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僕と彼女の猟奇的な日常 ――怪物が現れるようになった日常で、歪んだ俺の性格が武器になる? なぜか海外からも依頼が来るようになった――  作者: nnnkkk
第一章 僕と彼女の猟奇的な日常

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第43話 未登録介入

現場はすでに荒れていた。


住宅地の端の小さな公園と、古いアパートの間。

植え込みは踏み潰されている。


登録駆除従事者が二人。


少し離れた位置にもう一人いた。

クロスボウを下げたまま、動けずに立ち尽くしている。


中型の鳥――に見える。


体幹は厚い。

胸骨が前に張り出し、首と脚だけが異様に長い。

二足で立っている。


羽は退化していて、肩に瘤のような名残があるだけだ。

代わりに脚の筋肉だけが異常に発達している。


一瞬、体が沈む。

跳ねない。

体重を落とすように、上から叩きつけてくる歩き方だ。


頭は小さく首が長い。前後ではなく、斜めに振れる。

デカいダチョウ?


細く硬い嘴は突くための形をしている。

仕留めるための形に見えた。


速くはない。だが止まらない。


一人目の登録が前に出たあと、危険を感じて下がろうとした。

が、遅れた。


脚が上がる。振り下ろしではない。体重ごと斜めに落ちる。


衝撃と何かが潰れる音。

身体が弾かれ転がる。骨が折れたかは分からない。

だが立てる雰囲気じゃない。


残った登録が踏み込んだ。バールを振り上げる。


前に出るしかない距離。

退けない角度。背後には逃げ切れない一般人。


判断は早い。だが装備が足りない。

叩くだけで終わった。


二発目の前に、獣が体を振り、質量が横に流れぶつかる。何かが弾ける音。


登録が倒れた。受け身は取っている。

だが起き上がるまでの時間はない。


獣は迷わなかった。頭を低く差し込み体重ごと覆い被さってくる。

地面と質量で空間を潰し、とどめを刺そうとしていた。


その外側で茂は止まっていた。


距離と角度、それに獣の向き。

登録の位置。

横からなら刺せる。自分のリスクを無視すれば。


だが望んだ形ではない。五万円が無駄撃ちになるかもしれない。

それじゃ前に出れない。

損をする。


振り下ろされた脚が登録の胴を捉え、逃げ場のない重量がそのまま覆い被さった。


鈍い衝突音。

肺の空気が押し出される。


骨の何本かは間違いなく折れただろう。戦線からは外れた。

そこで獣の動きが止まった。

餌だと判断した?


注意が下を向き重心が前に落ちた。

首が低くなる。


――今だ。


茂は即座に側方へ移動したが、まだ間合いには入っていない。

踏み込んでさらに距離を詰める。


獣が顔を上げた。


気付かれた――


首がしなり黄色い嘴が、こちらを向く。

茂は指を動かした。雷光。瞬間的な白が連続して爆ぜる。


害獣の視界が潰れ動きが止まった。


一歩だけ踏み込み、最短距離で腹に刺突を通す。

刃が入る。


トリガ。


内部で圧が立ち支えが消える。

害獣が崩れ地面が鳴る。動きが止まった。


茂は槍を抜き、距離を取る。

視線は獣に残さない。


登録を見る。


動かない。

胸の動きが、すぐには分からない。


少し遅れて、浅い吸気音。


――死んではいない。


サイレンが近い。

パトカーはすぐ来る。


呻き声。

地面に伏せた登録が、わずかに動いた。

こっちも生きてる。


その横で、もう一人の登録が立っていた。

息は荒いが怪我はしていなさそう。


茂の方を見ていた。

視線が絡んだまま外れない。


めんどくさそうだ。









現場の熱が引き始めていた。


人の声は戻ってきているが距離がある。近づこうとする気配はない。

誰も中には踏み込まない。


茂はアパートの影に立っていた。

槍はもうケースに収めてある。

呼吸も落ち着いていた。


怪我をした二人を見た。どちらも生きている。


それ以上、確認する必要はなかった。


サイレンが止まる。

一台。

少し遅れて、もう一台。


ドアの開く音がして、足音が幾つか舗装を踏む。


警官の視線が流れ現場の配置と対象の動きを拾っていった。

それから人を見る。


最初に視線が来たのは茂だった。

武器を持たないまま立ち、害獣の傍にいる。


警官は近づかない。

距離を保ったまま、声を出す。


「現場に関わりましたか」


事実確認だけの声だった。


「はい」


茂は短く答える。


警官は反応を示さず、ただ無言で状況の観察を続けた。


視線を切り、登録のほうを見た。

別の警官がしゃがみ込み、状態を確認している。


「登録。負傷あり。意識あり」

無線に流れる言葉は、それだけだ。


警官の視線が周囲を巡る。公園の端と割れた舗装をなぞり最後に獣で止まった。

判断がまだ追い付いてない?


「……」


何かを言いかけて、やめる。

聞く段階じゃないと判断した?


警官は無線を切り、現場を離れずに立ったままになる。

管理はまだされていない。


誰かの携帯が鳴る。


茂はもう一度だけ現場を見て視線を逸らした。



現場は静かに分割されていく。近づいていい場所と、そうでない場所。

警察は止まらず指示を出していく。


倒れていた二人は、少し離して置かれていた。

一人は壁にもたれ、もう一人は地面に倒れている。

どちらも声は出さない。


立っていた一人はその少し外にいて、視線が時々茂のほうへ流れる。


茂は見ない。見てもどうせいい事はない。


警官が無線で短くやり取りをしている。

内容は聞こえない。

名前も出ない。


「救急、向かってます」


それだけが、はっきり届いた。


怪我をした登録に、パトカーから持って来た毛布が掛けられ水が渡された。

処置だけが感情を挟まず進んでいく。

座らされる側。

立たされる側。


茂は後者だ。



サイレンが遠ざかる。代わりに救急の音が近づく。


茂は一歩だけ下がった。

ただなんとなく位置をずらすだけの動き。


まだ何も始まっていない。

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