81話 恋路の終着点の1つ
ーニナ視点ー
レオとの野営から約1ヶ月が経った。
季節はもうすぐ冬になる。
まだ秋ではあるけれど、体感は少し寒い。
この1ヶ月の間に、ナナさんとドーラさんが式をあげた。
2人いわく、「祝われたいわけでもないから、冬になる前にとっとと済ましとこう」ということらしい。
一方私達はと言うと、これからやるというところだ。
というのも、「やるんなら絶対呼んで!」と学校のサークルメンバーに言われてたため、来るのを待たないといけなかった。
レオにそれを話すと、「じゃあ知り合い何人か呼ぼうか」と言って手紙を書き始めた。
それによって、式はナナさん達の式から約2週間後である明日ということになった。
そして今日、私はその準備をしていた。
私達は式はやらず、披露宴をすることにした。
今日はその会場設営である。
「ニナ?大丈夫ですか?」
私が準備をしていると、ナナさんが声をかけてきた。
「なんでですか?」
「なんか…緊張してるように見えて」
そう。
私は緊張している。
それもかなりだ。
実は今日作業しているのは、明日のためというのもあるが、本当は緊張を紛らわすためだ。
「私…うまくできるでしょうか…」
「大丈夫ですよ!」
「なんでそう言えるんですか?」
私は少しネガティブになって、そう聞いた。
すると、
「ここまで頑張ってきたんです。この披露宴に失敗なんてありませんよ!」
ナナさんはそう言って笑った。
その言葉を受けて、私は少し落ち着いた。
「まず今日は休みなさい。後はやっておくので」
「はい…ありがとうございます」
そして私は部屋に戻った。
翌朝。
私は村の門の前に立っていた。
「ニナーーー!」
すると、遠くから馬車がやってきて、そこから声がした。
「おぉーーーい!」
そして、更に声が聞こえたと思ったら、馬車から手を振ってきた。
「みんな久しぶり!」
そこには、学校のサークルメンバーに加え、ジルさんが乗っていた。
「まさかもう結婚なんて思わなかったよ〜」
「でも、呼んでくれてありがとな!」
サークルメンバーは次々とお祝いの言葉をくれた。
「ニナ」
そして、ジルさんが私の方を見て、言い始めた。
「もう…立派な大人ですね」
そう言って、ジルさんは私の頭を撫でた。
「もぉ〜。大人って言うんだったら大人扱いしてよ〜」
私はそう言って笑った。
パカッパカッパカッ…
そんな他愛もない話をしていると、向こうから更に馬が来た。
その上には剣を2本携えた男性が乗っていた。
「あれ?影纏の村って…ここだよな?」
その人はまるでだれかを探すように周囲を見渡していた。
そして私は、その人に見覚えがあった。
「リューさん?」
「ん?あぁ!君はたしか、影纏の!」
そこに乗っていたのは、神級剣術と体術を扱い、レオのライバルと言っていた「逆手のリュー・ダリウス」さんだった。
「ってことは、ここが影纏の村であってるんだな?」
「はい!そうです」
私はリューさんと挨拶をした。
すると、向こうから更に馬車が来て、停まった。
「ここが、エイサールですか」
その馬車には、なんか高価そうな服に身を包んだ若い女性と、軽い武装をした女性が乗っていた。
「ん?この人は?」
他のサークルメンバーが頭にハテナを浮かべる中、私とジルさん、リューさん、ラーラちゃんは身を震わせて驚いた。
「「「「ロ、ローザ様!?」」」」
そこには、現ジークバルト国王のローザ・ジーク様と、付き人のセリーヌさんが乗っていた。
「レオが招待したんですか!?」
「はい。『何かやるときは呼んでほしい』とレオ師匠に伝えていたので。ただ、文面がいつにもまして堅苦しかったのは驚きましたが」
…そうなんだ。
レオ…相当困っただろうな。
国王を呼ぶなんて、恐れ多すぎるもん。
「で、では、村に案内します」
そして私は会場となる家の裏の、いつもレオ達が修行している庭に案内した。
庭に案内すると、リューさんが庭を眺めていた。
「影纏は、ここで修行を?」
「はい。ほぼ毎日」
