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86話 エイサール発展会議

復興祭から1ヶ月が経った。

俺は今日、バオスと共に客間にいた。

そして、そこにはウェストンの国王補佐であるガリオ・レイをはじめとする多くのウェストンの重役や、村の農業や商売、経理等々の各部門の重役がいた。


「ではこれより、エイサール発展会議を始めさせていただきます」


バオスがそう言うと、会議は始まった。






この会議について説明するには、俺が旅を始めた約10年前に遡る。

俺が旅に出た後、村にウェストンの国王が訪れたそうだ。

国王の目には、未だに襲撃の跡が残るエイサールの村が写っていた。


「これは…かなりの事態だな」


襲撃後の5年の間にウェストン内では国王が代わった。

それに伴う引き継ぎや外交、竜獣の動きなどにより、国王は国から出られずにいた。

それによって、エイサールに訪れるのが先延ばしになっていたのだ。


「国王様。遠い中来てくださり…」

「それは後でも良い。まずは状況を述べよ」


バオスが出迎えると、国王はそう言った。






バオスは村であったことをすべて話した。

村に前触れもなく襲撃者が来たこと。

狙いは模倣眼を持つ者の抹殺であったこと。

それにより、村の8割が消失したこと。

現在はその半分の臨時的な復旧に至ったこと。


「…なるほど」


すべてを話し終えると、国王はあたりを見渡した。


「…して、その模倣眼を持つ者とは何者だ?」

「それは…」


国王がそう聞くと、バオスは少し言いにくそうにした。

そして、それを見た国王は察した。


「息子か?」

「…はい」


バオスは、原因となった者が罰せられるのではと少し恐れたのだ。


「無事なのか」

「はい…お陰様で」


だが、国王はそうはしなかった。


「して、その息子はどこだ?」

「先日、旅に出ました」

「旅?なぜだ?」

「魔術によって各国に散らばった家族たちを探しに」


そう聞くと、国王は笑った。


「…どうされました?」


「いや。そのものはすごいな」


「え?なぜでしょう?」

「自分の命が狙われているのにもかかわらず、家族のために動ける者をすごい以外の何の言葉であらわせよう?」


そう言って、国王はレオリオスを評価した。

そして、笑い終わった国王はバオスに向き直る。


「バオスよ。村の重役を集めよ」

「はっ!しかし、なぜでしょう?」

「村を再び起こし、そしてさらに豊かなものにしようではないか!」


こうして始まったのが「エイサール発展会議」である。






エイサール発展会議は年に1度、この襲撃があった日の前後の月に行われる。

今回は復興祭があったということで、この日となった。


「バオス殿よ。本日は見慣れぬものがいるようだが…その者は?」


会議を始めようとすると、ガリオさんがこちらを見てそう言った。


「息子です。村出身の神級魔術師でございます」

「はい。レオリオス・パルトと申します。世では「影纏」の二つ名で通っております」

「そうか…貴殿が…」


そう聞くと、ガリオさんは納得したようだ。


「失礼。では会議を始めよう」


そして、会議は再開された。


「本日の会議内容は、業務報告と、課題解決に当たるための対策検討です。まずは、各部門より、今年の業務を報告せよ」


そして、会議は業務報告に入った。






「…以上が報告となります」

「よし…これで業務報告は終わりだな」


業務報告は約1時間で終わった。

内容を簡単にまとめると、麦の生産が昨年よりも増加。

しかし、それを上回る勢いで売上が上がっている。

これはおそらく、ジャイフへの提供の開始が大きいだろう。

そして、先日の復興祭もあり、来村者も急増。

その一方、予算が計画していた金額を少々上回ってしまったらしい。


「次はこの村の課題についてだ。まずは今年までに解決できたものを消そう」


そう言って、バオスは正面に表を出した。

そこには「エイサール 課題」と上に書かれ、下には課題が多数書かれていた。


「まず、これは解決だな。後は…」


表が提示されると、その中で解決済みのものを次々と線を引き、消していった。


「…これで全部だな」


数分後。

どうやら全部消し終わったらしい。


「では、この中のものを話し合おう。何か話し合いたいものはあるか?」

「ならば…」


この会議では、参加者がこの表の中から話し合いたいものを選び、それについて話し合う、というものを繰り返すらしい。

俺達はその後、3つほどの課題について話し合った。


「…あとはあるか?」


その場の者たちはもう話し合うことは見当たらないのか、何も話さなくなった。


「レオ。何かあるか?」


そうすると、俺にパスされた。


「………」


俺は表を見つめ、なにか無いかを探した。


「……ん?」


すると、一つの項目に目が止まった。


「この『外交を増やす』というのは?」

「あぁ…それか…」


俺が聞くと、バオスは頭を掻いて、少し迷ったような表情を浮かべた。


「何かあるんですか?」

「いや…その段階に移っていいのかがわかんなくてな」


…なるほど。

バオスはこの内容を進める段階に移っていいのかを迷っていたらしい。

しかし、俺にはそれは愚問に感じた。

というのも、この1年でエイサールは麦とジャイフを通して間接的に世界に進出している。

さらに、復興祭には各国の主要人物も来ている。

それを考えれば、


「話し合ってもいいと思いますが?」

「そうか…ならやるか」


そうして、話し合いが始まった。






「…あとは」


話し合いは1時間に及ぶ重大なものとなった。

大方の内容は決まったが、一つだけ決まらないものがあった。


「外交を担うのは誰にするべきか…」


そう。

外交の代表、いわば外交官の任命だ。

この村は事件以前は閉鎖的だった。

さらに、事件のこともあり、ウェストン以外の国々とパイプがある人物がかなり少ない。

そのため、外交官に適性のある人物がほぼいない。


「どうしましょうか?」


俺は考えた。

そして呟いた。


「…外交に必要な適性となると、…各国に顔が広いこと。…それなりの立場を取れること。…どんな国でも会話ができる言語力。…人との交流に適したコミュニケーション、いや、対人能力か…」


俺が独り言を呟いていると、視線を感じた。


「ん?」


見ると、その場にいた全員が俺を見ていた。


「あ」

「いたな。適性者」


え?いたの?


「誰ですか?」


そう聞くと、全員が俺を指さした。

………。

………。

…え?


「俺!?」


「いや…」


「旅で各国と交流があり…」


「3つの勲章による発言力があり…」


「4つの言語が使えて…」


「三眼族の子を仲間にしたり、ジークバルトの国王に好かれるほどの対人スキルがある」


………。

…本当だ。


「俺…適性じゃん…」


「じゃあ、レオで決定でいいな」


こうして俺は、エイサールの外交官に任命された。

また…役職が増えた…

俺はこう思った。

普通、転生した主人公とかは、能力盛々のやつが多いだろうけど、俺の場合、能力と言うか…


「情報自体が多すぎね?」と。

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