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76話 ゴーストバスター・イン・イセカイ

旅を終えて5ヶ月が経つ。

夏もそろそろ終わる季節だ。

最近は何をしているのかと言うと…特に何もしていない。

時々来る依頼をこなして、暇があれば魔術研究をする日々だ。

そんな中、今日は依頼が来た。

俺はナナ師匠に呼ばれ、依頼の確認をしていた。


「…腐敗者ゾンビ骨者スケルトンの討伐?」


「えぇ。この時期はよく不死魔獣アンデットが出るらしいんですが、今年は多いらしく…って、レオ?」


不死魔獣。

この世界に存在する特殊な魔獣種だ。

魔獣や人族、魔族の死体にある肉体主の魔力に自然界に存在する魔力が混ざることで稀に生まれる。

これは夏と秋の間によく発生する。

そして一番の特徴は、復活することである。

不死魔獣は生命機能や本能ではなく魔力のみが体を動かしているため、魔力が肉体を蝕む限り、首を切ってもバラバラにしても元に戻る。

そんな魔獣の討伐と聞き、俺は固まった。

「どうしたんですか?急に顔が死にましたよ」


「あの…俺これ無理かも…」


「え!?」

俺の想定外の反応に、ナナ師匠は驚いた。

それもそのはずだ。

俺は過去に1回も依頼を断ったことはないのだ。

「どうしてですか!?」

「その…」

俺が言いかけると、ナナ師匠が何かに気づいた。



「…もしかして…除霊魔術できないんですか?」



…そう。

俺は基本魔術の中で唯一、除霊魔術ができないのだ。


除霊魔術。

世界に存在する9種の基本魔術の一つ。

別名「精神魔術」

相手の精神や魔力に干渉する魔術であり、人には主に洗脳解除や疲労回復で用いられる。

また、除霊魔術は魔術の中で唯一、不死魔獣に対抗できる。

この魔術は相手の魔力に干渉するため、不死魔獣の中にある魔力を浄化できるのである。

この能力があるから「除霊」という名前になったらしい。

俺はこれまで、前世の記憶を元にした想像力と魔術センスで魔術を使ってきたが、除霊魔術だけは理屈がわからず、イメージもできなかった。

結果、初級止まりで終わってしまった。

なんだったら、除霊魔術だったらカーラの方がうまくできる。

「詠唱もダメだったんですか?」

「やってみましたが…精度がいまいちでして…」

「これは…レオの数少ない弱点ですね…」

そう言って、ナナ師匠はどこからか手帳を取り出した。

「メモしないでくれませんか?」

「あ、すみません」

けどまあ、実を言うと戦えないわけではない。

約6ヶ月前の竜獣との戦闘で、洗脳されていた敵を魔力を流して無力化できた。

それを使えば一応対抗できる。

…はずだ。

「まぁ、いざとなったらサポートでも大丈夫なので、今回も一緒にお願いします。

「はい…分かりました…」

俺は暗い気持ちになりながら準備を始めた。






その日の夜。

俺達は不死魔獣討伐に向かった。

メンバーは俺、ナナ師匠、ニナで、場所はケーズバルト郊外にある草原だ。

移動は3日ほどかかる。

「それにしても、不死魔獣の討伐を依頼してきたのは意外でしたね」

ナナ師匠がそう呟いた。

今回の討伐依頼はケーズバルトの王宮からなのだが、実はケーズバルトからの依頼は今回が初めてなのだ。

ましてや、不死魔獣の討伐依頼は便利屋では初である。

「そんなに珍しいんですか?」

「えぇ。例年は各国の教会と騎士団がそれを済ませるので依頼は無いんですよ」

「教会ですか?」

「はい。除霊魔術と治癒魔術を専門とする機関です」

そんなのあったんだ。

知らんかった。

「よっぽどの規模なんでしょうか?」

「さぁ…俺にもそれは分かりません」

そんな話をしながら、俺達は目的地に向かった。






3日後。

俺達は目的地に着いた。

「…特に何もいないね」

ニナがそう言った。

夜なので見えにくいが、周囲を見渡しても特に気配はない。

「これ…本当にいるんでしょうか?」

その時だった。


…クンクン。


…臭い。


なんだコレ?

硫黄臭い?


「…腐敗者…ってことは…」


違う。

硫黄の匂いじゃない。

これは腐敗臭だ。

ということは。

『レオ…でました』

念話越しにナナ師匠の声が聞こえた。

そして…


ゾワッ!


