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94話 開戦に魔術の狼煙

会議から2ヶ月が経った。

俺はドラマルトの南に位置する荒野にいた。

外はまばらな雨に包まれ、不穏なほどに暗い。

そう。

不穏なのだ。

雨が降っている。

雨季に雨が降るのは、ウェストン南部。

つまりエイサール周辺の気候であり、ここは降るはずがないのだ。

偶然という可能性もあるが、おそらく違う。


「レオリオスさん」


俺が空を見ていると、後ろにいた剣術使いがこちらに来た。


「確認できました。予想通り、奴らの魔術でしょう」


「そうか」


俺はそれを聞いた後、自身の後ろに目を向けた。

後ろには大量の魔術師や剣術使い、騎士がいて、その最奥にはレナードさんがいる。


ドーラ師匠や他の竜人族の人達によって竜獣を多少偵察できたらしい。

そして、奴らが動き出す日。

すなわち、決行日がだいたい推測された。

それが今日なのである。

俺達は5日前からここに待機し、その時を待っていた。

そして、推測はおそらく当たったのだろう。

竜獣達は魔術を使ったらしく、その影響で天候が乱れた。


魔術を使った。


つまり、もうすぐ始まるという合図だ。

…ということを、いつだかドーラ師匠から聞いた。

ドーラ師匠いわく、「竜族は竜人竜獣を問わず、戦う前には魔術使いが空に魔術を打ち上げる」らしい。

なんでも、昔の竜族が共生してた頃からの風習らしい。


俺は雨の中、杖を取り出し身構えた。

しばらくすると、


「先生!見えましたよ!」


後ろからフェイの声が響いた。

そして、フェイは正面の上空を指さした。

俺には何が見えたのかはいまいちわからない。

無理もない。

フェイは三眼族の血が混じってるから、視力がとてもいい。

俺等からは視認できない距離でも、フェイには見える。

そして、この状況で報告するということは、そうなのだろう。


「全員、備えろ!」


俺は全体に号令をかけた。

そのまま空を見ていると、次第に何かが…何かの群れが見えてきた。

よく見ると、その一体一体が顔が竜のリザードマンのような見た目をしている。

間違いなく、竜獣の軍勢である。

俺は杖を持った右手を前に出し、模倣眼を開いた。

すると、



ズンッ!



俺の右目が突如痛みだした。


「…は?」


俺は驚きを通り越して疑問に思った。

模倣眼が痛みだすのは、大抵の場合は高度な技を見た時だ。

それ以外は特にない。

しかし、俺の右目は痛んだ。

味方も敵も、これといった魔術は使っていない。


「………」


しかし、その痛みはすぐに引いていった。

問題はない…と見ていいのだろうか…


「先生。大丈夫ですか?」


気づくと、俺の隣にラーラが来ていた。


「念話で聞こえてましたが…目の方は…」


かなり心配しているようだ。


「大丈夫だ。…やるぞ」


俺は体勢を直し、再び杖を構えた。


「竜獣の軍勢、魔術の射程範囲に入りました!」


すると、フェイから言葉が飛んできた。

…さあ。


「全員!攻撃…」


俺が言うと、その場にいた魔術師が杖を構えた。

………。

………。

………。


「開始!!」


「「「「「「…ー・ーー〜…〜」」」」」」


俺が合図を出すと、魔術師は詠唱を始め、剣術使いは駆け出した。


「光襲の矢・雨!!」


俺は全員の詠唱が済む前に魔術を放ち、先制攻撃をした。


ドドドドドッ!


魔術は軍勢に当たった。

しかし、


「ぐぁぁぁぁぁぁ!!」


魔術の当たった残影の中から、竜獣の軍勢は勢いそのままに向かってきた。

それを見て、俺は全体に指示を出した。


「落とせ!!」


ドドドドドッ!!


俺の指示を聞いた魔術師は、空から魔術を発生させ、竜獣の軍勢に降らす形で攻撃した。


「グエッ!」


ヒューーー…


攻撃は見事軍勢に衝突し、攻撃を避けたり、当たったりした竜獣の軍勢は、地上付近に降下してきた。

これが作戦の一つである。


竜獣は基本、空中での戦いを得意としている。

逆に、その他の種族は空を飛べないものがほとんどなので、必然的に地上戦を得意とするようになった。

俺はこの特徴を踏まえ、地上戦を強制させることにした。


作戦により、竜獣の軍勢の殆どは地上に降りてきた。

軍勢はだいたい5000といった感じだ。

対して、こちらは6000の軍勢である。

人数的にはイーブンである。


「全員、各隊に別れ、各自撃滅せよ!」


俺がコールすると、自軍は約10隊に別れ、軍勢に向かっていった。

俺は影魔術研究会のメンバーも含め、約500人のメンバーを率いて、最前線に飛び出した。


「魔術組は基本、中と後衛で援護、その他、前線に行けるものはついて来い!」


そう言うと、隊はとどまるものと進むものに別れ、それぞれ攻撃を始めた。


すると、辺りからは金属が衝突する音、魔術を発動する音、爆発音が響き渡っていた。

そして、俺達もそれを鳴らし始めた。


キンッ!


ドーン!


キィィィ!!


すると、俺に向かって、見覚えのあるような魔術が飛んできた。


「炎戒の龍!」


「岩塊の龍!」


「水撃の龍(ウォーター・ドラゴン)!」


俺めがけて3体の龍が飛んできた。

その中には、見たことのない龍がいた。

なるほど。

これも秘伝魔術か。


「異属の双龍!」


俺は3体の龍がほぼ一点に集まる場所を予測し、魔術をぶつけて相殺した。

そして、


「影槍!」


ズズズッ!


俺は攻撃をしてきた竜獣めがけてやりを出し、下から貫いた。

そして、俺は再び進もうとした。



『ーー・〜ー…〜・ー』

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