73話 剣術だけで
旅を終えてから3ヶ月が経った。
今日はとても暑い。
雨季が明けたことによって、この世界は夏を迎えた。
けどまあ、苦しいほどの暑さではない。
温暖化した日本に比べたら涼しい。
そんな中、俺はとあることをしていた。
「天地突き!」
ドーーーン!
修行場には轟音が響いていた。
まるで何かが落ちてきたような。
…まあ、実際に落ちているのだが。
「痛っ……」
「大丈夫か?」
ドーラ師匠が話しかけてきた。
「はい…けどまあ、もうすぐって感じです」
現在、俺は剣術奥義全習得を目指して修行している。
今習得していないのは、「天地突き」「蛇長斬」「無刀」の3つだ。
それの完成を目標にしているのだが…
天地突きだけがうまくできない。
感覚はつかんできたが、どうもしっくりこない。
「ドーラ師匠。天地突きのコツってなんかないんですかね?」
「…お前、最近どんな修行法をしている?」
ん?質問で返された。
なんで?
「え?文献調べたり、感覚で練習して技を覚えてます」
そう聞くと、ドーラ師匠は「やはりか」というような顔をした。
「お前、模倣眼を使ってないのか?」
………。
………。
…あ。
そういえばそんなのあったわ。
旅の間、お手本がなかったから忘れてた。
俺はドーラ師匠に実演してもらい、それを模倣した。
これにより、俺の剣術修行はあっさり終わった。
その日の夜。
俺はドーラ師匠とナナ師匠に連れられて村で唯一の酒場に来ていた。
「ドーラ師匠、ナナ師匠…これは?」
「昔、レオがここに行きたいと言っていたので」
「修行終わりの節目でもあるからな。それに、お前ももう17歳だろ?1度はきたほうが経験になるだろう」
いや…俺が行きたがっていたのは、音で眠れなかったからで、決して酒が飲みたいわけでは…
それに「お酒は20歳から」とも言う…
「遠慮せず飲め」
「…分かりました」
とはいえ、飲みたくないわけでもなければ、師匠のすすめを断るほどの度胸もない。
…飲むか。
…いくぞ。
人生初の飲酒…
「はいよ、一杯」
俺は店主に出された酒を一口飲んだ。
それもかなり慎重に、かなりゆっくりと。
………。
…ゴクッ。
「…ん!?美味しい」
それは初めての味だった。
甘くてとても味わい深いものだった。
「なるほど…レオは甘いと感じるんですね」
念話で俺の感想を聞いていたナナ師匠がニヤけながらそういった。
「レオは?ナナ師匠は違うんですか?」
「私というより、お酒は飲む人で味の感じ方が違うんですよ。それによって人柄や性格がわかるとかって言われてます」
「なるほど…」
この世界の酒にはそんな特性があるのか。
…ん?
今「性格」って言った?
「ちなみに『甘い』と感じる人の性格って?」
そう聞くと、ナナ師匠は答えた。
「情熱的で仲間思い。けど少し鈍感。そして…」
そう言うと、ナナ師匠はニコッと笑った。
「ほとんど人が一途な恋をする傾向にある」
…なるほど。
この人がこんなに楽しそうな理由がわかった。
要は恋の気配がしたからか。
相変わらず好きだな、この人。
…あれ?
なんか…頭がボーッと…
ドサッ!!
「え!?レオ!?」
「これは…潰れたか」
俺はそのまま寝てしまった。
どうやら俺は、かなり酒に弱かったらしい。
その後何があったかは覚えていないが、目が覚めると、俺はベットの上にいた。
酒場の次の日。
俺はいつもの修行場にドーラ師匠と来ていた。
いつもの木の下にはカオル、ナナ師匠、ニナ、バオスがいる。
「では、テストを始めよう」
今日は俺の剣術のテストだ。
内容としては、「界外剣」を発動しているドーラ師匠に向かって「天地突き」「蛇長斬」「無刀」を放つ。
それを弾いたドーラ師匠に完成の有無を測ってもらうというものだ。
「ではまず、天地突きから始めろ」
「はい」
俺は剣を抜き、構えた。
そして俺は足に力を込めて飛び上がった。
空中にて、俺は剣先をドーラ師匠に向ける。
そして、
「ハッ!!」
カーーン!