俺は背筋が凍るような感覚とともに、何かの気配を感じた。

「ニナ!結界を!」

「内透結界!」


ドドドドドッ!


結界発動直後、結界の外側に何かが連続してぶつかる音がした。



「んんんんん!」



よく見ると、結界の外側に腐敗した生物らしきものが大量についていた。


「腐敗者です!」


ナナ師匠がそう言った。


腐敗者。

肉の残った死体の中にあった魔力と自然の魔力が混じって生まれた不死魔獣。

腐敗の影響でまともな声は出ず、「んんんん!」というような言葉にならない音を出し続けるらしい。

魔力に惹きつけられる特性があり、生物を発見すると襲いかかる。

触れたものの自身の魔力で分解する。

これが物の腐敗によく似ていることから、腐敗者の手は「腐敗手」と言われているらしい。


「んんんん!」


「んんーーーん!」


結界に張り付いた腐敗者は唸り声を上げて、俺達に向かってきている。

おそらく俺達の魔力に惹きつけられているのだろう。

結界に腐敗者の手が触れているが、魔力の特性上、腐敗者の魔力とニナの魔力が反発し、分解はされていないらしい。


「んんんんんん!!」


「んーーーーー」


しかし…想像してたゾンビとなんか違うな。

ゾンビって、「ヴァァァ」って言ってるイメージだったけど…なんだろう…

これはこれでキモいな…

ふと、俺が腐敗者達の隙間をみると、そこには骨のやつがいた。

「あれは…」

「あれは骨者ですね」


骨者。

骨のみの死体にあった魔力に自然の魔力が混ざって生まれた不死魔獣。

と言っても、こいつは特に無害だ。

だが、ふらりふらりとただ歩く。

それがいろいろな場面で邪魔なので、駆除される。

「レオ。どうする?」

ニナがそう聞いてきた。

いやどうするって…俺は初級の除霊魔術しか使えないのだが…

「ナナ師匠。こいつらを倒すうえでやってほしいこととかってありますか?」

「そうですね…除霊魔術発動までの足止めですかね。流石にこの量だとでっかいのやんないと討伐できないので」

足止めか…


「レオ…私…そろそろ辛くなってきた」


考えていると、ニナがそう言った。


「え!?いつももっともつじゃん!?」


「魔力が…ゴリゴリ削られてる…」


…あ。

もしかして…腐敗手に削られてる!?

「じゃ…じゃあ…えっと…」

俺は急いで考えた。

固定するには…何か無いか!?

………。

………。

…あ。


「影槍!」


俺は腐敗者の影から大量の影の槍を出した。

それは腐敗者の腹を貫き、固定した。

「よし!これなら…ナナ師匠!」

「はい。 ー・・ー〜ー」

ナナ師匠は俺の言葉を聞いた後、詠唱を始めた。

よし。

これで一件落着…



ゴリゴリゴリ!



…ん?

なんか今…嫌な音がしたような…

俺は腐敗者の方を見た。

するとなんということでしょう。

影の槍が腐敗手によってみるみるしぼんでいっているではありませんか。

「なんで!?反発するはずじゃ…」

なぜだ?

なんで槍が分解されて…

…あ。

俺はそう考えていたとき、あることを思い出した。

それは学校の時のことだ。


ー影には常時魔力が宿っていて、我々は一つの影を通して、周辺すべての影とつながっているのです!ー


…ってことはつまり…


「影は自然の魔力ってことか!?」


ドコッ!


鈍い音とともに、槍は砕かれ、俺に向かって大量の腐敗者が向かってきた。


「んんんんん!」

「んんーーー!!」

「んっんんんん!!」


「ぎぇぇぇぇぇ!!」



来光除霊シャインエクソシズム!!」



ドサドサドサ!


俺が襲われかけた瞬間、ナナ師匠の除霊魔術によって、辺りの不死魔獣が全員死んだ。

これにより、俺はなんとか助かった。

「…大丈夫?レオ?」

が、俺はあまりの恐怖で放心してしまった。

「これは…本当にレオの弱点かもしれませんね…除霊」

こうして、俺達は仕事を終え、村に帰るのであった。

そうして俺は誓った。

もう少し除霊魔術を覚えようと。

そして…

もう二度と…腐敗者の討伐はやらない。

『後でカオルにきかせてあげましょう』

念話でナナ師匠がそう呟いた。

『やめてくださいね。ナナ師匠』

『…はい』

俺はナナ師匠にそう言った。

少し圧をかけるように。

だがこの情報は数日後、ナナ師匠の日記を盗み見したカオルにバレてしまうのだった。

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