もびりえ ふゅねれーる その5
"ジュネス"邸の鍵は
――玄関ポーチ
――の御影石
――その上
――小さな観葉植物に
隠されているのでしょう――
"ジュネス・ドレ"が植木鉢に手を入れ
――そのままドアノブへ
そして、開錠の音。
"摂"氏が"ジュネス"邸の玄関スペースに入ると
「こっち」
と"ジュネス・ドレ"は既に
――部屋の真ん中
――長方形に占めている
<階段>に
――二、三、
足を掛けています。
<<まるで、非常口マークの、緑のヒトの様>>
"摂"氏は続いて、二階に上がります。
二階に行くと、よりシンプルでした。
一階の玄関と、ほとんど同じです
――大きな窓
――それぞれにはカーテン。
構造そのものが同じです
――ただ、三階が無く
――それ以上、上がる事は出来ないのです。
いいえ
――相違点を探そうと思えば、いくらでも探すことができます
――この世の如何なる小説からも<粗>を探す事が、誰にだって出来る様に。
先ず
――植木鉢がありません
次に
――掛け時計があります
――時を精確に刻んでいるのでしょう
――知りませんけど……
最後に
――二階の床は、大理石ではありません
――どちらかと云えば
――マホガニー。
そして、類似点さえ探すことが出来ます
――<バルコニー>が無い事。
階段を上がったばかりの"摂"氏の正面には――
「応接間だよ」
――そう、"ジュネス・ドレ"が声をかけます。
「その先に、オレの親の寝室があるんだ」
その
――ちょうど"ジュネス"邸一階<ダイニング・ルーム>に当たる空間の上に据えられた
<応接間>
其処へのドアは
<ガラス張り>
でした
――恰も、声を遮るかの様。
ガラス越しに見えます――
部屋の中央に
――材質が高級そうである事が一目でわかる
――コーヒーテーブル
それを挟んで
三人掛けのソファーが二つ、面しています
――その傍に、一人掛けソファーが一つ
――斜めに
据えられています。
それらソファー表面の生地は、統一されています
――豪華な革張り。
硝子越しに見えます――
壁に、モダンな作風の絵画が飾られています
――"ジュネス"邸一階<ダイニング・ルーム>に飾られていた現代的
――でありながら保守的
な絵とは違います……。
それは、抽象画でした
――それも、数字で描かれた、<絵>でした
――いいえ
――数字ではありません
――<1>の様で
――クリストフル記号……
<それ>が、点描の様にキャンバスに敷き詰められ、
<螺旋>を描いています。
「あの絵は?」
――"摂"氏が指します。
歩きかけた"ドレ"が、
「さぁ、誰か有名な作家らしいよ」
――立ち止まりました。
「誰ですか?」と、"摂"氏が尋ねると
「誰?」
「その作家は誰ですか?」
「知らね――画家の名前なんて覚えてねぇよ。画家なんて世界に五億はいるし」
「では、タイトルは?」
「<17>」
「は?」
「だからぁ、17番。この作家はタイトルを付けなかったので有名なんだ
――作品の内容より、作品がナンバーで呼ばれる事で有名だったんだ。
もういいだろ?」
そして、見せる背中
――"摂"氏には、もう良くありませんでした。




