もびりえ ふゅねれーる その2
"摂"氏は何も言いません
――それが<誰か>は、すぐに予想がつき
――そして、胸を強く
――握り拳で
――打たれた様な気がしました。
痛みはありません。
<死>そのモノのせいでは、ありません
――実際、身近な人間が死んだ時も、"摂"氏はそれ程の衝撃は受けませんでしたから
――<<ヒトは誰でも、いつかは死ぬのだし……>>
――と悲観的に
――人間の歴史に登場した偉大なる哲学者達に比肩するが如く、嘯いていた訳でもありませんでしたが……。
頭の中で"蜘蛛宇宙人"
――細い身体
――その、パフスリーブの様な肩
――あの
「にやり」
が、浮かんで、
"摂"氏は、そのビジョンを
――唾と共に
――<フィギュイーク>は唾の中で滲んで
――溶けて
――ゼリーの様……
一息で
――奥へ
洗い流しました。
目の前に立つ"ジュネス・ドレ"は、いつも通りです
――正確には、<以前通り>です
――時が経ってもあまり外面に変化が現れないヒトはいるものです……。
しかし、中でも、<不安>が周囲に漂っている様に見える点
――つまり状態
に於いて、変化がありました。
"ドレ"は、"摂"氏を
「じっ」
と見つめていました。
"摂"氏が何を考えているのか
――それが読めないのか…
「ほら、覚えてない?――前に、ウチに、テスト勉強で、と…」
と
――キーワードを散りばめて
昔の記憶を取り戻させよう
としますが、
「覚えています」
と、"摂"氏は
――その様な前置きが必要無い事
――「と」の後に「泊りに来て」と付け加えて文を完成させる必要が無い事
を端的に示しました。
そこで、"ドレ"は息もつかずに続けます。
「で
――アイツ
――アイツがな……
――死んだ
――んだよね」
「そうですか…」
<死>という
――現象を示す
具体的語を強く
――確認するかの様に再度
耳にした時、先程打った"摂"氏の胸の衝撃
――その余韻
が、突然消えました
――その時に告げられた事を、以前からずっと、知っていた
気がしたのです。
[※因みに、"摂"氏は占い師でも超能力者でも、マインドリーダーでもありません!!]
"摂"氏には、次に訊くべき事が、わかっていました。
「いつ?」
「どこで?」
「どうやって?」
それら質問を繰り返して、ひとつの主題でしかなかったモノに肉づけをする…
――そして情報が十分だと思われて
――後は既に登場した情報を繰り返すだけになった後は…
――信頼する相手に感情的同化をしようとする
――信頼する相手を理解をしようとする
それが<普通>なのでしょう。
しかし、"摂"氏は、そうではありませんでした。
そんな"摂"氏が相手に訊いた事
――それは
「それで?」
でした――
それは、ひどく冷たく、場に響きました。
そして誰もその冷たさを感じません
――誰もが自分の人生と
――その周囲だけに忙しく
――通過するヒトに関心は無いのですから。
相手のぶっきらぼうな言い方に刺激され、
「それで……」と、"ドレ"は口から出る言葉の輪郭をぼかしながら、続けます。「ウチに残っているモノがあって……」
「それで?」
"摂"氏は、後になって思い出します
――あまりにも性急にその質問を繰り出していて
――冷静だと思っていた自分が
――<<冷静さを失っている>>
――それが明らかであった事。
"ジュネス・ドレ"は音を出します
――が、言葉になる前に濁して……
――忙しない息吹に聞こえます。
しかし、<ルシュ>な音は最後――
「ラテン語なんだ」




