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119話 ドラインの住人

船を出して1年。

遂に俺達は「忘却されし大陸」へと上陸した。

しかし、上陸直後に俺達は1人の人物に止められ、槍を突きつけられた。

その人物は、竜獣だった。


「妙な真似はしないでください」


俺はその竜獣に対し、素直に指示を聞いて立ち止まった。



スッ…



その瞬間、俺は気配を感じた。

ふと視線を向けると、ドーラ師匠が剣を抜こうとしていた。

…それは違うか。


「待ってください、ドーラ師匠」


「「…!?」」


俺は即座に分身を出し、ドーラ師匠を静止した。

その動きを見たドーラ師匠と竜獣は驚きの表情を浮かべた。


「レオリオス…しかし…」


「今の状況的に、素直に従うほうがいいです」


「だが…」


「俺に任せてください」


俺の言葉に対し、ドーラ師匠は少し考え込む。


「…わかった。お前に任せる」


そう言って、ドーラ師匠は抜きかけた剣から手を離した。



「…あなた達は一体…」



その状況を見ていた竜獣は、俺に疑問の言葉を漏らした。


「俺達は向こうの大陸からやってきた旅人です。ある人物を探すためにこの大陸に来ました」


「向こうの…大陸から…?」


俺の言葉に対し、竜獣は警戒心と疑問を交えながら言葉を放つ。


「俺達はあなたに危害を加える気はありません。怪しいようなら、拘束しても構いません」


俺は冷静に言葉を並べる。


というのも実はこの展開、元々可能性としては考えていた。

大陸上陸時、何もない可能性のほうが高いが、何らかのアクシデントの可能性もいくつかあると考えた。

その可能性の1つが、先住民や他種族の存在だ。

忘れられた大陸だということだったが、今は誰もいないということは言われていなかった。

つまり、別に誰かがいる可能性もないわけではないのだ。

俺はその時はどうするかを一応考えていた。

考えてはいたが…まさか本当にいるとは思っていなかった。

それもまさか…竜獣だとは…

内心、ちょっとビビってる。


「いや…拘束はしないわ」


俺が心のなかでつばを飲むと、竜獣は槍を下げ、地面に降りた。


「申し訳ない。見覚えのない船が見えたもので…警戒してしまった」


おっと?

これはもしや…意外と話せる?


「いえ、大丈夫です。警戒するのは当然です」


俺がそう言うと、その竜獣は俺に背を向け、歩みだす。


「旅の者達。まずは無礼を詫びる。ここで話すのもなんだ。街へ案内する」


俺達の表情を見て、警戒を解いたのか、その竜獣は街に案内すると言った。

街だと?

まさか、まだこの大陸は栄えているのか?

