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80話 もう一人の恋の道 2

ーニナ視点ー

ナナさんとドーラさんの対決の次の日。

私はレオの指導の下、野営の準備をしていた。


「そうか。ニナは野営初めてなんだな」

「そうなんだよ〜。だから一回やってみたくて」


作戦は立てたものの、私は野営をしたことがないから、レオ中心に動いてもらう。

申し訳ないけど…よろしくお願いします。


「…よし。物は大丈夫そうだな」


レオはそう言って立ち上がった。

どうやら準備は終わったみたい。


「出発はいつ頃にする?」


私はレオに聞いた。


「う〜ん…夕方の日の沈みかけがいいかもな。その時間だったら魔獣種の心配も少ないし」

「わかった」


準備を終えて、私は一旦部屋に戻った。






そして数時間後。

外は夕暮れ時になっていた。


「じゃあ行くか。道案内を頼んでもいいか?」


レオがそう聞いてきた。


「うん!任せて」


私はレオの前を歩き、この前見つけた湖に向かった。


「…ここら辺も少し変わったな…」


歩いていると、レオがそう呟いた。


「え?このあたりに来たことあるの?」

「あぁ。旅を始める前にちょっとだけな」


…もしかして、レオは湖のことも知ってるのかな…

私が少し不安になっていると、


「けど、林まで入ったこと無いな。特に用事もなかったし」


レオはそう言った。

よかった…

湖のことは知らないらしい。


「きっとレオも驚くよ。すっごくきれいなんだから!」

「へぇ〜。楽しみだな」


レオはそう言って笑みを浮かべた。

私はそれを見て鼓動が速くなるのを感じた。

その後、恥ずかしさで黙ってしまった。

そして数分後、目的地に着いた。






「よし。まずは布部屋(この世界のテント)を作るか」

「手伝うよ!」


湖に着き、私の心も多少落ち着いた。

私達は2人で布部屋を作り始めた。


「けど、本当に布部屋は1つでいいのか?」

「う、うん!まあせっかくだしね」

「せっかく…?」


あ…口が滑っちゃった。


「ま、まぁ…準備しよう!」

「…そうだな」


レオはその後、黙々と作業を進めた。

そして、布部屋はすぐに完成した。


「できたな。じゃあ次は…」


グゥ〜〜〜…

レオが何かを言いかけると、私のお腹がなった。

少し恥ずかしかった。


「………」

「…フッ…飯にするか」


レオは少し笑って、そう言った。

そして、枝を大量に用意して、魔術で火を起こした。

その後、レオは魔術でしまっていた鍋と食材を取り出し、調理を始めた。


「何か手伝う?」

「あ、いや。これは大丈夫」


そう言って、レオは食材を切っては、どんどん鍋に入れていった。

…慣れてる。


「早いね」

「まぁ、旅の間は俺が作ってたからな。なんだったら最初は1人だったし」


レオは慣れた手つきで具材を切り、魔術で水を鍋に入れて加熱した。


「それで…何を作ってるの?」

「あぁ。今日はシチューにしようかなって思って」


シチューか…


「懐かしいな…たしか、私が家に来たとき最初に作ってくれたのが、カレラさんのシチューだったっけ?」

「そうだったな。懐かしい…」


レオはそう言いながら、鍋の中をかき混ぜていた。

そして、持ってきたであろう調味料を入れていった。


「…いい匂い」

「これ、実はこの前家に置いてあったレシピを参考にしてるんだよ」

「え?それって…」

「あぁ。きっと母さんのものと同じやつだ」


そうか…

だからこんなに懐かしい気分になるのか。


その数分後。

シチューは完成し、レオは皿に盛り付けてくれた。


「まずは食べるか」

「そうだね」


私はレオからお皿をもらい、手を合わせた。


「「いただきます」」


私はシチューをすくい、口に運ぶ。

口の中は、少し甘いけど、具材の味がしっかりと残っている…

以前食べたときと同じ味が広がった。


「やっぱり美味しい」

「ならよかった」


私はそれをあっという間に食べ終わり、お皿を片付けた。


「ふぅ…ごちそうそまでした」


そして私は、いよいよ作戦を実行することにした。


「レオ!せっかくだし、湖見に行かない?」

「お。いいぞ〜」


私はレオを連れて、湖に向かった。






ここに来る前。

私はルカとナナさんと一緒に作戦の確認をした。


「ナナさん。一応、今日の作戦を聞いてもらってもいいですか?」


ルカがそう言った。


「構いませんよ」

「ありがとうございます。では、ニナさん」

「はい…」


私はナナさんに作戦を説明した。

作戦はまず、2人で湖に行くこと。

そして、そこでレオと思い出話や他愛のない話をする。

そこで心の準備をし、最後にそこで告白する。

というものだ。


「いいんじゃないんでしょうか。問題とするなら、ニナさんの勇気がドコまで行けるかですね」

「そこは…頑張ります」



こうして、今に至る。

今は第1段階「2人で湖に行く」をクリアした。

次は第2段階だ。


「綺麗だね…」

「…フッ…そうだな」

「なんで笑うの?」

