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ゾーンの向こう側  作者: ライターXT
再考編(合宿)
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83/207

第83話   裏の裏は表だよ

50キロ近くある学校まで、走って戻るという過酷な合宿がスタートして5分。各班は、それぞれに作戦を立てていた。


B班 

「まずは、コンビニとかで地図を探すのが一番だな。誰かに聞いてみよう。ノートとかメモ帳とか持ってる奴いないか?面倒な道ならメモ取りたいんだけど。」

「メモ帳?誰かにって?」

「そこら辺の人に決まってるだろうが。誰もメモ帳持ってないなら、とりあえず地元民探そうぜ。」

メンバーが散開すると、望月が老婆を発見する。

「おばあちゃん、すいません。お尋ねしたいんですが、ここら辺にコンビニは無いでしょうか?」

「あぁ!?お兄ちゃん、アタシは耳遠いんだからもっと大きな声で言ってちょうだい!」

「コンビニってこの辺にないですか!?」

「コンビニ!?あるよ。ちょっと遠いけど。でも、入り組んだ道だから覚えるのは大変だわよ。」

「そうですか・・・ちょっと待っててください。」

望月はメンバーの一人を呼び寄せた。

「おい久保。・・・出せ。」

「・・・何をだよ???」

「持ってきてるんだろ?」

「何を!?」



「エロ本だよ。」



「あぁ!?」


「どうせお前のことだ、合宿の夜に後輩と回し読みしようと思って持って来てんだろ?出せ。」


「何でそんなことしなくちゃいけねぇんだよ!」


「さっきみんなで話しただろ?みんなメモ用紙も、ノートも持ってない。俺はシャーペンたまたま持ってたけど、紙はない。お前は紙がある。だから出せ。」


「嫌だよ!」


「やっぱ持ってんじゃん。背表紙でもいいから使わせろ。」


「えぇぇぇぇぇ・・・。」


「コンビニ見つけたらそこでメモ用紙買えばいいんだから、今だけ貸せ。」


「ッチ!」

久保は舌打ちしながら、大事そうにビニール袋に入れた本を取り出し、望月に手渡した。


「お待たせしました。おばあちゃん。コンビニまではどう行ったらいいんです?」


「そこに看板があるでしょう?あの看板を右に曲がってそのあと・・・・・・。」

詳しく道をメモした望月は、深くお辞儀をしながら

「ありがとうございました。」と、老婆に礼を言う。



不機嫌そうに歩きながら、久保は望月に訊ねた。

「コンビニで何買う?昼飯買っとくか?」

「ダメだ。」

「何でよ?」

「一人につき使用できるお金は500円のみだぞ。メモ帳も買うし、地図も良いのを買ったら一人あたり400円くらいしか残らないはずだ。」

「マジで?じゃあ、飲み物とおにぎりくらいしか買えねぇな。」

「おにぎりなんか買っちゃダメだ。」

「はぁ!?なんで!??」

「バナナを大量に買うんだ。今時コンビニでならバナナも有るだろう。」

「ばなな?何でそんなもん・・・。」

「バァ~カ。バナナは一本だけでも高カロリーを摂取出来るんだ。貴重な栄養源だよ。ホノルルマラソンとかでも栄養補給として使われてるだろ?」

「知らねぇよ。ってかホノルルって何処だよ!ヨーロッパのどっかか?」

「お前は・・・・・・本当に馬鹿なのか?」

望月は呆れながら久保に呟いたのだった。



その頃A班では。

「とりあえずオレ、近所の人に道を聞いてきましょうか?」

五条がそう言いながら中林たち先輩二人に近寄ると、木村がそれを静止した。

「いや、どっちにするか決めよう。」

「え?どっちって?」中林が不思議そうな顔をしている。

「ちゃんと歩いて帰るか、【車で帰るか】だよ。」

「は!?お前、ちゃんとルール読んだのか?バスとか電車は使っちゃダメなんだぞ!」

「お前こそ、ちゃんと読んでるのかよ。公共の交通機関を使っちゃダメってだけの話だろ?つまりだ。【ヒッチハイク】は有りってことじゃん。」

「え!!」

「引率者の監督はルールの一環としてコメントしてくれないだろうけど、ヒッチハイクは規定に逆らって無いはずだぜ。公共の交通機関には該当しないはずだから。」

「マジで!?超ラクじゃん!!」

「いや、かなりリスクが有るぞ。5人全員を乗せてくれる車なんてないはずだから2~3グループに別れないとヒッチハイクは不利だ。だからといって何時間待っても誰も止まってくれないかも知れないし、グループごとに全然違う場所で下ろされたら合流出来なくなる。ケータイは没収されてるんだからな。」

「そう・・・か。」

「どっちで行くべきか・・・。」

一瞬の沈黙の後にしゃがみ込んでいた中林は立ち上がってこう言った。

「・・・んじゃあさぁ。走ればいいんじゃね?」

「簡単に言う奴だな。」

「そんな運に任せてチマチマやるくらいなら、とっとと走った方が早い気がするぞ。」

「まぁ・・・それも言えてるか。」

木村たちはゆっくりと地元民を探し始める。



開始30分後には各班が地図を購入した。

「よし、取り敢えずこの山を越えたら町が有るらしいから、さっさと行くか。」


竹下の言葉にメンバーが賛同し、C班はゆっくりと山道を登っていくのだった。

登りつつ、最後尾からついてくる引率者の望月薫は、せっせとメモを取っていく。


「何書いてるんでしょうね?」

「知るかよ。」

園崎の問いに、松田は冷たく答えるだけだった。


望月薫を含めた引率者3人は、実は同じ項目の記されたメモ用紙を携帯していたのである。



※引率者は以下の項目に該当した選手を随時記載すること。


1、効果的な意見を出せた者

2、班の前進に貢献した者

3、議論に積極的に参加できた者

4、班を牽引する者


この用紙がどのような意味を持つか判明するのは、まだ少し先の話である。

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