。


 それらは本棚の様であり……


 「この部屋、窓はここしか開かないんだよね」


 そして

 ――部屋の最奥で

 "ドレ"は開けるのです






 ――カーテンを。



 射し込む光



 ――それでも、部屋が急激に明るくなる事は、ありません。




 しかし、光に由って部屋のモノ達の姿が、さらに明らかになります

 ――しかし依然として、<何がどれか>を具体的に解説するレベルにはありません。


 [十分では無いだけです]




 薄暗い中、離れて、"ドレ"の呻り声が微かに聞こえます


 ――それは独り言


 ――それは、何かに手間取っている様子。



 そして……



 ――レバーを上げる様な、大きな音がしました。





 開きます――振動する、窓ガラス





 ――その音




 消える。



 瞬時の間

 ――その後

 "摂"師の側面を、吹き抜ける風。



 そして"摂"氏の目の前

 ――不活性に宙を舞っていた

 部屋の

    埃

     の動きが

 ――その速度が……

          速まった

 のが、確認出来ました。




 "ドレ"は

 ――風に後押しされるかの様に……


 「すたすたすた」


 と、テーブルの傍へと戻ります。



 テーブル

 ――その上にあるがままの

             ――黒革のガン

 ――その傍にある 

         機械。



 それは、「コ」の形をしていました。


 "ドレ"は、それに手を伸ばしました。




 「プチ」



 という音が、聞こえました。


 続いて、紫のライトが、その機械の「コ」の内側に、淡く灯りました。

 そして、"ドレ"は

 ――紫のライトの余分を下から受けた

 不気味な顔を"摂"氏に

 ――まっすぐ

 向けました。


 微笑みます。

 

 「ホント馬鹿だと思わねぇ? これ、日焼けマシンなんだよ。

  ――くだらない」


 そして、笑います

 ――部屋の空気と同じ程度に、乾いています

 ――渇いて聞こえます……。



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