124話 ジャパニーズプロジェクト
ゾーランでの物資調達中、俺は明らかに日本の転生者が作ったであろうものを見つけた。
そして、俺はそれに興味が湧き、ちょっとした聞き込みを開始した。
「すみません。この服とかについてなにか知りませんか?」
俺は会う人全員に片っ端から聞いていった。
すると、情報はすぐに手に入った。
「あぁ〜。アレちゃんの作ったやつだね。変わった模様が人気で、よく使ってる人を見るよ」
その情報について詳しく聞いた所、この作品を作っているのは「アレックス・ジョー」という犬系の女性獣族で、いつも家で作業をしているらしい。
俺はその情報を下に、試しにその人の家を訪ねてみることにした。
「…日本の家に似てる」
アレックスの家の前に着くと、俺は家の外観を見た。
その家にはこの世界にはないような物が色々ついていて、風除室なんかもついている。
日本の雪国にあるような作りだ。
実際、東北に住んでた俺の家にもこんなのあったな。
「ごめんくださーい!」
俺は扉をノックすると、そう言って待った。
「…はーい」
すると、奥から女性の声が聞こえてきた。
そして、ドタドタと何やら階段から降りてくるような音が聞こえてくる。
ガチャ!
そう思っていると、扉が開き、中から犬の耳を生やした女性が出てきた。
「すみません。何か御用でしょうか?」
女性はそう言いながら、俺のことを見た。
特徴からするに、おそらく彼女が「アレックス・ジョー」のようだ。
「えっと…アレックスさんであってますか?」
「あ、はい。アレックスです」
「先程、市場であなたの商品を買ったのですが、結構気に入りまして、訪ねてみま…」
「気に入ってくださったんですか!!」
俺が言葉を出しかけると、アレックスは食い気味に入ってきた。
「そうですよね!あなたは見る目があります!ちなみに何を?」
「えっと…これを…」
俺がさっき買ったマグカップを見せると、アレックスはさらに興奮し始めた。
「このマグカップ!!いいですよね〜!特にこのシーン!このシーンは主人公がヒロインの子の中にあった敵の寄生物を排除するってところで、その前の推理といい、ヒロインの回想といい、その後の敵の弱体化の現れといい、めっちゃいい場面なんですよーー!!あと…」
アレックスは早口でどんどんとデザインについて語っていく。
ちなみに、俺が買ったマグカップについていたのは、リゼ◯のとあるシーンである。
なんか、他のものについていたデザイン的になんとなく分かってたけど…
この人…
限界オタクに近い御方だ。
うん。
絶対そうだ。
俺の第六感がそう言っている。
「あの…」
「あ、はい!なんですか?」
話し続けるアレックスに対し、俺が喋りかけると、それに気づいたアレックスはようやく話すのをやめた。
「他のやつもあるのか、少し見せてもらえませんか?」
「はい!ぜひ」
こうして、俺はアレックスの家に招き入れられた。
中に入ると、そこには大量の絵が飾ってあった。
いや、正確にはイラストやファンアートに近いものだった。
そして、早速と言わんばかりに自室に案内された。
「こりゃすげーや」
自室はもっとやばくて、壁が某漫画や某小説、某ゲームのイラストで埋め尽くされていた。
なんかもう…年中漫画漬けの漫画家の部屋みたい…
アシスタントもなしとは…
いや、趣味だからいないのは当然か。
漫画家じゃないんだもんな。
「どうですか、この部屋!」
アレックスはそう尋ねてきた。
そして、それを聞いた瞬間に、俺はとあることを思いつき、それを仕掛けてみることにした。
「すごいですね…『ジャ◯プ』や『なろう』が多いんですね」
「そうなんですよ!私、そういうのめっちゃすっ…」
俺の発言を聞いたアレックスは、話している最中に固まった。
どうやら気づいたようだ。
「ジャ◯プ」や「なろう」なんて単語、前世の世界を知る人間しか知るはずがない。
