121話 獣の巣窟 1
ドラインを出発してから1ヶ月が経った。
俺達は森林地帯を進み、中間地点としている「ファイブ」という国を目指した。
ファイブはドラインから西に進んだ位置にあり、大陸の中央の国である。
「そういえば、ファイブってどんなところなんでしょうか?」
馬車の道中、ナナ師匠がそう聞いてきた。
「具体的には分かりませんが…火山地帯みたいですよ」
俺はそう言いながら地図を見た。
地図にある大陸の中央には、マントシティのマント山よりも巨大な火山が描かれていた。
ドラインで情報収集をしたときも、ファイブのことを「火国」と呼ぶ人が多数いた。
「元々はドワーフやエルフが暮らしていたみたいですよ」
「エルフか。意外だな」
俺の発言に対し、ドーラ師匠が声を漏らした。
「意外…ですか?」
「あぁ。エルフは操林魔術を使える森林地帯を好むと聞く。多少の林はあるようだが、この火山地帯に住んでいるのは意外だったのだ」
ドーラ師匠はそう言った。
そういえばそうだ。
俺達が寄ったエルフの村も森林の中にあった。
そう考えれば、この火山地帯に住んでいたのは意外だ。
何か意味でもあったのだろうか?
「…まぁ、それについても気になるので、到着したら少し調べてみましょう」
「あぁ。そうだな」
俺達は馬車の中で計画を立てながら、旅路を進めた。
その2週間後。
俺達は無事にファイブにたどり着いた。
しかし、そこには想像していたものとは少し違う景色があった。
「…森ですね」
そこはとても生い茂った森に覆われていた。
上を見上げると火山がそびえ立っているが、見た感じだと火口周辺以外はほとんど森となっている。
普通の山なら不思議でもないのだが、ここは火山地帯。
大抵の植物は生息できないはずだ。
なぜこんなに森になっているのか不思議でたまらない。
だが、それと同時に、とある疑問に納得がいった。
「ここなら、エルフが暮らしていても不思議ではないな」
「そうですね」
そう。
森を好むエルフにとって、ここはとても住みやすい場所なのだ。
これなら、火山地帯に暮らしていたのも納得がいく。
「まずは辺りを探索してみましょう」
「そうだな」
「了解」
俺達はここから、ファイブ周辺を探ることにして、二組に分かれて探索を始めた。
「なんかあったか?」
「今のところはないな」
俺はリューと共にファイブの中に点在する建物の中を探索していた。
中には当時使ってたであろう家具や武器がそのまま置いてあった。
屋根とかはなくなったりはしているが…なんだろうか…
「中は思ったより綺麗だな」
俺は建物の中でそう言った。
「なんだか肌寒い気もするがな」
リューがそう言うと、微かに風が吹く。
たしかに肌寒い気はしなくもない。
火山地帯なのに不思議だ。
…って、なんだこの流れ。
なんか昔やってた「青◯」でこんな会話あったな。
…だとすると、この次の俺のセリフは「もう帰ろうぜ」じゃねぇか。
それはダメだ。
帰るわけにはいかない。
コンッ…
「…ん?」
そんな事を考えながら歩いていると、足元から不思議な音が聞こえた。
その音はまるで響き渡るようでこもったような音だった。
(この音って…)
俺はそう思いながら、音が鳴った地面を探った。
すると、
「これって…」
そこには1枚の扉があった。
鉄製の扉だ。
俺はその扉の持ち手らしき部分を掴み、上に上げた。
「何かあったか?」
それに気づいたリューが近くに寄ってきた。
そして、驚いた。
「これってまさか…」
そこには階段があった。
地中に伸びる長い階段だ。
間違いない。
「地下室だな」
そう言った後、俺は杖を出して光魔術であたりを照らしながら階段に向かって歩き出した。
「リューも行くか?」
降り始める寸前、俺は立ち止まりリューに聞いた。
「…いや。安全確認のために待っておく」
そう言って、リューはあぐらをかいてその場に座った。
「わかった。じゃあ頼んだ」
「あぁ。任せろ!」
俺はそれを確認して、地下室に向かって進んだ。
地下室に降りると、そこには空間が広がっていた。
16畳くらいのやや広い空間だ。
辺りは岩のようなもので囲まれている。
イメージ的には昔の日本の防空壕に近い感じがする。
地下室というよりは、遺跡や避難所のような雰囲気がする。
「…ん?」
周囲を見渡していると、俺はあることに気づいた。
壁の一部に模様が見えたのだ。
それもただの模様ではなく、色彩や形が何やら不規則で違和感のある模様だ。
俺は不思議に思い、その壁全体を照らした。
「これは…壁画か?」
そこには巨大な人が描かれていた。
エジプトとかにありそうな画風の絵だ。
一見すればただの壁画なのだが、問題は描かれているものだ。
描かれている人はオッドアイになっていて、右目は黄色で、左目は黒い。
そして、体にも橙色に近い色がついているが、右上半身に黒い模様がある。
そして、描かれている人物の周りには無数の結晶のような柱が描かれ、地面には剣や杖、血痕がある。
戦の絵のように見えるが、絵に描かれている人は1人だけ。
状況と絵の主体がうまく噛み合っていない意味不明な絵だ。
正直、ちょっと怖い。
「これは一体…何を伝えるものなんだ?」
前世の世界なら基本、こういった絵は後世に自分たちの歴史や文化を伝えるために使われる。
しかし、これからは何を伝えているのか全くわからない。
オッドアイの人物の壁画…
異能眼についてなのだろうか?
だとしても何の異能眼なんだ?
全くわからん。
…そういえば、異能眼って片目だけなのかな。
ズドンッ!
その瞬間、辺りに地響きが鳴った。
そして地面がぐらりと揺れた。
「うぉっ!!」
俺はよろめきながらも、地面に杖をついてバランスを保った。
「地鳴り!?何が起きたんだ!?」
俺は地震が収まってから駆け足で上に戻った。
「影纏!無事か!?」
上に戻るとリューが待っていた。
リューは腰にあった二本の剣を抜き、辺りを警戒していた。
「あぁ。俺は大丈夫だ。それよりも今の揺れは!?」
「あれだ!」
俺が尋ねると、リューは外を指さした。
俺は即座にその方向に駆け出し、見た。
「…まじか」
ズドーン!
カカカカッ!
そこにはドーラ師匠とナナ師匠、サラさんの別行動班がいた。
そして、ドーラ師匠たちは何やら大きななにかと戦っていた。
いや、複数の何かと戦っていた。
『レオ!!レオ!!聞こえますか!!』
それを見つけた瞬間、俺の脳内に念話が飛んできた。
ナナ師匠の念話だ。
『ナナ師匠!何が起きてるんですか!?』
『あ!やっと見つけました!』
俺が念話に答えると、ナナ師匠も反応した。
『魔獣種です。それも大量の!どうやらあの山、魔獣の巣窟だったみたいです』
『わかりました!応戦します!』
俺はリューにことの状況を伝えた後、ナナ師匠達のいる方向に向かった。




