122話 獣の巣窟 2
俺とリューはナナ師匠の念話を聞きつけ、急いでナナ師匠達のもとに向かった。
「ナナ師匠!」
「レオ!来ましたね」
現場につくと、そこには遠距離から魔術で援護するナナ師匠と、近距離で攻撃を仕掛けるドーラ師匠とサラさんがいた。
「何と戦っているんですか?」
「わかりません。探索中に山で洞穴を見つけて、そこからでてきたみたいなんですけど…全く見たことがない魔獣で」
俺の問いに対し、ナナ師匠は疑問の表情を浮かべながら答えた。
ナナ師匠達も知らない魔獣種。
あの三人は元冒険者パーティで、数多くの魔獣を倒してきた人達でもある。
その人達が知らない魔獣種。
やはり、この大陸にはそういうのがいるようだ。
そう思いながら、俺は魔獣の方を見た。
「…え?」
そこには、想像外のものがいた。
その魔獣種は人の形だった。
全身が黒く輝く生物だ。
そして、頭はやけに小さく、背中からは羽が生えていた。
俺は頭を注視して、その生物を見た。
「…まじで」
俺はそれを見た瞬間、思わず声を漏らしてしまった。
その生物には、まるで蜂のような頭がついていた。
いや。
よく見ると外の奴らにも虫のような頭がついている。
「む、虫かよ…」
「むし?なんですかそれ?」
俺が声を出すと、ナナ師匠が聞いてきた。
俺はその疑問に対して驚いた。
そして、少し考えた。
………。
………。
…あ、そっか。
そういえばこの世界、虫の概念がないんだ。
この世界に来てから「虫に刺される」とか「害虫駆除」とか、そういうの聞いたことないや。
ナナ師匠達が知らないのも無理ない。
だけど虫か…
俺…小さい時から虫苦手なんだよな…
できれば視界に入れたくない。
…まずそれはいい。
まずはこの虫頭達をどうするかだ。
「ドーラ師匠!!加勢します!」
俺は虫頭達と戦ってるドーラ師匠にそう叫んだ。
「レオリオスか。頼む」
ドーラ師匠は戦いながらそう言った。
俺はそれを聞いた後、魔術を繰り出した。
「森林突!」
俺が魔術を発動させると、周りにあった木々が不自然に成長し始め、空にいる虫めがけて伸び始めた。
グサッ!!
「ギィィィィィ!!」
そして、伸びた木は虫を貫き、虫は声を上げながら絶命した。
「レオ!?今のは…」
俺の魔術を見て、ナナ師匠は驚いた。
それもそうだ。
これは俺も初使用の技だからな。
「はい。エルフの操林魔術です」
操林魔術。
木々を操るエルフ固有の魔術。
家族探しの旅でエルフの村に立ち寄った時、カオルと一緒に覚えさせてもらった魔術だ。
使う機会がなく、ただ覚えただけになっていたが、ここに来て初披露である。
「あの旅で覚えたっきりでしたけど、ここなら使えます!」
「そういえば、そんな技も覚えてましたね」
俺の言葉に対し、ナナ師匠は納得の声を漏らした。
「ここからいっきに畳み掛けましょう!」
俺達が戦闘に加わってから30分が経過した。
俺達は次々と虫頭を倒していった。
しかし、虫頭の数は一向に減らず、俺達の体力だけが削られていった。
「強くはないんだけど…数がすごいな…」
サラさんも疲れ始めたのか、そんなことを口にした。
「いっきに決めないと、こっちの限界が来るな」
ドーラ師匠もそれに続く。
たしかにそうだ。
このまま物量に押されたら、こっちが体力限界で負ける。
ここを切り抜けるには、一度に大量の戦力を削ぐ必要がある。
さて…どうしようか…
「光襲の矢・雨!!」
俺は虫めがけて魔術を放った。
何体かには当たったが、やはり一向に数が減る気配がない。
しかし、ここで異変が起きる。
ブーーーン…
一部の虫頭の集団が俺達のいる方ではない別の方へと動いた。
「え?」
突然の行動に、俺は少し動揺した。
俺はその無視の集団が動いていった方向を見た。
「…あれは!?」
そこには、先程俺が飛ばした光魔術の矢が飛んでいっていた。
虫はまるでそれを追いかけるように飛んでいっていた。
………。
…待てよ。
この動きってもしかして…
「皆さん!今から俺はあの虫の集団を一箇所に集めます!その瞬間に総攻撃を仕掛けてください」
「「「え!?」」」
「なにか策があるのか?」
俺の言葉に対し、ドーラ師匠は俺を尋ね、他3人は驚きの表情を浮かべた。
「俺の推測が正しかったら、いけます」
「よし。ならその作戦を信じよう」
俺の受け答えに、ドーラ師匠はただ信じて剣を構えた。
俺はそれを見て、瞬時に杖を上に掲げた。
「光球!!」
俺は光魔術で球体を作り、それを上空に飛ばした。
「「「「…!?」」」」」
すると、俺の作った光の球に虫がみるみる集まり始めた。
俺の推測は、どうやら当たったようだ。
正の走光性の原理。
これは、主に夜行性の虫によくある現象だ。
月明かりを基準にして動く夜行性の虫たちが、外灯の光などに引き寄せられ、集まってぐるぐると辺りをうろつくあれである。
どうやら、奴らにはその習性があるらしく、光に寄せられるようだ。
さっきの光の矢に引き寄せられたのも、あの矢が「光魔術」でできたものだったからだろう。
「今です!!」
「よくやった!断地!!」
「断地!」
「火斬!!」
「柱衝!!」
4人の攻撃が、虫の集団めがけて飛んでいった。
そして、虫たちはその魔術の衝突により跡形もなく吹っ飛んだ。
「ふぅぅぅぅ…終わりましたね…」
「流石にきつかった…」
戦いを終えると、ナナ師匠とリューはぐったりと地面に倒れ込んだ。
「だが…あんな魔獣種は見たことがないな」
それに対し、サラさんは立っていた。
流石といったところか。
「レオリオスくん。よく対処法が分かったね」
「一応、前世に似たような生物がいたので」
サラさんの質問に対し、俺は軽くそう答えた。
「ともあれ、これで一件落着だ。探索を続けよう」
ドーラ師匠の声を聞いた後、俺達は探索を再開した。
しかし、その後は特に何も見つからず、「また魔獣が来たら面倒」ということで、すぐにファイブを出た。
壁画の謎だけを残し、俺達は旅を再開するのだった。