「いや。こうやって景色を眺めることはあまりないから、ちょっと新鮮でな」

「…ねぇ。レオの旅のこと、少し教えてよ」

「え?旅のこと?」

「そう!家に帰ってきたときの報告じゃなくて、思い出話とか」


そこからは会話が弾んだ。

主に、レオの思い出を聞いて、私はそれに笑ったり、驚いたりした。

そして、時間はあっという間に過ぎた。


「それで?国王の師匠になってどうだったの?」

「もう大変だったよ〜。カオルはもちろん、ローザさんも飲み込みがすごくて、模擬戦で魔術破られた時なんて、もう青ざめたもん!」

「アハハハ〜」


話していると、レオは月を見た。


「…不思議だな…」

「ん?何が」


「俺の前世の世界は、大地が球体になっていて、太陽と月が出てきては沈むを繰り返してた。けど、この世界は別に球体じゃない。なんで日と月が出てきて沈むんだろう…って思ってな」


そうなんだ。

レオの前世では、そういった法則があったんだ。


「さぁ?私もよくわからないや」


…私はふと、気になってしまったことを口にしてしまった。


「レオ…前世がこいしい?」


なぜ聞いたのかはわからない。

けど、気になってしまった。


「…たしかに少し気になる」

「………」


私は少しショックを受けてしまった。

そうか…

レオはずっと前世の事を考えているのか。

前世の世界に戻れたら…もしかして…

そう考えてしまった。


けど、その不安はすぐに消えた。



「けど、未練はない。今は…この世界が大切なんだ…」



「そう…なの?」

「あぁ、だから、戻ろうとは思わないよ」


私はこのとき驚いた。

まるで、私の考えていることが読めているようだったから。


「念話で…読んだ?」

「え?いやいや、読んでないよ?けど、そう考えてそうだなって思って」


私はこのとき思った。

そうだ。

私はレオの優しさが好きになったんだ。

自分を隠さない優しさ。

みんなのために戦う優しさ。

そして…相手を思いやる優しさ…

そう考えると、私の心の中にあった緊張はなぜか消えた。

安心だろうか?

それとも疑問の解消だろうか?

理由はわからない。

けど、私はここだと思った。


「ねぇレオ」

「どうした」


私は言葉をつまらせることなく、続けた。


「私達、付き合ってるじゃん。けど、色々とあってそれらしいことはできてない。だけど…」

「お、おう…だけど…?」


「もし、私が『結婚したい』って言ったら…どうする?」

「え?」


レオはそれを聞いて少し黙った。

動揺してないように見えた。

けどよく見ると、レオの耳は見たこと無いほど赤くなっていた。


「…わかった。じゃあ質問を変えるよ」

「え?」


私はレオに少し近づいた。


「レオ…結婚してくれない?」


私は言いたいことを全て言った。

レオはそれを受け、顔がさらに赤くなった。

そして少しの間をおいて、レオは言った。



「…わかった。いいよ」



私はそれを聞いて、笑った。

いつもだったら泣いていそうだったけど、今日は涙は出なかった。

それはきっと、達成感と幸福感が強かったから。

その時はそう思ったけど、実際は…


ただ…レオと一緒に入れたのが楽しかったからだと思う。






ーレオリオス・パルト視点ー

俺はニナと一緒に布部屋にいた。

湖で告白を受け、まだ俺の頭は情報を処理しきれていないようで、少し熱い。

俺は今日、デートに誘われたというのはなんとなく察した。

けどまさか…結婚の申し出があるなんて…

俺は寝袋を用意しながら、ようやく状況を整理しきれた。


「ごめんね!突然こんなこと言っちゃって!」


ニナが笑ってそういった。


「いや。全然気にしないでいいよ。嬉しかったし」


そう笑って返すと、ニナは少し赤面した。

…疲れたな。



「よし。そろそろ寝る…!?」



俺が「寝ようか」と言いかけたときだった。


俺の口は塞がれ、唇に感じたことの無い感触がはしった。


見ると、俺の顔にニナがとてつもない距離まで近づいていた。


俺はここで、人生初めての「口づけ」を経験した。


「…って、え!?ニナさん!?」


俺は過去にないほどに取り乱した。

こんなに取り乱すのは、前世でもほとんど無い。

ニナの方を見ると、ニナも少し顔を赤くしていた。


「ごめん…けど…」


そしてニナはこう言った。



「やりたいこと我慢しちゃ…ダメかなって思って」



俺はその言葉を聞いて、笑った。

吹き出すとか、薄っすらとじゃなくて、はにかんで笑った。


「…よし。寝るか」

「うん…おやすみ」


こうして、俺達は眠りについた。

だが俺はこの状況で眠れるわけではなく、しばらく外で空を眺めながら考え込んだ。



「…人生って…何が起こるかわからないな…」



そう呟きながら、俺は明日からのことを考えるのだった。

おまけ話

実はこのお話の裏、湖の林の中で、ナナ・リーフとカオルは影潜りで隠れながら見守っていた。

それによって事の顛末は、2人によってすぐ知らされるのであった。

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