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118話 船旅

船を出して2日が経った。

この日はこれからの旅についての確認の会議をしていた。


「…まずレオリオス。この船はどれくらいで大陸にたどり着く?」


会議中、ドーラ師匠がそう聞いてきた。


「おそらく…1年ほどになると思います」

「い、1年ですか」


俺の回答に対し、ナナ師匠が驚いた。


「船って結構時間かかるんですね…」

「まぁ…なんとなく察しはついていたがな…」


ドーラ師匠は、なんとなく察していたようだ。

サラさんはというと、


「まぁ〜気長にいこうか」


結構楽観的だった。


「それで、今はどこを目指してるんだ?」


続けざまにドーラ師匠が聞いてきた。


「一応、今は真ん中の出島を目指してます」


そう言って、俺は地図を指差した。

そこはカタカナの「ヨ」のような形の大陸の真ん中の島の先だった。

そして、そこには龍神語で「ドライン」と書かれていた。


「ここについて、何か…」

「知らん」

「…ですよね」


聞いてみたものの、知るわけがない。

今行こうとしてるのは200年以上前に存在が忘れられた大陸なのだから。


「元々何の国だったんですかね?」

「さぁ?魔族なのか竜族なのかもわからないです」


ナナ師匠の問いに対し、俺も疑問の言葉を漏らした。


おさらいしておくと、この大陸はカスラ戦線以前までは繁栄していた場所であり、主に魔族と竜族が暮らしていたそうだ。

カスラ戦線後は人族が暮らしていた現在の大陸に両種が移り住み、今の形になったそうだ。


そのことを考えると、忘却されし大陸の中にある国は魔族の国か竜族の国だったことになる。

だとしたらどちらの国なのかというと、わからない。

ファストさんの父の手記を読み漁ったが、そういったことについては言及されていなかった。

どれが何の国なのかは、行ってからのお楽しみである。


「して、上陸後はどうするのだ?」


俺が考え込んでいると、ドーラ師匠が次の質問を投げかけてくる。


「まずはこの『ドライン』について調査した後、大陸の中央を経由して南下しようと思っています」

「船はどうする?」

「ドラインに停泊させようと思ってます。その後は南にある『ゾーラン』という国の調査後に一度ドラインに戻って、南西にある『シーラン』という国に向かおうと考えています」


俺はドーラ師匠の質問に対し、今後の計画について答えていった。

ちなみに、「シーラン」とは大陸をカタカナの「ヨ」に例えた時に、「ヨ」の一番下の出島の先にある国で、「ゾーラン」はその出島と本大陸の付け根のところの国である。


「二度手間ではあるが…それがいいだろう」

「船がなくなるのは何かと面倒ですもんね」

「それのほうが良さそうだな」


俺の考えに対し、ドーラ師匠とナナ師匠、リューは納得したようだ。

しかし、3人が納得した中、サラさんからとんでもない考えが飛んできた。



「収納魔術とかでしまってしまえば早いんじゃないか?」



その言葉を聞いた瞬間、その場にいた全員の動きが止まった。

そして、ナナ師匠と俺は声を揃えていった。



「「…たしかに……」」



よくよく考えればそうだ。

魔術でしまってしまえばいいんだ。

その意見に、俺とナナ師匠は納得してしまった。

だが、正直に言うと収納魔術ではこの大きさのものをしまうのは無理だ。

入ったとしても、一度船をバラさないと無理だ。


しかし、俺はそれ以外の収納方法を持っているのだ。



「『禁忌の結界』ならいけますね…」



禁忌の結界。

特定の条件を設定し、その条件を満たすものを封印する魔術。

実はこの魔術、封印したものを形そのままに縮めることが可能なのである。

結界内の空間そのものを断絶しているためか、なぜかは正直わからないが、空間そのものを縮めることで形そのままに結界をピンポン玉サイズまで小さくできる。(ただし、それをやるにはかなりの魔力が必要)


これを利用して、船そのものをそのまま封印してしまえば、多分持ち運べる。

俺とナナ師匠はそれに気づいて、納得したのだった。


「となると…船は持ち運び、そのまま南に向かうでいいのか?」

「多分…それで大丈夫です」


こうして、今後の話し合いは着々と進むのであった。






カンッ!


カカンッ!


