79話 もう一人の恋の道 1
この話は、レオリオス、カーラ、ナナが家で告白計画をたてていた日のことである。
ーニナ視点ー
ある日のこと。
秋の日だ。
私は今日は珍しく村の飲食店にいた。
カオルに呼び出されたのだ。
私だけではなくルカ、バオスさん、ドーラさんも一緒だ。
「ゴホン!では話を始めます」
全員が席につくと、カオルが話し始めた。
「今日、僕がみんなを集めたのは他でもありません!」
そう言うと、カオルは深く息を吸い、言葉を続けた。
「お兄ちゃんがニナさんと全然恋人らしいことをしていないことです!」
「え!?」
私は驚いた。
なにそれ!?
全然聞いてないんですけど。
「カオルちゃん。レオは忙しいんだから、しょうがないよ」
「けど、納得できない!2人は付き合ってもう10ヶ月くらい経つんだよ!?それなのにそれらしいことしてるの全く見ないんだもん!」
「ん…」
たしかに一理ある。
私もそう思ったことも少しはある。
けど現在、レオは立場上かなり忙しい。
「そんなことに時間を割かせてはいけない」と思っていたのだ。
「というわけで、お兄ちゃんをおとすための作戦を立てたいので、このメンバーに集まってもらいました」
「レオをおとすってのは…かなり骨が折れそうだな」
バオスさんがそう言った。
「「「そうなんですよね〜」」」
私、カオル、ルカの声が揃った。
レオリオス・パルト。
彼は前世の記憶を持っていて、それの影響かはわからないが、頭の回転が速い。
私達がしようとしてることは瞬時に理解されてしまう。
この人物をおとすためには、それ相応の作戦を練らないといけないのだ。
「作戦以前に、単純に2人きりの状況をつくらないといけないのではないか?」
ドーラさんがそう言って、手帳を取り出した。
「ニナよ。まず最初にお前がすべきは、こういうことなのではないか?」
そう言って、ドーラさんは手帳の内容を見せてきた。
そこには箇条書きで、
・何をするのか
・どういう格好をするのか
・レオリオスの暇な日の把握
・どういう関係になりたいか
と書いてあった。
「…つまりこれって」
「デート計画を考えろってことですか?」
「そういうことだ」
「じゃあ今日から、ニナさんデート計画を進めましょう!」
こうして、この場の5人による、デート計画の話し合いが始まるのであった。
次の日。
私はドーラさんとルカと一緒に村の外にいた。
「村の中では行ける場所が限られる。よって、村の外でやるのがちょうどいいだろう」
「けど、村の外って何かありますか?」
「それを今から探しに行くのだ」
今日はデート場所を探しに行っている。
「でも、村の外って何をやればいいんでしょうか?」
「…たしかに考えてなかったな」
「外だとしたら…野営?」
3人でやることを決めながら、デートに良さそうな場所を探していく。
しばらく歩いていると、
「ここは?」
カオルが見つけてきたのは湖だった。
そこは林の中にあり、かなり大きな湖だった。
「こんな場所があったんだな…」
どうやらドーラさんも知らない場所らしい。
私はその場に立って、湖全体を見渡した。
「………」
「どうだニナ。ここなら」
私はドーラさんの言葉を聞いて考えた。
………。
…うん。
「ここにしましょう」
「うむ。では野営を基盤として計画を練ろう」
こうして、デート場所が決まった。
別の日。
今度はバオスさん、ルカと村の店に来ていた。
今日は服選びである。
「俺…女性の服とかはわからないのだが…」
「私も詳しくは…」
このメンバーで来たものの、全員服のセンスはあまりなく、行き詰まった。
「困ってるようね」
3人で悩んでいると、後ろから声がした。
振り返ると、そこにはカーラさんがいた。
「カーラさん!」
「カーラ。どうしてここに?」
「お父さんが女物の店に入ってくのが見えたら、誰だって気になるでしょ」
どうやら、バオスさんを追いかけてきたらしい。
「それで?何を悩んでいるの?」
「えっと、実は…」
私は今やろうとしていることをカーラさんに全て話した。
「なるほど〜。それで、今は服に悩んでいると」
「はい…そんな感じです」
「…よし!なら私に任せなさい!」
「え!?」
こうして、メンバーにカーラさんが加わった。
「ん〜…。ニナちゃんは目の色にあわせて緑の服を内側にしたほうがいいかな〜」
選び始めてから約10分。
カーラさんはどんどんと私の服を決めていった。
「そういえば何しにいくんだっけ?」
「野営ということになりました」
「野営か…じゃあ上着とローブくらいは用意しておくか…」
そう言いながら、カーラさんは何着か持ってきた。
「上着は白がいい?それとも黒系にする?」
