125話 トラウマの向こう側 1
ゾーランを出発してから1ヶ月。
俺達は次の目的地「シーラン」に向かっていた。
シーランは地図上では「ヨ」の下の出島の端に位置する国だ。
ここで物資を整理した後、一度大陸に帰る予定である。
「…はぁ」
「レオ。どうしました?」
俺がため息を漏らすと、後ろで本を読んでいたナナ師匠がそう聞いてくる。
ナナ師匠はゾーラン出発以降、ずっと本を読んでいる。
しかも、約5日単位で見ている本が変わってる。
いや。
正確には巻数が進んでいっている。
この人…一体何冊まとめて買ったんだ。
まぁ…金はまだあるからいいが…
「いやぁ…今頃ニナとレオニスはどうなってるのかな〜って考えてしまって」
ニナとレオニス。
離れてから2年以上が経つ。
特にレオニスはかなり成長してるだろう。
今頃どんな子になっているのか…
「まぁ、レオニスに関してはかなり大きくなってるでしょうね」
「…はぁ〜」
自分で旅に出ると言っておきながら、情けないものだ。
俺の方が気が参ってしまっているとは…
「早く会いたいなら、先を急ぎましょう」
「…そうですね」
俺はその言葉を受け、再び馬車を進めるのであった。
それから半月後。
俺達は次の目的地「シーラン」に到着した。
本来は2ヶ月かかる想定だったが、予定よりも半月早く到着できた。
「氷柱!!」
だが、やはりうまくはいかないものだ。
馬車から降りたのと同時に、何者かに襲われた。
「…ここにも住人がいるのか?」
攻撃を避けながら、ドーラ師匠はそう言い、剣を抜く。
「戦っちゃダメですよ?」
「分かってる。防御用だ」
いや…
それだと警戒されるんじゃ…
…もう攻撃されてるし、しょうがないか。
「ちょっと待ってください!敵じゃないです!ただの旅人です!」
俺はこの前のゾーランの時のように両手を上げた。
すると、相手は攻撃をやめ、俺の前に現れた。
「あ、これは失礼。なにせ、来訪者などカスラの侵略以来だったものでな」
俺は喋っている人物の顔を見て驚いた。
その人の額には、もう一つの目があったのだ。
「…三眼族」
この世界にいる種族の中で、3つの目を持つのは三眼族のみ。
つまり、ここは…
「三眼族の国ってことか」
三眼族に会うのは、ルカと出会って以来初めてだ。
「こちらこそ突然すみません。なにせ、目的があり急いでいたもので」
そう言うと、三眼族の彼は黙り込んだ。
あれ?
なんか…発言ミスったか?
そう思っていると、彼は口を開いた。
「…貴方がたは…私達を恨んではいないのですか?」
その言葉を聞いて、俺は少し察した。
三眼族は、カスラ戦線において竜獣に組みしたとして恨まれていた。
おそらく、その影響は多少なりとも昔あったのだろう。
だが、俺らは違う。
俺達はルカの話により、三眼族の歴史を知っている。
だから、別に恨んではいない。
「俺達の知り合いに、三眼族の人物がいます。歴史についてはある程度聞いていますし、恨む理由はありません」
「そう…ですか…」
そう言うと、彼は肩の荷が下りたように力を抜き、腕をおろした。
「…皆さんの来訪を歓迎します。どうぞ国の中へ」
こうして、俺達はシーランに招き入れられた。
国の中に入ると、そこには多くの三眼族の住人が居た。
こんなに多くの三眼族が暮らしているとは思わなかった。
…てか、三眼族がまとまって暮らしてる場所があるとは思ってなかった。
ともあれ、俺は前回のように市場に行き、物資と情報を集めに行った。
シーラン。
「港国」と呼ばれ、かつては漁業の拠点だったらしい。
現在は三眼族の拠点となっていて、こちらも他国と同じく鎖国状態である。
物資を調達をしていると、とある事に気づいた。
「…魚?」
そこには魚が売られていた。
見るからに普通の魚だ。
ただ、魚なのである。
俺はこの世界に転生してから、魚を売っているところなど見たことがない。
船の上で釣りをした時に食べはしたが、それ以前は全く食べたことがなかった。
つまり…ここでは…
「すみません。この国の港ってどこですか?」
俺は市場の人に聞き、港に向かった。
「す、すげー」
港につくと、そこには大量の船と人が居た。
そして、船を沖合に出し、網を投げ、魚を引き上げている。
間違いなくこれは…
「漁業だ!見るのは前世ぶりだな!」
この世界には漁業という概念はなかった。
ただ、それは俺達の大陸の話であり、実際は昔はあったということなのだろう。
「あ、レオリオスさん!見つけました!」
俺が港を見つめていると、国の前で会った三眼族、「レイ・ヴァン」さんが声をかけてきた。
「どうされたんですか?」
「国王がお呼びです。皆さんと一緒に来てくれませんか?」
俺達は、国王に呼ばれるのであった。
「はじめまして。私はこの国の王、『バズ・ライダー』と申します」
王宮に着くと、俺達は応接間に案内され、国王と謁見した。
ちなみに、国王のもとへは俺とサラさん、リューの3人で行った。
ドーラ師匠とナナ師匠は2人で何やら露店を回っていたので、邪魔しないようにした。
かれこれ、旅の中で夫婦となった2人の時間を作れていなかったので、今日くらいはその日にしようとなったのだ。
「自分は、海向こうの大陸で魔術師をしています『レオリオス・パルト』と申します」
「なんと…魔術師の方でしたか」
俺の発言に対し、バズさんはそう言う。
「そして…俺達をここに呼んだのって…」
そう言うと、バズさんは俺に尋ねてきた。
「皆様は、これからどのような計画なのでしょうか?」
俺はその問いに対し、素直に答えた。
「ここで物資を揃えたら、一度大陸に戻り、そこから北にある『ウィンズ』という国を目指そうと思っています」
そう聞くと、バズさんは姿勢を整え、俺に言う。
「皆様に、お願いがございます」
「お願い?」
バズさんの言葉に対し、俺は疑問の声を漏らす。
そして、バズさんは続ける。
「魔法陣をそちらの大陸に設置してほしいのです」
「魔法陣ですか?」
バズさんはそう言うと、とある石を出してきた。
いや。
岩に近い大きさだろうか。
平たい岩であり、上には見慣れない魔法陣が書いてある。
「…なんだ?この魔法陣」
俺は試しに模倣眼で見てみる。
しかし、何の魔法陣なのかは全くわからない。
ってか、なんか少し目が痛い。
「これは…」
俺の問いに対し、バズさんは答えた。
「転移の魔法陣です」
「…は?」
俺はその言葉に対し、言葉が出なくなった。
そして、即座に「影分身」を出し、ナナ師匠とドーラ師匠を呼びに行かせた。




