68話 4年の成長
村についてから1日経過した。
その日はとても気持ちのいい朝だった。
俺は明け方に目覚め、服を着替えた。
そして木刀を手に取り、村の方へランニングに行った。
朝のトレーニングだ。
実を言うと、旅を始めてから、毎朝トレーニングをしていた。
ランニングから始まり、ストレッチ、素振り、剣術練習。
これを毎日繰り返していたのだ。
そして村を走りながら、俺は昔を思い出していた。
辺りにはまだ青々とした麦が広がっていて、点々と家がある。
懐かしい景色だ。
俺はそう思いながら走る。
家に戻ると、外にはドーラ師匠がいた。
「朝のトレーニングか?」
「はい。朝のルーティンでして」
「ルーティン?」
あ、しまった。
つい前世の単語が出てしまった。
「まあ良い。それよりだ」
「ん?どうしました?」
そう聞くと、ドーラ師匠は答えた。
「今日、俺と組み手をしないか?」
「え?組み手ですか?」
突然の申し出に、俺は混乱した。
「今のお前の実力を見ておきたい」
…当然か。
弟子の成長を見たいという気持ちは、俺も分かる。
「分かりました。では、お昼時はいかがでしょう?」
「うむ。そうしよう」
そして俺は、再びトレーニングを始めた。
お昼時。
俺達は家の近くにある草原に来ていた。
俺が子供のときに修行をしていた場所だ。
奥まで行くと崖があり、その向こうに海がみえる。
「さて、では始めるか」
俺はそれを聞き、剣を構える。
ふと、崖の方にある1本の木を見る。
そこには家族が勢揃いしていた。
その木を見ると思い出す。
カオルはまだ赤子だったのに、ゆりかごの中から「水球」を飛ばしてきた日のことだ。
あの時、まさかカオルが模倣眼持ちだとは思ってもいなかった。
そんなことを思い出しながら、俺はドーラ師匠を見た。
彼は木刀を持ち、こちらに剣先を向けて構える。
雰囲気からして…結構ガチだ。
「魔術は使用して良い。全力で来い」
「はい!」
「…では行きます」
俺達の会話の後、ナナ師匠が前に出てきて、間に入った。
「それでは…」
………。
辺りは静寂に包まれ、風の音のみが聞こえる。
………。
………。
「はじめ!」
「「断地!」」
ナナ師匠の開始の合図と同時に、俺とドーラ師匠の剣力が衝突した。
「閃光移動!」
その直後、俺はドーラ師匠に急接近した。
「周花!」
「界外剣!」
俺の移動を見て、ドーラ師匠は周花を放ち、俺はそれを界外剣で受けた。
カウンターをするつもりだったが、ドーラ師匠はそれをさせてくれなかった。
「界外剣を覚えていたのか!修行は続けているよだな!」
「当然…です!」
俺はドーラ師匠を遠くに飛ばした。
そして、一瞬で杖を出し、魔術を使った。
「影の槍!」
「…!?」
俺が魔術を発動した瞬間、ドーラ師匠の足元から槍が出てきた。
ドーラ師匠はそれに対し、界外剣を発動して防いだ。
さすがドーラ師匠だ。
判断が桁違いに速い。
そう考えていると、
「思考で動きが鈍ってる。油断しすぎだ」
いつの間にか、ドーラ師匠の木刀が俺に迫っていた。
「月光斬」
パリン!
ドーラ師匠の攻撃は、俺が事前に張っていた結界に相殺された。
「…なるほど」
「油断はしてないですよ!」
俺は宙に浮いたドーラ師匠に向かって、追い打ちをかけようとした。
「光襲の…!?」
その時だった。
ドーラ師匠は見たことのない構えをしていた。
空中で腰を捻り、居合にも見える構えをしていた。
なんだ?
何が来る?
「蛇線・飛剣乱舞!」
俺が構えも取る暇もなく、それは飛んできた。
ビビッ!
ドーラ師匠が剣を振るのと同時に、俺の体に傷がついた。
そしてドーラ師匠は、その動作を繰り返した。
「影球体!」
俺は危険を察知して、影で自分を守った。
パリン!
が、その抵抗も虚しく、影はすぐに割られた。
「…ッ!界外剣!」
俺はカウンターを選んだ。
そして、飛んでくる斬撃を防ぎ続けた。
…何だこりゃ。
カウンターをして分かった。
この斬撃…気持ち悪いくらいウネウネと曲がってる。
こんな技…俺は知らない。
…まさか。
「自作技!?」
「正解だ!」
俺が気づいたときにはもう遅かった。
俺はその攻撃に押され、ふっとばされた。
「…どうしようか」
俺は考えた。
ドーラ師匠の攻略法を。
遠距離にいると斬撃が飛んできて、近くに行くときりがない。
………。
………。
「…やってみるか」
俺は一つの策を思いつき、再び立ち上がった。
そして、剣を右手から左手に移した。
「…!?」
ドーラ師匠は驚き、構え直した。
「…ッ!」
俺は再び閃光移動で移動し、剣を振り上げた。
キンッ!
ドーラ師匠はそれを見て、左手の剣を弾いた。
そして俺はそれを確認した後、右手に影の剣を作った。
「…!?」
「断地!!」
俺は右手の剣に力を込めて、ドーラ師匠にぶつけた。
ドーラ師匠はその剣力を受け止め、そのままふっとばされた。
「…どうだ?」
土煙が立ち込める中、俺はドーラ師匠を探した。
すると、煙の向こうに人影が見えた。
そこには、剣で剣力を受け止め、立ち続けていたドーラ師匠がいた。
「…マジか」
「………」
俺達は見合った。
「そこまで!」
俺とドーラ師匠が再び仕掛けようとした時、ナナ師匠の声が響いた。
「…うむ」
「…ハァ〜…」
俺は息を吐いて脱力した。
すごく緊張した。
そして疲れた。
「俺の負けですね」
「いや、そうでもなかったぞ。俺も危なかった」
「ドーラ師匠の自作技、初めて見ました。あれってどういう原理なんですか?」
「蛇長斬と断地を基盤にして作った技だ。原理はそう難しくない」
「それを難しくないと言い切れるのはすごいと思うのですが…」
とまあ、こんな感じに反省会をしながら組み手は終了した。
翌朝。
俺はまた朝のトレーニングをしようとしたところ、
「レオリオス」
「え?」
後ろからドーラ師匠に話しかけられた。
「早起きですね…どうしたんですか?」
「俺もトレーニングをしようと思ってな」
「え!?」
と、この日からドーラ師匠も一緒にトレーニングをすることになった。
理由はよく…わからないが…
まあ、いっか。
「さて…お前のトレーニングでは何をやるのか教えてくれないか?」
...おそらくプレッシャーをかけているわけではない。
多分純粋に聞いてるだけなのだろう。
ただまあ…
これからは…ちょっときついトレーニングになりそうだ。