「そうか…強い理由がわかる…」
そう言って、リューさんは家の周りを見て回り始めた。
「あれ?そういえば影纏先生は?」
「え?そういえば…」
私は、レオが庭にいないことに少し驚いた。
私が最後に見たときは、庭にテーブルを置いたりなどの準備をしていたのだ。
「ちょっと探してきます」
私はみんなにそう言って家の中を探しに行った。
けれど、レオは家の中にいなかった。
私は村の方まで行き、レオを探しに行った。
すると、「レオリオスを見た」という証言があり、私はその手がかりのもと、レオを探しに行った。
私は村の墓地についた。
ここには、村が始まってからの村の住人の墓標がある。
そして、その奥にレオはいた。
「レオ?」
「ニナ。どうした?」
「みんなが探してたから」
「あ、ごめんごめん。すぐ戻る」
ふとレオの足元を見ると、ある墓標があった。
そこには人族語で「カレラ・パルト」と書いてあった。
「これって…」
「あぁ。母さんに、報告にな」
どうやらレオは、カレラさんに結婚のことを伝えに来たらしい。
そして、墓標にはなぜか花が添えられていた。
「花?」
「え?あぁそっか。俺の前世では、墓に花を添えるんだ」
「へぇ〜、そうなんだ」
そしてレオは立ち上がって、振り返った。
「よし。行くか」
「うん」
こうして、私達は家に帰った。
家に帰ると、家の中には急いで料理をするルカとカーラさんがいた。
「あ!お帰り!」
「もうすぐできます」
どうやら早く食事を運ばねばと焦っているらしい。
「運んでおきますか?」
「ごめんニナちゃん。お願い!」
私が食事を運び始めると、レオは調理場に入っていった。
「俺も手伝うよ」
「ダメでしょ!あんた主役だよ!?」
「じゃあニナにも働かせるなよ」
そう言ってレオは調理を始めた。
配膳を終えて、家の中に入ると、そこには調理を終えたカーラさんとカオルが待っていた。
「んじゃ、着替えますか!」
そう言って、2人は私の腕を掴んだ。
「え!?着替えるって!?」
「実はね、このパレト家には披露宴用の衣装があるのだよ」
え!?なにそれ!?
全く聞いてないんだけど!?
「古い生地を変えて一新したから、着てよね!」
そこに出されたのは、赤ラインの入った白い服と、薄茶色のスカートだった。
「これが…衣装?」
「そう!母さんも着たやつだよ」
私は服を手に取りながら考えた。
(これが…カレラさんも着た衣装…)
そう考えた瞬間、私はなんとも言えない気持ちになった。
その一方、家族に認められたと考えると、とても嬉しかった。
「ありがとうございます。2人とも」
「いいよいいよ〜」
「きれいな姿を見せてよね!」
私はその服を着て、庭に向かった。
「お、来たな。じゃあそろそろ…」
庭に着くと、そこではもうすでに披露宴ができる状態だった。
どうやら、私待ちだったらしい。
「…けどこれ…どういう言葉で始めればいいんだ?」
始めようとしていると、レオが言葉に困っていた。
私はそれを見て、レオに言葉を送った。
「レオが伝えたいことを言ったら?」
それを聞いたレオは何か吹っ切れたような顔をして前を向いた。
「本日は集まっていただきありがとうございます。この披露宴で、私はここにいるニナと結婚いたします。至らないところもあると思いますが、どうかよろしくお願いします」
レオはそう言った。
少し堅苦しくない?と思いながら聞いていると、レオは続けた。
「…堅苦しいのはここまでにして…今日はお祝いの席です。どうか最後まで楽しんでいってください!それでは皆さん!」
レオがそう言うと、私含め全員が飲みものが入ったグラスを手に取った。
そして、それを見たレオは言葉を続け、それにみんなも続いた。
「乾杯!」
「「「「「「乾杯!!」」」」」」
こうして、披露宴は幕を上げた。
披露宴では、参加者が何か祝いの品を持ってくるのが通例らしい。
まず最初に来たのはサークルのみんなだった。
「「「「「影纒先生!ニナ!結婚おめでとう!」」」」」
「まさかこんなにすぐだとは思わなかったよ〜」