俺の剣先はドーラ師匠の剣と衝突した。
そしてドーラ師匠は剣から火花をたてながら攻撃を弾いた。
俺は着地し、ドーラ師匠の言葉を待った。
「合格だ。天地突きは完成でいいだろう」
「はい。ありがとうございます」
これで一つはクリアである。
ふと木の方向を見ると、何やら女性陣が話に花を咲かせている。
…気になるが…気にしないでおこう。
その後、俺は「蛇長斬」と「無刀」も同様にテストした。
事が起きたのは「無刀」のテストである。
「蛇長斬」は普通にクリアしたのだが、この技で問題が起きた。
キンッ!
俺が抜刀すると、ドーラ師匠の剣が飛んでいった。
「お兄ちゃんすごい!」
「レオ、この技だけ完成度高いね!」
「流石ですね」
カオルとニナ、ナナ師匠は絶賛した。
しかし、俺とドーラ師匠、バオスの意見は真逆だった。
(((何かがおかしい)))
3人が同時にそう思った。
そしてその違和感は、すぐに分かった。
「レオリオス。お前、手首をどう動かしている?」
ドーラ師匠がそう尋ねてきた。
「どうっといいますと?」
「お前、手首で剣を振ってないか?」
そこで俺とバオスはハッとした。
ここで判明したのだが、俺はどうやら抜刀時に手首を使う癖があるらしい。
それもかなり大きく使っているらしい。
これによって、通常の「無刀」よりも瞬間速度が上がった代わりに、発生までの時間が遅くなっていた。
これが3人の違和感の正体である。
タイミングのズレと速度によって、界外剣が反応しなかったのだ。
「これは長所でもあり短所でもある。技としては完成しているから何も言わんが、注意して使え」
「はい」
こうして、俺のテストは終わった。
「レオってさ、魔術もあるのにどうして剣術も練習してるの?」
夕食の後、部屋に来ていたニナはそう聞いてきた。
「たしかになんでだろう?あんまり考えたことなかったな」
というのも、俺は小さいときに剣術と魔術を同時に習ったため、それが習慣化していただけだったのだ。
深い意味としては、特に考えたことがなかった。
「けどまあ、これがあったからニナとかも守れたし、無意味ってわけじゃないかな」
「え!?あぁ…そうだね」
そう言うと、ニナは顔を赤くした。
「どうした?なんか具合でも悪いか?」
「え!?いや、なんでもないよ!」
ニナは笑いながらそう言った。
しかし、最近になって、自分の長所と短所がなんとなく分かってきた気がする。
後はどう補って、どう活かすかだな。
コンコンコンッ
そんな事を話していると、扉がノックされた。
「レオリオス。手紙だ」
扉の奥にはドーラ師匠がいた。
「手紙ですか?」
俺はドーラ師匠から手紙を受け取り、読み始めた。
〜レオリオスへ〜
最近の活躍はよく耳にしている。
学校での一件や、その他での活動。
「影纏」の名付け親として、少しばかり嬉しく思う。
そんな主に依頼がある。
先日、帰ってきたリューから「影纏が剣術指南の資格を持ってる」と耳にした。
現在、ファジサイトで活動しているリューのもとには弟子入り志願者が絶えないのだそうだ。
そこで、主にその剣術指南の補助をしてほしい。
期限は1週間くらいが望ましい。
依頼受諾の有無や到着日、期間などに関しては返事をくれ。
快い返事を楽しみにしている。
〜ファスト・ドーズより〜
手紙はファジサイトの国王「ファスト・ドーズ」からであった。
剣術指南の手伝いを頼みたいらしい。
さて…どうするか。
俺は少し考え、返事の手紙を書くのであった。




