87話 神様を生み出すために 1
復興祭から2ヶ月が経った。
雪は溶け、春を迎えた。
前世の日本の月で言えば、だいたい3月頃だろう。
この日、俺は庭にいた。
そして、剣をひたすらに振っていた。
そんな時、
「「影纏せんせーい!ニナー!」」
家の玄関の方から声がした。
「あれ?いないのかな?」
「いつも家にいるって話だったけど?」
俺はその声に聞き覚えがあった。
忘れもしない。
あいつらだ。
俺は剣を鞘に入れ、玄関の方に回った。
「お。やっぱりお前らか」
「あ!先生!」
「やっぱりいた!」
そこには、ドラマルトの学校の影魔術研究会の1期生のラーラとエルがいた。
先日卒業して、ここに引っ越してきたらしい。
「…にしても早いな」
「また休まずに来たので」
魔術の祭典の時もそうだが…
こいつらの体力…どうなってんの?
「それで先生?なんで息が上がってるの?」
「あぁ…さっきまで剣術の研究してたからな」
俺は雑談をしながら、2人を部屋に案内した。
「…よし。ある程度荷物の移動が終わったら教えてくれ」
「「はーい」」
俺は2人をそれぞれの部屋に案内した後、再び庭に向かった。
「開発の方はどうだ?」
庭に戻ると、そこにはドーラ師匠がいた。
「ドーラ師匠?今日は用事があったのでは?」
「すぐに終わったのでな。して、お前の研究の方は進んだか?」
「まぁ…まだ少ししか進んでないですね」
現在、俺は剣術の自作の奥義を開発してる。
なぜかと言うと、それは数日前に遡る。
それは、ある日の夕食の後。
俺は自室に行き、魔術の研究をしていた。
すると、
「レオリオス。少しいいか?」
「え?」
その日は珍しくドーラ師匠が部屋に来た。
そして、とある提案をしてきた。
「レオリオス。剣術を作ってみないか?」
「け、剣術ですか?」
剣術開発。
基本技として存在する剣術の9つの奥義とはまた別に、自作の奥義を習得すること。
9つの奥義を組み合わせたり、新たな技法を加えたりなどして作られる。
これは、剣術使いが神級剣術使いとなるための条件でもある。
ドーラ師匠は、それをしてみないかと提案してきたのだ。
俺はかなり驚いた。
というのもここ最近、俺は剣術を使う場面が減っていた。
使うことがあっても、「断地」と「界外剣」の2つくらいしか使っていない。
つまり、開発する理由が少ないのだ。
「何か理由があるんですか?」
「…実はな…」
そう聞くと、ドーラ師匠は説明を始めた。
内容をまとめるとこうだ。
まず最近、竜獣によって竜族の秘伝魔術の書物が盗まれたそうだ。
そこには、代々と受け継がれてきた魔術や、禁術までもが記されているそうだ。
その中には、村一つを消滅させるほどの威力のものもあるらしい。
もし、この段階で竜獣が攻めてきた場合、魔術による相殺では、周囲が危険である。
そこで、即戦力である俺に剣術の力を伸ばしてほしいのだそうだ。
「…なるほど」
「たしかに、お前の魔術の技術は一級品だ。しかし、他の技術も伸ばせば、そういった場面でも役に立つだろう。どうだ?」
それを受け、俺は少し考えた。
そして、優先度を考えた。
戦いに備えるうえで、魔術を伸ばすか、剣術を進化させるかを。
そして、最後には一つの考えにまとまった。
「…弟子はまず、師匠の教えと夢を実行すべき…」
そう考え、俺は結論を出した。
「分かりました。では、明日から研究を始めましょう」
こうして、今に至る。
現在は、奥義同士を組み合わせる方針で、ひたすらに自分の適した組み合わせを模索している。
しかし、なかなか結果が出ない。
だが、試していく以外の手段が見つからないため、ひたすらに組み合わせを試す。
こればかりは総当たりでやっていくしかない。
「ドーラ師匠。何か組み合わせるときのコツとかってないんですか?」
俺がそれを聞くと、ドーラ師匠は答えた。
「そうだな…組み合わせるときは、別の剣術同士で組み合わせることが多い。だから、基本的には組み合わせは2か3が多い」
…きっとそれはそうなのだろう。
ドーラ師匠も基本は3つだ。
となると、真剣術、戯剣術、流剣術からそれぞれ一つを取るのが妥当か。
俺はそのことを踏まえながら、再び剣を振るのであった。
その日の夜。
俺はニナと一緒にラーラとエルがいる別邸に行った。
「そういえば、フェイはどうしたんだ?」
「あいつはまだ学校にいるはずです」
「『しばらくはお世話になろうかな』とか行ってましたよ」
「ハハッ!フェイらしい」
この夜は久しぶりに2人と楽しく過ごした。
「それで、ニナと先生はどんな感じなの?」
「まぁ。楽しくやってるよ」
「えぇ〜本当にぃ?」
「え?楽しくない?」
「いやいや!?楽しいよ!レオはもっと自信持ってよ!」
そんな会話をしながら、俺達は思い出話に花を咲かせた。
「そういえば先生。さっきは何やってたの?」
「あぁ…えっと…」
俺は、剣術の研究について話した。
「へぇ…先生が剣術か…なんかイメージ無いけど…」
「けど、使ってないわけじゃなかったし」
2人は俺の剣術が少し意外だったらしい。
「組み合わせで悩んでるんだったらさ…魔術で補えば?」
エルがそう言った。
「え?魔術?」
「そう。だって、剣術を使うときの剣力って魔力と同じなんでしょ?だったら組み合わせれるんじゃない?」
その瞬間、俺の脳内に衝撃が走った。
たしかにそうだ。
なにも、剣術と魔術を区別して考えなくてもいいんだ。
そして、それを思い出したくはなかったが、前に戦ったソオ・ラップだって、剣に魔術を纏わせて使っていた。
剣術を組み合わせるために魔術をパイプにすれば、俺の得意に持っていける。
「ありがとうエル!なんか発想が浮かんできた」
「なんか先生にほめられると照れちゃうな」
「エル?」
エルが照れていると、隣のニナがムスッっとした目で見ていた。
「にゃ!?違うよニナ!?別に変な意味じゃなくて!」
『先生。ニナってこんな一面あったんですね』
2人が騒いでいると、ラーラが念話で聞いてきた。
『俺も、まさかこんな一面があるとは思ってなかったよ』
こりょ…しばらく賑やかになりそうだ。
その後の研究はトントン拍子に進んだ。
俺が組み合わせることにした剣術の奥義は「断地」と「無刀」である。
そして、それに光魔術と風魔術を組み込む。
こうして俺は新たに、高速で衝撃波を飛ばす剣術を開発した。
理屈としては、無刀による高速の抜刀に断地の衝撃波を加えたのだ。
その衝撃波のスピードは光魔術で補い、衝撃波の規模を風魔術で増幅させた。
これで完成でもよかったが、この技にはオリジナリティーが無いと判断した。
というのも、これだとただ速いだけの断地だ。
さらに、1発のみしか放て無いのは、少し物足りない。
そこで、この組み合わせの中に「天地突き」を加え、抜刀をなくし、高速の突き技に変更した。
これにより、技の数は増え、連発もしやすくなった。
突きの速度も無刀と光魔術で補った。
こうして、俺の奥義は完成に至った。
俺はその技に「飛槍の雨」と名付けた。