…情報が整理できない。

いや…だがまずは…


「ちょっと待ってください。仲間に話をつけてきます」

「あ、分かりました」


そう言って、俺はみんなのもとに駆け寄った。


「大丈夫そうですか?」


俺の様子を見ていたナナ師匠が俺に向けてそう言った。


「大丈夫です。どうやら街に案内してくれるみたいです」

「街ですか!?」

「お前…本当にそういうの得意だよな…」


俺の言葉に、ナナ師匠とリューが声を漏らす。


「まぁ、ここで硬直してるよりはいいでしょ」

「…そうだな」


それに対し、ドーラ師匠とサラさんは納得の表情を浮かべた。


「まずはあの人に従ってみましょう」


そう言うと、全員は船を降りて、竜獣のもとへ向かった。



「禁忌の結界」



俺は全員の下船を確認した後、禁忌の結界で船を収納した。


「…え?」


それを見ていた竜獣は、かなり驚いた表情を浮かべた。

あ、それもそっか。

自作の神級魔術だし。


「準備できました。お願いします」

「え!?あ、はい。行きましょう」


こうして、俺達は街に案内された。






しばらく歩くと、街についた。


「ここは?」


「ここは『龍国ドライン』。私達竜獣の穏健派が暮らす最後の国です」


「穏健派?」


俺は竜獣の言葉に疑問を抱く。


穏健派。


どうやら、竜獣内に派閥があるらしい。

何の派閥かは正直わからないが…


街に入ると、そこには驚きの光景が広がっていた。


「竜獣が…こんなに…」


そこには、想像以上の量の竜獣がいた。

いや、暮らしていた。

辺りには市場や食堂、鍛冶屋や宿まで見える。


「まさか…海を越えた先にこんな国があるなんて…」

「想像以上だな」

「…というか…想定外ですよ」


街を見て、リューやナナ師匠、ドーラ師匠も驚きを隠せずにいた。


「敵…じゃなさそうだな…」


サラさんは少し警戒しているようだ。


「あの…えっと…」


俺は先導する竜獣に対し、質問をしようとしたが、呼び方に困ってしまった。


「あ、申し遅れました。私はこの国の騎士の『アイ』と申します」


俺に対し、竜獣はそう名乗った。


「あ、ではアイさん。今はどこに向かってるんですか?」

「海の向こうから旅人が来るなんてこと、ここ200年の間ありませんでした。まずはこの国の防衛を担う方に会ってもらいたく…」

「あ、なるほど。わかりました」


俺達はその言葉を信じ、ついて行った。






しばらく歩いた後、俺達は1つの立派な建物に招かれ、客間に案内された。


「ただいま人を呼んできますので、ここでお待ち下さい」


そう言って、俺達は待機を依頼された。

俺は近くの椅子に座った。

が、この場にいる全員、辺りを警戒した。

何をされるかわからない今、警戒を解くのは良くないと全員が判断したのだ。



「…失礼し…ます?」



俺達が警戒していると、扉から1人の竜獣が入ってきた。

その人は俺達の警戒を察したのか、かなり驚いた表情を浮かべていた。


「そんなに警戒しないでください。何もしませんので」


その言葉を聞き、俺はナナ師匠に目配せをした。


『辺りに人は…いないようです』

『そうみたいですね』


俺とナナ師匠は念話で辺りの人の心を読み取ろうとした。

しかし、さっきのアイさんの感情と、目の前にいる竜獣の人のもの以外は読み取れない。

どうやら、誰かが俺達を狙ってるというのはないらしい。


「すみません。俺達もこの大陸に初めてきたので」

「無理もありません。実際、我らも最初は警戒していましたので」

「最初は?」


俺はその竜獣の人の言葉に引っかかった。


「あ、まずは自己紹介を。我はこの国の防衛をになっております『ウェン・ゴール』と申します」


「では俺も。俺は魔術師をしています。『レオリオス・パルト』と申します」


「『パルト』?」


その言葉に対し、ウェンさんは表情を変えた。


「もしや…人族の貴族の方ですか?」

「え?あぁ…いや、今はもう貴族ではなく…一応昔は貴族だったらしいのですが」

「そうですか」


そう聞くと、ウェンさんは真剣な眼差しを向け、俺に言葉を放つ。



「皆様には、竜獣についてどう伝わっていますか?」



その言葉に対し、その場にいた全員が驚いた。

そして、俺は一呼吸置き、答えた。



「『竜獣は魔神カスラに組みした戦闘種族』だと」



「…そうですか」


そう言うと、ウェンさんは姿勢を整え、再び言葉を放つ。


「レオリオスさん。もしよろしければ、昔の話を聞いてもらえないでしょうか?」

「昔の話…ですか」

「はい。この異大陸との初の交流。この機会は我らにとっての転機なのかもしれません」


転機?

何のことなのだろうか?

そう思いながら、俺は問いかける。


「何の…話なのですか?」


その質問に対し、ウェンさんは答える。



「竜獣の歴史…カスラと竜獣についてです」


その言葉に対し、この場の全員が表情を変えるのであった。

おまけ話

この時、ドライン国内では「海の向こうからの来訪者が現れた」ということで、かなりの騒ぎになっていたそうだ。

しかし、レオリオス達とは違い、どちらかと言うと興味津々という感じらしい。

敵対心や警戒心を抱いているのは、ごく一部の騎士のみらしい。

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