67話 新たな生活
旅を続けて4年。
俺は今日、遂に帰還した。
4年間の旅で、家族を全員見つけることができた。
さらに、新しい家族もできた。
多くの仲間もできた。
その旅も、今日終わったのだ。
名残惜しさはあれど、俺の心は幸福感と安堵に満ちていた。
「すまん、お前が帰ってくる前に部屋を掃除するつもりだったのだが…」
「大丈夫だよ。片腕なんだし、ゆっくりしてて」
俺は早速、自室に向かった。
扉を開けると、そこには懐かしい風景があった。
「…帰ってきたんだな」
自分の部屋を見て、俺はそう思った。
中はとてもきれいな状態だった。
きっと、カーラが掃除してくれたのだろう。
ベットや置物、本の位置まで当時のままになっていた。
俺はその部屋に荷物を置き、居間に戻った。
「レオリオス」
居間に行くと、人が増えていた。
高身長で、灰色の髪。
腰には剣を携え、頬には薄っすらと鱗が見える男。
「お久しぶりです。ドーラ師匠!」
「随分と…たくましくなったな」
ドーラ師匠はそう言って俺の頭を撫でた。
とても優しい顔だった。
…懐かしい。
「後始末が終わってからでいい。お前の旅を教えてくれ」
「はい!」
そう言うと、ドーラ師匠は2階に登っていった。
「…ん?」
俺はふと、ナナ師匠の方を見た。
ナナ師匠は…なんだかぼーっとしている。
「………」
多分、久しぶりに会ったからだな。
『ナナ師匠?ドーラ師匠に見惚れないでください』
「ふぁ!?」
俺が念話で語りかけると、ナナ師匠はまるで寝起きの人のような反応をした。
『あ、すみません…ボーっとしてました』
俺はナナ師匠が戻ってきたのを確認して、馬車をしまいに行った。
片付けを済ました後、俺達は客間に行った。
そこにあった席に全員を座らせて、ドーラ師匠を待った。
「…てか父さん?」
「なんだ?」
「この家って…客間あったんだっけ?」
「お前が旅に出てから作った」
あ…そうなんだ。
「待たせたな」
すると、扉からドーラ師匠が入ってきた。
そして、俺の対面にあった席に座った。
「それでは聞かせてくれ。レオの4年間の旅を」
「はい。ではまず…」
ここから、ドーラ師匠への報告が始まった。
室内にはカーラやバオス、その他俺が一緒に旅をしたメンバー全員がいたので、事細かに詳しく説明した。
「そうか…あの技は神級だったか」
まず最初に「ファジサイト」でのことを語った。
ドーラ師匠は「影の領域」の採点に驚いていた。
それもそうだろう。
この技はドーラ師匠との修行で生まれた技だ。
間近で誕生を見ていた身としては、かなりの驚きだろう。
「神級魔術師になったとは聞いていたが…その技が神級だったのだな」
「はい。そして、任命式の後に、ナナ師匠とカオルに会いました」
「…ですがレオ?どうして場所がわかったんですか?」
「念話越しに…鼻歌が聞こえまして」
「え!?」
そういえば、どうして見つけられたかを言ってなかったな。
すみません。
そんな感じで、俺はファジサイトでの事を話し続けた。
便利屋でのこと、リューとの出会い、その後の研究。
そんな感じで、話を進めていった。
「ファジサイト」の内容が終わり、次に「ジークハルト」でのことを語ろうとした。
が、俺はその前に伝えるべきことがあった。
「ドーラ師匠、父さん、姉さん。俺はみんなに言わないといけないことがあります」
「なんだレオ?言ってみろ」
「実は俺は…転生者です」
「「え!?」」
「…なるほど」
それを聞いた瞬間、バオスとカーラは驚き、ドーラ師匠は何か腑に落ちたような反応をした。
「今まで、正体を明かしていいのかが分からず、黙っていました。しかし、俺は『ジークバルト』でのことを語る前に、これは伝えるべきだと判断しました。黙ってて、ごめんなさい」
俺は深く頭を下げた。
それに対し、バオスが口を開いた。
「ずっと…怖かったんだな」
「…え?」
俺は驚いた。
ずっと俺は、叱られるものだと思っていたのだ。
黙っていたことに…
けれど、反応はその逆だった。
「お前はお前だ。記憶があろうとなかろうと、今までに偽りはない。そうだろ?」
…やっぱスゲーや、この人…
俺は心の中でそう思った。
その言葉を聞いて、俺は少し泣いていた。
「…すみません。取り乱しました」
「構わん。続けてくれ」
そして俺は話し始めた。
前世の友人にあったこと、修行のこと、舞踏会でのことを。
最後に「ドラマルト」と帰還時のことを語った。
講義のこと、サークルのこと、依頼のこと、発表会のこと、文化祭のこと、ニナとの再会のこと、竜獣のこと。
「…これが、俺の4年間での出来事です」
「そうか。随分と多くの経験をしたんだな」
「はい。ですがどれも、俺はいい思い出だと思ってます」
こうして、俺の報告は終わった。
「して…竜獣の件は、現地に任せたのだな?」
「はい。そのようにしました」
「わかった。ではまた近い内に、『竜族世界』に寄ってくるとしよう」
その後は、他のみんなの報告を聞いた。
みんなそれぞれ様々な経験をしていたようだ。
ドーラ師匠もバオスも真剣に聞いていた。
カーラはというと…途中から泣いてしまい、それどころではなかった。
けどまあ、とりあえずこれで全員集結だ。
俺は改めて安堵し、部屋に戻った。
その後も女性陣が残って何やら話していたようだが、それについてはよくわからない。
考えないでおこう。
「そういえば、部屋割どうする?」
「え?」
俺の部屋に来たバオスが聞いてきた。
…そういえば考えてなかった。
家にある部屋は計6部屋。
内1つは倉庫、その他は各々の部屋になっている。
ニナが来たときは、その時いなかったドーラ師匠の部屋を使ってもらってたが、今はそうもいかない。
ニナとルカの部屋をどうしようか…
「ナナ師匠の部屋って3人くらい入れましたっけ?」
「いや〜2人だったらまだしも…3人か…」
厳しそうだ。
かと言って、男の部屋に入れるわけにはいかない。
「…倉庫ってどれくらいの広さでしたっけ?」
「…家では2番目くらいに広いはずだ」
「なら、そこを3人部屋にするのはどうでしょう?」
「…それしかないな」
というわけで、この問題はすぐ解決し、ナナ師匠、ニナ、ルカを3人部屋にした。
そして、カオルは「お父さんとでいいよ」ということで、バオスの部屋に入った。
荷物の移動を済ませた頃には、もう夜だった。
俺達は夕食を一緒にとり、思い出話に花を咲かせた。
そして俺は部屋に戻った。
ベットからの眺めはとても懐かしかった。
隣の3人部屋から笑い声がかすかに聞こえてくる。
仲良くやっているようで何よりだ。
…まあ、ドラマルトでも同部屋だったし、当然か。
その笑い声を聞きながら、俺は眠りについた。
その日の眠りは、今までで一番よく寝付けた。