「えっと…じゃあ白で」
「分かったわ。あと、今回は動きやすいように、下は二口型(この世界のズボン)にするわね」
「はい」
「ローブは…無難に黒にしましょう」
こうして、私の服はほぼ完成した。
「よし。次は下着ね」
次に訪れたのは、また別の服屋だった。
「どうしてお店を変えたんですか?」
「ん〜。簡単に言うと、私の好みかな」
…なるほど。
ここがおすすめらしい。
「あ!お父さんは入っちゃダメだからね!」
「あぁ。分かってる」
そう言い残し、私達は店の中に入った。
「じゃあニナ。採寸するから、一旦更衣室に行こう」
「はい」
そう言われ、私は更衣室にカーラさんと入り、服を脱いだ。
すると、カーラさんは少し驚いた反応をした。
「ニナちゃん。その腕って…」
カーラさんは私の腕を指さして、そう言った。
指の先には、橙色に変色した痣のようなものがあった。
「あぁ。魔力変色です」
「それって、レオと同じ?」
「はい。色は違いますけど」
魔力変色。
魔術を極めた人物に稀に現れる症状で、体の一部がその人物の魔力の特性を表す色に変色する。
ちなみにこれは、レオの白くなった髪と同じ症状だ。
これが私に出現したのは、学校の3年生だった時だ。
「橙色ってことは…結界特性だっけ?」
「そうみたいです」
「へぇ〜…って違う!まずは採寸」
そう言って、カーラさんは採寸を始めた。
そしてその後、下着も購入し、家に帰った。
次の日。
今日はまた5人で飲食店に来ていた。
「じゃあニナさん。これで準備は終わったけど、最後に聞きたいことがあります」
カオルちゃんがそう言った。
「結局、レオさんとどういう関係になりたいんですか?」
「どう…か…」
私は少し考えた。
たしかにそうだ。
ここまで計画したけど、結局どうしたいんだろう。
ただデートしたいだけ?
それだけではないと思う。
もう少し近づきたい。
もっとレオと色々なことがしたい。
きっと、そう思っているんだ。
「私は…レオともっと深くなりたい」
「深く?」
「うん。もっと色々なことをして、もっと話して、もっと…一緒にいたい」
そう聞いたカオルはにこりと笑って言った。
「じゃあ、やることは決まったね」
「…うん。ありがとう」
私はその言葉に笑顔で返した。
「ニナさん。頑張って!」
「レオは人一倍考えるやつであり、それによってか、身近な部分には人一倍鈍感だ。素直な気持ちを伝えろ」
ルカとドーラさんも私に励ましとアドバイスをくれた。
こうして、作戦会議は終わり、私達は家に戻った。
翌日。
ナナさんがドーラさんと対決し告白した日の夜のこと。
私はレオの部屋に出向いた。
「レオ。ちょっといい?」
「ニナか。どうした?」
私の心臓はうるさいほどに速くなっていた。
緊張が私の口に蓋をするような感覚だった。
けど、私は頑張って言葉を放った。
「明日って…暇?」
「明日…か…ちょっと待って」
そう言って、レオは手帳を見た。
どうやら予定を確認しているらしい。
最近、レオは様々な所から依頼や私用を受けていて、かなり予定が詰まっている。
けど私は知っている。
明日から最低3日間、レオは特に予定はないことを。
「うん。予定はないな。暇だが…どうした?」
「実はさ、この前ルカとドーラさんと一緒に用事で出かけた時に大きな湖を見つけたんだ」
「へぇ〜。なるほど」
レオは真剣に私の話を聞いていた。
私は緊張しながらも話を続けた。
「そこが夜になるととても綺麗でさ。それでね…」
「うん」
私は小さく深呼吸をした。
「明日、2人で野営に行かない?私、行きたいなって思ったんだけど、レオと一緒に行きたいなって思って」
「なる…ほど…」
レオは少し驚いていた。
そして、何かを考え始めた。
「…そうだな。せっかくだし、俺も行くか」
「え!?いいの!?」
「当然!予定もないことだし」
「ありがとう!」
こうして、私はデートの約束をすることに成功した。
「今日はもう遅いし、具体的なことは明日決めるでもいいか?」
「うん!わかった!じゃあおやすみ、レオ」
「あぁ。おやすみ」
私はレオの部屋を出て、自分の部屋に戻った。
部屋に入ると、ルカとナナさんがよってきた。
「どうでした?」
ルカがそう聞いてきた。
「うまくいったよ」
「よかった〜」
「念話で聞いてましたが…もしかして…デートですか?」
「はい。明日と明後日」
「そうですか…頑張ってください」
ナナさんは疲れ気味の声でそう言ってくれた。
自分のことでいっぱいだと思うのに…
本当に、ありがとうございます。
「じゃあ、私ももう寝るね」
「はい。おやすみなさい。ニナさん」
「おやすみ、ニナ」
こうして私は眠りにつき、明日を待つのであった。




