74話 剣術指南のお手伝い
手紙が来てから一夜明け、俺は身支度をしていた。
結論から言うと、俺は依頼を受けることにした。
馬車を使うとすると、到着まではだいたい3週間くらいだ。
期間を開けすぎるのも悪いので、俺は明日には出発することにした。
俺はだいたいの到着の日と受諾の有無を記した手紙を送った後、荷物を馬車に入れ始めた。
「レオ!」
そんな中、ニナが声をかけてきた。
「今回は1人でいくの?」
「え?」
…そういえば考えてなかったな。
今回は依頼で行くわけだから、てっきり1人でいくもんだと思った。
「もしかして、ニナも行きたい?」
「うん。ファジサイトには1度行きたかったんだ」
そう言うと、ニナは遠くを見つめた。
…あ。
ファジサイトってそういえば、ニナの故郷があった国か。
確かに行きたい気持ちはわかる。
「分かった。じゃあ今回はファジサイトに行ったことないメンバーといっしょに行くか」
そう提案すると、ニナは笑って「うん!」と言った。
俺は早速、家にいたルカ、カーラ、バオスにファジサイトにいくことを伝えに行った。
翌日。
俺達は早朝に出発した。
メンバーは俺、ニナ、ルカ、カーラだ。
バオスは仕事があるということで断られた。
カオルは行きたがっていたが、今日からナナ師匠が便利屋を再開するということで、2人は今回はパスした。
ドーラ師匠は、「俺はいい」と言って遠慮された。
「レオさん。ファジサイトまではどれくらいかかるのですか?」
「だいたい3週間くらいかな」
「ファジサイトってそんなに遠くないのね」
「姉さん。それは馬車があるからです。それに、マントシティと比べたら近いに決まってますよ」
そんな会話をしながら、俺達は移動を進めた。
馬車で2週間ほど移動した頃。
俺達はウェストンを通過し、いよいよ魔族世界の界境という所まで来ていた。
しかし、今回の移動は前回の旅と少し違った。
「ん?何だこりゃ?」
辺りの草原には点々と焦げたあとがあった。
前回の旅ではこんなことはなかった。
どうしたのだろうか。
「レオさん。向こうから何かが」
考え込んでいると、ルカがそう言った。
「向こう?」
俺はルカの指し示した方向を見た。
その方向には何かの集団らしきものがいた。
いや、正確には飛んでいた。
「あれって…」
俺は持っていた望遠鏡を覗き込んだ。
「え?『火炎鳥』?」
火炎鳥
体に火を纏った鳥。
集団で行動し、地上にいる魔獣を狩る。
人にはあまり攻撃しないが、繁殖期になると襲ってくる。
危険度は単体でC、集団でBだ。
俺は不思議に思った。
火炎鳥は本来、マントシティの火山地帯に生息している。
しかし、何故かここにいる。
はぐれ種なのは間違いないが、にしても距離が離れすぎている。
はぐれ種は本来、生息地域から少し離れた隣国程度までしか来ない。
それが、生息地域のほぼ反対まで来ている。
明らかになにかおかしい。
しかし、火炎鳥はこの季節は敵対はしてこない。
春が一番危険ではあるが、火炎鳥は寒い場所が苦手だから、きっと冬には帰るだろう。
ひとまず今は無視して進むことにした。
出発してもうすぐ3週間。
俺達はファジサイトを囲む山脈の頂上まで来ていた。
あと2日ほどで到着するが、その前に寄り道をしていた。
「お久しぶりです。ムエルさん」
「レオリオスさん。お久しぶりです」
俺達は鬼族の村に来ていた。
この村はかつて、俺が旅の道中でお世話になった村だ。
村長のムエルさんの許可を得て、今日はここに泊まることにした。
「そういえば。模倣眼について聞きたいのですが」
「え?手紙の内容以外にもなにかあったんですか?」
俺がこういったのには少し理由がある。
俺は旅の間、時々ムエルさんと手紙で交流していた。
