75話 故郷の跡
ファジサイトに来て、もうすぐ1週間になる。
リューの剣術指南はと言うと、俺もいるということがあってか、かなりの人数になった。
まさかこんなに剣術を教わりたい人がいるなんて思ってもいなかった俺は、想像以上の疲労を溜めてしまった。
そんな中、今日は最終日である。
今日は模擬戦をやるという。
俺とリューが1人で5人ほどを同時に相手をする。
内容は結構ハードのように見える。
俺は早速、模擬戦を始めた。
カンッ!
カカンッ!
カンッ!
辺りには木刀がぶつかる音が絶え間なく響く。
俺は向けられた木刀を受け止め、弾き返し続けた。
これを2時間にわたって続けた。
結構疲れる。
これはリューが考案したメニューだが…
あいつのメニュー…ハードすぎる。
この一週間、疲れないものが1つもなかった。
流石にきつい。
そんなこんなでメニューが終わり、俺は再びリューに向き合った。
「今日もやるのか?」
「当たり前だ。日課だろ?」
「日課にした覚えはない!」
今日もまた、剣術組み手である。
「じゃあ、今日は私が審判を」
そう言ってカーラが出てきた。
姉さん…今日も見てたのか…
俺はそんな事を考えながら、剣を抜いた。
「はじめ!」
「「月光斬!」」
カーーン!
俺とリューの剣がぶつかりあった。
そしてどんどんと技を出していく。
これを永遠とも言える時間繰り返す。
最後はギブアップ宣言で終わるのだが…
「「まだまだぁ!!」」
俺とリューは楽しくなってしまい、すぐには終わらないのだった。
「ギブ」
1時間後。
俺のギブアップ宣言とともに、組み手は終了した。
「これで6勝5敗だな」
「なんでこんなに拮抗するかね」
「さあ?」
俺とリューは握手をした。
「また戻るんだろ?」
「あぁ。1週間世話になった」
「お礼するのはこっちだ。手伝ってくれてありがとな!」
こうして、俺はリューに別れを告げ、宿に戻るのだった。
翌日。
俺達はエイサールに向かって出発した。
しかし、少し道をそれて移動していた。
馬車を走らせた次の日には、俺達は山脈にあるとある谷の底に来ていた。
そこは上から神々しい光が差し込む神秘的な場所だった。
そしてそこには、焼き焦げた木片が多く落ちていた。
中には建物らしきものまであった。
そう。
ここはニナの故郷である。
村の名前は「ウェルト」。
谷の底の地形を使って生活していたらしい。
エルフ中心の村であり、ファジサイトとの距離が山頂の村よりも近いことから、旅人もよく訪れたらしい。
ニナはその村の跡を見て、何かを考えているようだった。
この村は10年前、人さらいの集団の襲撃にあい全滅した。
大人は殺され、子供は売り飛ばされた。
生存が確認できているのは、売られる寸前で逃亡できたニナだけだ。
考えることが多いのも無理はない。
「ニナ。あまり抱え込むなよ」
俺は何かを考えているニナにそう言った。
なぜそう言ったのかはわからない。
ただ自然と、そう口に出していた。
ニナを見ると、少し泣きながら、驚いていた。
どうやら、抱え込んでいたらしい。
「さて、そろそろ…」
俺が出発の準備をしようとしたときだった。
「レオ。ちょっと来てくれない?」
そう言ってニナは俺の服を引っ張った。
「え?いいけど」
俺はそのまま、村の奥に連れて行かれた。
数分後。
俺は少し歩いた先にあった家の跡らしき場所に連れてこられた。
「ここは?」
「私の…家だった場所」
ニナの家?
周囲を見渡すと、焦げた人形や置物が落ちていて、草の間には皿のようなものも見える。
そうか…ここが…
俺は少し浸ってしまった。
そして、自然と涙が出てきた。
「え!?どうしたの!?」
「あ、いや…過去の生活があったことを想像したら、なんだか感慨深いなって」
ここにかつては家庭があった。
けどそれが突然壊れた。
こんな理不尽があっていいのか…
俺は少しの怒りと、悲しみを感じた。
そしてそれと同時に、ニナやみんなを守りたいと自然と思った。
「けどなんで俺をここに」
そう聞くと、ニナは少し恥ずかしそうな顔をした。
「なんでだろう?…家族に、レオを紹介したかったのかも」
…分からなくはない。
俺もニナの立場だったら、そういった気持ちになるのかもしれない。
そう思ったのだ。
「え?レオ?」
俺は3歩前に出て、その場に立った。
「私は『レオリオス・パルト』と申します。襲撃後、ニナさんと共に生活しています。と言っても、再開したのはついこの間なのですが…」
俺はただ喋り続けた。
まるで、ニナの親に挨拶するように。
「今は、ニナさんとお付き合いもしています。お恥ずかしいことに、それらしいことはできていないのですが」
そう言うと、ニナは顔を赤くした。
「これからもニナさんを…いや、家族のみんなを守っていきます。どうか、安心してください」
俺は話し終えて、元の位置に戻った。
………。
「…プッ!アハハハ」
俺が話し終えると、ニナが笑った。
「え?どうした?」
「だって…突然挨拶し始めるんだもん!」
ニナは笑いながらそう言った。
「…ハァ…ありがとう。きっと、お母さんとお父さんに届いたよ」
そう言って、ニナは微笑んだ。
「…戻るか」
「うん!」
こうして、俺達は馬車に戻った。
ウェルトを出発して1週間が経った。
俺達は界境まで戻ってきた。
戻ってきたのだが、そこでまたもや衝撃が走った。
「なんか…増えてる」
そこにはまだ火炎鳥がいた。
いたと言うか…増えていた。
草原は前より焦げていて、鳥の量が少し気持ち悪く見える。
「本当に何なんだろう?」
「姉さん。こういうのって以前もありました?」
「いや。ここらへんは聞いたことないよ」
不思議なものだ。
火山地帯にいる鳥が、どうして気候の全く違うここにいるのか。
「倒していく?」
ニナがそう聞いてきた。
「…いや…変に刺激するほうが怖いし、こいつらだったら放っておいても大丈夫だろう」
そう言って俺は再び馬車を進めた。
だが…流石におかしいな。
後で調査しようと、心に決めた。
その2週間後。
俺達は村に帰ってきた。
「お帰り〜」
家に入ると、カオルが迎えてくれた。
「ただいま。ごめんな、連れていけなくて」
「ううん。また次行くよ」
カオルも随分と大人になった。
このカオルの言葉からそう感じてしまった。
これは、妹離れしないといけないとかもな。
「そういえば、言ってなかったけどお土産ってある?」
…あ。
買うの…忘れた。
俺はこのあと、カオルに全力で土下座するのであった。




