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温度  作者: 折鋸倫太郎
もびりえ ふゅねれーる
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105/395

もびりえ ふゅねれーる その7

 只、その笑顔は、すぐに翳りました

 ――"摂"氏の顔を見て、合わせたのか

 ――それとも死んだ親族を想ったのか

 ――将又


 ――陽が落ちたのか。


 "摂"氏が窓外を見ようと――


 「これはな……」


 すると、"ジュネス・ドレ"は

 ――仁王立ちのまま

 ――上半身だけ動かして

 手を遠く伸ばし

 ――クリストフル記号の様に

 ――<壁>の上、

 ちょうど肩のライン

 ――その下の辺り

 に、手を置き

 指

 ――人差し指と中指と薬指


 で、<壁>の一部を押しました(A)。


 その時、"摂"氏は気付きます

 ――<そこ>には

         ――コンクリートだと思っていた<壁>の一部には

 別の素材が使われている事。


 遠目

 ――そして

 <全体的>

 に見ると分かりづらいのですが、そこは

                   硬いゴムの様な

 しなやかな表面。




 待てど壁は


 「うん」


 「すん」


 とも、言いません……


 ――と、


 "ドレ"は下ろしていた反対の手を、壁に向けました。


 そして、壁の少し上の部分に置き、同じことをしました(B)。


 最後に、手を再び下ろし……


 同じ事をしました(C)。


 ちょうど、<壁>を平面図(正方形)と考え

 ――x(横)軸とy(縦)軸が中心点"0"で交差していると考えた場合、

 一番目の点Aは、x軸から考えると正だが、y軸から考えると負の位置

 二番目の点Bは、y軸から考えると正だが、x軸に於ける負の位置

 三番目の点Cは(x, y)両方とも負の位置

 という様子でした。


 そしてどれも、平面図を四分割するクロスのライン

 その傍にありました。


 その時!!






 物音を(一瞬)立てて、


 コンクリートの壁が

 ――外れる様に

 ――回転ドアの様に

 傾斜しました


 ――それも、<少し>だけ。



 壁の灰色と区別される


 ――黒い、縦の、直線。



 ヒトがひとり入るのに、十分な大きさはありません。


 "摂"氏は

     <<次に何が起こるのか?>>

 ――"ドレ"を見やりました。

 

 "ドレ"は隙間を

 ――目を細めて

 見つめていました

         ――<<思い詰めている>>

  

 "摂"氏は、次に何が起こるのか、見守ります。


 すると、"ドレ"が

 ――足の位置を変え

 両掌を

 奥へ傾斜した壁の半面に付けました


 そして――


 押します

 ――踏ん張りながら。


 「手伝いますか?」と背後から、"摂"氏。


 「いいいい」


 その発言の通り、必要ないのでしょう

 ――滑る様に、直線的<隙間>の面積は拡がって行きます。


 ひろがれば、ひろがる程、

 "摂"氏は確認します

 ――剥き出しになる

          コンクリート壁の<厚さ>。


 それは、表面から見るのと違って、極めて

                     <薄い>

                         モノでした。


 薄い厚さが明らかになるのと比例して、拡がる隙間。


 そして中の様子が見えてきます。


 中は真っ暗ですが、

 ぼんやり

 と、モノの輪郭が見えてきます

 ――しかし、何がどれかはまだ具体的ではありません。



 先ず見えるモノは、机

 ――その角

 らしきモノ。


 

 一人が通る事を容易とするまで<壁>を押した後、

 "ドレ"はそのまま

 ――滑り込む様に 

 奥へ入り


 ――"摂"氏が続こうとすると、


 クリック音がして

 

 <テーブルランプ>が点きました。


 そして"摂"氏は目撃するのです


 ――ランプシェード

          [それは、ニッポンの和紙で出来ています]

 その真下、




 片手の、黒革のガン。




 "摂"氏は息が詰まりました。




 [この時になって初めて、"摂"氏は、"蜘蛛宇宙人"が本当に死んだのだ、と認識したという事です]



 勿論、同級生である"ドレ"の発言を信じなかった訳ではありません

 それでも、


 「あのヒトは、死んだのだ……」


 そう思ったのは

        ――そう実感できたのは

 あの――

     シェイクスピアの夏のソネットを隠していた

 <手袋>を、

 その目で見た時。






 唾が口の中、大量に溜まっています

 ――飲み込む必要があり

 "摂"氏はそうします。


 「ごく」


 ――普通のヒトの様に。



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