船を出してから3ヶ月が経った。

船の中には木刀がぶつかり合う音が響いていた。


「ドーラ師匠。船の広さ的に動けないのは分かるんですけど…これって意味あるんですか?」


俺はドーラ師匠と打ち込み練習をしながら質問を投げかける。

というのも、この船は長さ15メートル、深さ6メートルの地下室付きの船にやや大きめの帆を2つ携えた結構立派な船である。

しかし、村でドーラ師匠とやっていたような剣術修行や、ナナ師匠やニナ、カオル達とやっていたような魔術修行はできない。

そのため、暇な時間はこうして小さな練習をしている。


ただ、正直これをずっとやっている意味はあまり実感できない。

さらに、これをかれこれ3ヶ月続けているため、慣れてしまったと言うか…飽きてしまったと言うか…


「…正直意味はない。体を鈍らせないための補強のようなものだ」


俺の質問に対し、ドーラ師匠はそう答えた。


「…なるほど」


その回答を聞いた後、俺とドーラ師匠は再び木刀を振った。


「それにしても…船旅って暇なもんだな」


俺とドーラ師匠の姿を見ながら、リューがそう言った。


「しょうがないですよ。大陸につくまでは何もありませんからね」


それを聞いたナナ師匠がそう返した。


「…まぁ…何かあっても困るんですけど…」


それを聞いたリューはそう答えた。

たしかに、暇なのは分かるが、何かあるのは嫌だ。


…何も起きないよな?

フラグじゃないぞ?

そう思いながら、俺は木刀を振るのであった。






船を出してから半年が経った。

旅を始めてもうすでに1年が経過した。

冬の寒さを越え、再び春の陽気がやってきた。


そんなある日。

俺達は特にやることもないので、魔術で道具を作り、釣りをしていた。


「…ん?何かかかった?」


釣りをしていると、リューの竿に何かがかかった。

そして、


「…あ?私もだな」


リューと同時にサラさんの竿にも何かがかかった。


2人は思いっきり竿をひいた。

しかし、


「…お、重っ!?」

「魚ってこんなに重かったか!?」


2人の怪力と魔術製の強力な竿をもってしても、その魚はなかなか上がってこない。

これは大物の予感だ。

だが、ここで2人が気づく。


「あれ?サラさん。俺の竿引っ張ってません?」

「…たしかに…同じものがかかったか?」


2人の竿は同時に揺れて、同時に引っ張られていた。

どうやら、2人の竿には同じものがかかったようだ。


「じゃあ一緒にやりますか?」


リューの問いかけに対し、サラさんは頷いた。


「じゃあやるぞ?せーのっ!!」


掛け声と同時に、2人は思いっきり竿を引っ張った。



バッシャーン!!



ものすごい水しぶきの中、等々その大物が姿を現した。



「「おぉぉぉぉ…お?」」



その水しぶきの中にいたのは、予想外のものだった。



「…タコの…足?」



俺は見た目を見てポツリとそう呟いた。

そこにあったのは、巨大なタコ足だった。

いや、イカだろうか?


ん?

待てよ?


俺の頭にはふとした疑問が浮かべ、その釣れたものを眺める。

見ると、釣れたそれは船と同じかそれ以上の大きさがあった。

タコとイカにしては…デカくね?



バッシャーン!!



バシャーン!



そう思った瞬間、船の周りから無数の水しぶきが上がる。

そして、次々と釣れたタコ足と同じものが出てくる。


…これってまさか……



「ク、クラーケン!?」



その光景は、俺の前世のゲームや神話で描かれていたようなクラーケンそのものだった。

マジか…

この世界にも、こういうのいるんだな…


…って違う!!



「ま、魔獣種です!!」



「”何か”が起きてしまったか…」


ドーラ師匠はそう言うと重そうに腰を上げ立ち上がり、剣を抜いた。


「…とりあえず切り抜けましょう!」


「…断地!!」


こうして、数カ月…いや、1年ぶりの戦闘が始まるのであった。






船を出して1年が経った。

クラーケン遭遇時はどうなるかと思ったが、なんとか乗り切った。

流石の神級パーティだ。

遠距離攻撃でクラーケンの足を退き、なんとか撒くことができた。



「やっと…見えてきました」



船を進めていると、ナナ師匠が向こう側を指差してそう言った。

その指の先には、1つの島が見えた。

いや、大陸が見えた。



「…着きましたか」


「やっとだな」


大陸の方を見て、俺とドーラ師匠は小さく安堵の声を漏らした。


「さて…何があることか」

「少し楽しみだな」


サラさんとリューは微かに笑みを浮かべている。


「さて…ここからですよ!気を引き締めていきましょう」


「レオリオスよ…お前こそ気を引き締めろよ」


「あ、はい…」


俺の呼びかけに対し、ドーラ師匠は微笑しながらそう言った。






ガタンッ!


大陸に着き、俺達は船を停めた。

しかし、そこには違和感のある光景があった。



「これは…港?」



そこには木造の停泊所のような場所があった。

それも、まだ整備されているように見えるほどきれいな場所だった。


…何か妙だ。


「とりあえず降りましょう」


俺はナナ師匠の呼びかけに従い、船の橋をおろし、上陸した。

その時だった。




「止まれ!」




「「「「「…!?」」」」」



その場に1人の女性のような声が響いた。

突然聞こえてきた声に、俺達は全員固まった。

そして俺は、声の聞こえた頭上を見上げた。

そこには、竜のような鱗を纏った人物が背中から生える翼を動かし、飛んでいた。

そして、俺めがけて槍を構えていた。

その光景を見て、俺は呟いた。



「竜獣族…!?」



そこにいたのは、竜獣族だった。

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