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温度  作者: 折鋸倫太郎
もびりえ ふゅねれーる
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103/395

もびりえ ふゅねれーる その5

 "ジュネス"邸の鍵は

 ――玄関ポーチ

 ――の御影石

 ――その上

 ――小さな観葉植物に

 隠されているのでしょう――


 "ジュネス・ドレ"が植木鉢に手を入れ

 ――そのままドアノブへ

 そして、開錠の音。




 "摂"氏が"ジュネス"邸の玄関スペースに入ると


 「こっち」


 と"ジュネス・ドレ"は既に

 ――部屋の真ん中

 ――長方形に占めている

 <階段>に

 ――二、三、

 足を掛けています。


 <<まるで、非常口マークの、緑のヒトの様>>



 "摂"氏は続いて、二階に上がります。



 二階に行くと、よりシンプルでした。


 一階の玄関と、ほとんど同じです

 ――大きな窓

 ――それぞれにはカーテン。


 構造そのものが同じです

 ――ただ、三階が無く

 ――それ以上、上がる事は出来ないのです。


 いいえ

 ――相違点を探そうと思えば、いくらでも探すことができます

 ――この世の如何なる小説からも<粗>を探す事が、誰にだって出来る様に。


 先ず

   ――植木鉢がありません

 次に

   ――掛け時計があります

   ――時を精確に刻んでいるのでしょう

   ――知りませんけど……

 最後に

    ――二階の床は、大理石ではありません

    ――どちらかと云えば

    ――マホガニー。


 そして、類似点さえ探すことが出来ます

 ――<バルコニー>が無い事。



 階段を上がったばかりの"摂"氏の正面には――


 「応接間だよ」


 ――そう、"ジュネス・ドレ"が声をかけます。


 「その先に、オレの親の寝室があるんだ」


 その

 ――ちょうど"ジュネス"邸一階<ダイニング・ルーム>に当たる空間の上に据えられた

 <応接間>

 其処へのドアは

 <ガラス張り>

 でした

 ――恰も、声を遮るかの様。


 ガラス越しに見えます――

 部屋の中央に

 ――材質が高級そうである事が一目でわかる

 ――コーヒーテーブル

 それを挟んで

 三人掛けのソファーが二つ、面しています

 ――その傍に、一人掛けソファーが一つ

 ――斜めに

 据えられています。


 それらソファー表面の生地は、統一されています

 ――豪華な革張り。


 硝子越しに見えます――

 壁に、モダンな作風の絵画が飾られています

 ――"ジュネス"邸一階<ダイニング・ルーム>に飾られていた現代的

 ――でありながら保守的

 な絵とは違います……。


 それは、抽象画でした

 ――それも、数字で描かれた、<絵>でした

 ――いいえ

 ――数字ではありません

 ――<1>の様で

 ――クリストフル記号……

 <それ>が、点描の様にキャンバスに敷き詰められ、

 <螺旋>を描いています。


 「あの絵は?」


 ――"摂"氏が指します。

 歩きかけた"ドレ"が、

  

 「さぁ、誰か有名な作家らしいよ」


 ――立ち止まりました。


 「誰ですか?」と、"摂"氏が尋ねると


 「誰?」


 「その作家は誰ですか?」


 「知らね――画家の名前なんて覚えてねぇよ。画家なんて世界に五億はいるし」


 「では、タイトルは?」


 「<17>」


 「は?」


 「だからぁ、17番。この作家はタイトルを付けなかったので有名なんだ

  ――作品の内容より、作品がナンバーで呼ばれる事で有名だったんだ。

  もういいだろ?」


 そして、見せる背中


 ――"摂"氏には、もう良くありませんでした。



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