「お前らも、よく来てくれたな。遠かったろ」
「いやいや。逆に見ないわけには行かないでしょ!」
みんな相変わらずだ。
「んで、これが祝の品な!」
「私達5人ですごい考えたんだから!」
「ありがとう、みんな!」
次に来たのはローザ様とセリーヌさんだった。
「師匠。改めておめでとうございます」
「だからローザ様…敬語はやめてください」
「ですが、師匠に敬語なしは…」
それを聞いたレオとセリーヌさんは少し困った表情をしていた。
「国王。そろそろ祝いの品を」
「あ、そうでした。私からはこちらを」
そう言って出したのはローブ2着だった。
私が嬉しさで笑みを浮かべた一方、レオは固まっていた。
そして、何やら驚愕の表情をしていた。
「こ、この紋章って…もしや…」
「はい。盟紋章付です」
私はこれを聞いて察した。
盟紋章付。
国が特定の人物と盟約を結ぶ際、その証として渡すもののこと。
これを身に着けていることは、その国の国王とのつながりがあることを示す。
これは、魔術師や冒険職、騎士の職において、その人物の実力と発言力を示すのに役立てられる。
また、この盟紋章付を3つ持っている人物は、国家間での会議での発言権等が与えられるらしい。
現在、レオはウェストンの腕輪と、ファジサイトの手袋を持っている。
つまりこれが3つ目なのである。
3つ持つのは、貴族以外だとごく僅かだ。
レオはそれをもらった後、深く礼をしていた。
次に来たのはリューさんだった。
「影纏…」
「ん?どうした?」
「お前の強さのわけが分かった気がするよ」
「は?どういうこと?」
「てか気づかないのか?この庭だけ村と空気がぜんぜん違うんだぞ!?」
私はそれを聞いて気付いた。
たしかにそうだと思ったのだ。
村には麦の匂いや澄んだ匂いといった自然な空気が流れている一方、ここは何も感じない。
驚くほどになにもないのだ。
「魔術の修行は、周囲の環境にも影響はするが、この空気の変化は相当だ。どんだけ修行したんだよ?」
「そういうもんなのか…」
レオは自分でも少し驚いているようだ。
「まずそれはいい。俺らはこれだ」
そう言ってリューさんは石を渡してきた。
「って、集音石!?」
「国王に『これを渡せ』って圧かけられたんだ。これで許せ」
「いや、十分すぎる!ありがとう」
レオは相変わらず音楽が好きだった。
最後に来たのはジルさんだった。
「レオリオスさん、ニナ、ご結婚おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「ニナ」
ジルさんは私に近づき、首に何かをかけた。
「これが私の祝いの品です」
私は首のものを見た。
「これって…」
「ケーズバルトが伝統的に作っているお守りです。どうかお幸せに」
ジルさんはそう言って足早に去っていった。
私は少し寂しいと思ったが、レオは笑っていた。
「どうしたの?」
「いや、親だな〜って思って」
「親?」
私はジルさんの方向を見た。
よく見ると、ジルさんは後ろで泣いていた。
そうか…
私の前で泣かないようにしたんだ。
「ありがとう…ジルさん」
私は小さくそう言った。
披露宴はその後大盛況の中、幕を閉じた。
そして、私達は片付けに取り掛かった。
みんなは村の宿に泊まって帰るらしい。
「ニナ」
片付けをしていると、レオが声をかけてきた。
「どうしたの?」
「これ」
すると、レオは何やら首飾りを出してきた。
「これは?」
「おそろいのが欲しいと思って、作ったんだ」
「へぇ〜!嬉しい…って作った!?」
私は驚いた。
どうやらレオは、2人の記念になるものが欲しくて魔術で作っていたらしい。
「あ、ありがとう…ズッ!」
私は思わず泣いてしまった。
嬉しさのあまりである。
「フッ!やっともとに戻ったな」
「もぉ〜何さ!」
そういう会話をしながら片付けを進めた。
そして夜となり、この日は一緒に寝た。
明日からの生活は期待と不安がある。
けどきっと乗り越えられる。
そう思えたのだった。