内容としては、ほぼ全てが「模倣眼について」だった。
最近では、手紙がほぼなかったので、もうないものだと思っていたので、驚いてしまったというわけだ。
「実は、村に模倣眼を持った子が生まれたのですが、どうすればいいか分からなくて」
なるほど。
アドバイスをくれというわけか。
俺は生活の仕方や注意点を軽く伝え、その後は軽い会話で交流した。
そして翌日。
俺達は再び出発した。
数日後
俺達はファジサイトに到着した。
到着の後、まっすぐ国王のもとへ向かった。
「よく来たな。レオリオス」
「ご無沙汰しております、国王。お変わりなくお過ごしなようで何よりです」
「よせ。肩の力は抜くといい」
「は、はい。分かりました」
国王、ファストさんはゲラゲラと笑いながらそう言った。
相変わらず愉快そうな笑い方だ。
「そして…リューの方は…?」
ドドドドドッ…
そう言いかけると、何処かから足音が聞こえた。
「来たようだな」
ファストさんがそう言うと、横の扉が勢いよく開いた。
「来たか!影纏!」
………。
「相変わらず元気だな…」
「お前が来るって聞いて、元気にならないやつがいるか?」
いや、喜んでくれるのはありがたいが、そこまで元気になるのは多分お前だけだぞ。
「合流したな、では我はここで失礼する」
そう言って、ファストさんは立ち上がった。
「してレオリオスよ。暇があれば我のもとに来てくれ。あの『j-pop』とやらが解読できたのだ。それについて色々聞かせてくれ」
そう言った後、ファストさんは去っていった。
俺は旅の間、ファストさんからも何度か手紙をもらっていて、最後に送ったのが「楽譜起こしが終わったので、この曲を解読してみてください」というものだった。
その手紙には添付して、俺の前世の曲の楽譜を送ったのだが、どうやら解読し終わったらしい。
…後で行ってみよう。
「お前…国王とそんなに親しかったのか…?」
そんな会話を見ていたリューは、少し驚いていた。
謁見の後、俺はルカ、カーラ、ニナに「ここからは自由行動で」と伝え、リューが剣術指南に使っている広場に向かった。
自由行動にしたものの、カーラは俺についてきた。
「姉さん。ついてくるんですか?」
「レオの剣術指南、見てみたくてね」
と言っても俺…補助なんだが。
広場についたとき、俺は驚いた。
そこには想像の3倍以上の人数がいた。
「こりゃ…スゲーな。何人いるんだ?」
「ざっと80人」
こりゃリューだけでは手数不足だわ。
「…ふぅーー…俺も教えるか…」
「すまん。頼む」
俺は木刀を持って、リューと一緒に全員の前に立つのであった。
剣術指南を初めて数時間後。
参加者は全員1日の練習を終えたようで、疲れ切っていた。
リューの教え方は前よりもかなり上達していた。
俺はあまりの変わりように驚いてしまうほどだった。
「んで?なんでお前は真剣構えだしたんだ?」
修行は終わったのだが、まだリューは満足していないらしい。
「影纏。お前も剣術王級になったんだろ?」
「それ…どこから聞いたんだ?」
「ルカから」
ルカ…なんでこいつに言っちゃったんだ。
「やろうぜ。剣術だけで」
「絶対俺が負ける未来しか見えないんだが?」
その後、俺はリューと剣術組み手を1時間することになった。
…疲れた。
修業を終えた俺は宿に行った。
これを1週間か…
頑張らないとな…
ちなみに、本日のみんなの動きを聞いた所、ルカは街の商店街に行き食事の研究、ニナは故郷の情報収集に行ったらしい。
ルカは楽しんでいるらしいが、ニナが少し気がかりだ。
全滅した故郷について、情報を得られるのか。
得られたとして、それはニナにとって辛いものになるのではないかと。
俺はそんな心配をしながら、1日を終えるのであった。