つまり、これは俺が「転生者である」という情報の開示に等しいのだ。
「え?え!?なんでそんな事知ってるんですか!?え!?なんで!?」
アレックスは混乱し、俺に対しそんな言葉を連呼した。
「あ、申し遅れました。自分は『レオリオス・パルト』。神級の魔術師です。そして、前世では『佐々木 守』という名前の高校生でした」
「ぐぇぇぇぇ!!?」
俺の発言に対し、アレックスは驚いた。
反応からして、自分以外の転生者を見るのは初めてのようだ。
…無理もないか。
ここはいわゆる鎖国国家。
他の国に転生者が居ても気付けるわけがない。
「まさか…他にも転生者がいるなんて…」
そう言って、アレックスは泣き崩れた。
「反応的に、自分以外の転生者を見るのは初めてか?」
「…グスッ!…あい…」
俺の問いに対し、アレックスは泣きながら答えた。
俺はその状況を見たあと、とあることを思いついた。
「お前…そういえばなんでアニメやゲームのデザインの家具とか、日本特有の物とか、特徴的な服なんて売ってたんだ?」
そう聞くと、アレックスはゆっくりと答えた。
「日本にはこんなにすごい物や、かっこいいやつが…いっぱいあるって…知ってほしくて…あと、もっと日本みたいなのが…あればなって思って…」
それを聞いた瞬間、俺はこう思った。
…素質あるな…こいつ。
そして、俺は話し始める。
「実はな、俺は海向こうの大陸から来たんだが…」
「海の向こうって、他の種族たちが逃げたっていう…人族の大陸?」
そう伝わってるんだ。
まぁ…あってはいるか。
「そう。そこでも、俺らと同じく転生した奴らが居てな…」
俺が話したのは、「ジャイフ」のことである。
色々あって最近は何をしてるか把握していないが、話を聞く限り、こいつはジャイフのやっていることと活動内容が近い。
なら、やるべきことは1つ。
「お前も、あいつらと一緒に活動してみないか?」
「…え?」
いわゆる、スカウトである。
今まで日本食のみの拡大に専念してきたジャイフだが、アレックスが加われば、活動がより一層活発になるだろう。
なら、スカウトしない手はない。
大陸は違うが、メモを伝達鳥で渡し合うくらいはできるはずだ。
双方が損のない案である。
「私が…いいんですか?」
「もちろん。あっちのリーダーは俺の知り合いだし、話しつけとくよ」
それを聞くと、アレックスは俺に向き直り、その場に正座した。
「ならば…お願いします」
こうして、ジャイフに仮決定ではあるが、新しいメンバーの加入が決定した。
ジャイフ史上初の、異大陸の住人である。
その夜、俺はジン宛に手紙を書き、今日の出来事を伝えた。
そして、その翌日には出発の準備をし、馬車に乗り込んだ。
「守さん!ありがとうございました!」
出発の際、アレックスが来て、そう言った。
「あいつにはお前に伝達鳥を送れるようにしておいたから、後はお前がなんとかしろよ!」
「はい!本当に…ありがとうございます!」
そう言い残し、俺達はゾーランを出発した。
「まさか…この国にもレオの同郷がいるとは…」
その様子を見ていたナナ師匠がそう呟いた。
「同じ世界ですし、いてもおかしくありませんよ」
「そうですが…やっぱり不思議です」
そう言いながら、ナナ師匠は本を開く。
その本のタイトルを見て、俺は少し驚いた。
「ナナ師匠…それは?」
「あ、書店で見つけた本です。小説みたいなんですけど、結構面白くて」
その本には、かつて俺が前世で引きこもっていた時に見ていた作品の名前が書いてあった。
アレックスは小説を書いてなかった気がするんだが…
「…まだいたのか…」
どうやら、あの国にはアレックス以外にも転生者がいたようだ。
会いたかったな…
けどまぁ…いつか会えるかもな。
そう思いながら、俺は馬車を進めるのであった。




