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115話 忘れられた地図

ゼイが去ったあと、俺は家に戻り、起こったことをその場にいた全員に話した。

混乱していた俺は、カタコトに語ることしか出来なかった。

しかし、話を聞いていていた全員が、俺と同じく混乱に陥った。

バオスに関しては、言葉すら出すことができないほどに驚愕していた。



ゼイの襲来から1週間が経ち、その間に俺達は各々行動していた。

バオスはこの1週間の間に、村守と共に辺りを捜索し、ゼイの痕跡を探した。

ドーラ師匠、ナナ師匠、カオル、サラさんの4人は村近くの林で毎日修行をしている。

ニナ、ルカ、カーラは生まれたばかりのレオニスの面倒を見ている。

しかしニナに関しては、ゼイの正体を間近で見てしまったのもあり、まだなにか夢を見ているのではと口にするほどに混乱が収まっていない。

混乱しているのは全員そうなのだが、ニナは特に混乱している。

全員がまだ気持ちと状況の整理ができていない中、各々が自分のやることを見つけて、それを実行していた。






そんな中、俺も自分なりに行動していた。

まずはレオニスの世話だ。

俺はニナやルカ、カーラよりは世話をできていないが、父として今できることをしてあげている。

そしてその合間に、家にあった「バルトの禁術」や「異能眼」などの本を読み漁った。

調べている中で知ったことや気づいたことは多少あった。


まずはバルトの禁術について。

母「カレラ・パルト」にかけられた魔術は、やはり「生命分裂」という魔術だった。

この魔術は対象の肉体、能力、精神を2分化する魔術であり、自身のコピーとなる魔力体を作る「分身」の魔術とは異なるそうだ。

そして、これでゼイの言っていたことを理解した。

奴は「才能を奪った」と言っていたが、正確には「魔力は同じ魔力に惹きつけられる」という性質を使い、「魔力を取り戻した」ということなのだろう。



そして異能眼について。

ゼイが持っていた「共鳴眼」について、記載があった。

この眼は、対象の人物の思考、感情、痛覚等々をリンクさせることが可能であり、その能力を使い、対象の記憶を改ざんしたり、対象の未来の可能性を見ることができるそうだ。

未来の可能性というのは、その対象の思考、性格から、未来でやりうる行動を予測できるらしい。

だが、俺には一つの疑問が生まれていた。

この本の説明には「共鳴を察知することは困難」という記載もあった。

つまり、俺がゼイの発言を聞いた時に脱力したり警戒心が解けていたのは、共鳴や洗脳といった能力が理由ではなかったのだ。


そして、その結論より、俺は気づきたくなかったことに気づいてしまった。

あくまで可能性ではあるが…


おそらく、俺の脱力の原因は「声」だ。


俺は無意識下にゼイの声をカレラの声と認識していたのだろう。

それにより、自然に警戒心が解けていたのかもしれない。

そう考えると辻褄が合ってしまったのだ。


俺はそのことに複雑な気持ちになっていた。

しかし、それはあくまで俺のことだ。

俺はそれを、他のみんなには告げずに、調査を続けた。






「…来たか。レオリオスよ」


「はい」


襲撃から1ヶ月半後。

まだ雪が積もっている中、俺はファジサイトに来ていた。

というのも、襲撃後、俺は各国の知り合いに手当たり次第に手紙を送り、とあることの調査を頼んでいた。

それは、襲撃時にゼイが最後に行っていた言葉についてだ。



ー君がもし私を追うなら…忘れられた地で再び会おうー



奴はそう言っていた。

襲撃から数日が経ち、状況が整理できた中で、この言葉だけが意味不明だった。

そのため俺は、自身で調査しつつ、知り合いに聞き込みをしていた。

そんな中、ファストさんから返答があり、ファジサイトに招集されたのだ。


「まずは、貴様が無事で何よりだ」

「それは…」

「わかっている。お前の立場的に、その言葉には複雑な気持ちだろう。何も言わなくて良い」

「…はい」


そう言うと、ファストさんは椅子から立ち上がり、歩き出した。


「ついて来い。見せたいものがある」

「わかりました」


俺はファストさんのあとに続き、とある部屋へと入った。






「まずはこれを見てくれ」


部屋はどうやら資料室のようで、部屋内の棚には大量の書類や物、資料があった。

そしてファストさんは1枚の丸められた紙を出した。


「…これは?」

「開いてみろ」


俺はファストさんに言われるがままに紙を広げた。



「…え?これって…」



そこには地図があった。

どうやら世界地図のようだ。


しかし、その地図は異様だった。


この世界は北東端にマントシティ。

北西端にはファジサイト。

南東端には竜族世界。

北西端にはウェストン(※正確にはエイサール)がある。

そして、その世界は海に囲まれ、その向こう側には何もなく、ブラックホールのような引力のみが存在するとされている。


しかし、この地図には今俺達がいる大陸の他に、もう1つの大陸があった。


その大陸は俺達がいるこの大陸の東側に存在し、カタカナの「ヨ」のような形をした大陸だった。

そして、俺達がいる大陸の西側にも小さな島があるのが確認できた。

とにかく、これは俺からしたら異様でしかなかった。



「ファスト様…これって一体…」


「これは我が祖父が300年前に持っていたとされる地図だ。貴様の頼みを聞いた後に思い出し、探し出した」


300年前に持っていた…

つまりこれは…



「300年以上前の地図と言うことですか?」



「いや…正確には200年前だ」



200年前の地図…

一体どういうことなのか。


「この大陸は、カスラ戦線の前まで魔族と竜族が住んでいた大陸であり、カスラ戦線により住民が消えたとされているそうだ」


俺が考えていると、ファストさんは言った。


「なぜ…知っているのですか?」


「父の手記だ。我が父の日記にそうつづられていた」


どうやら、存在は本当らしい。


「しかし…これをどう捉えるべきか…」


そう考えていると、俺はとあることを思い出した。

それは、ジンが村を訪れた時にもたらした情報だ。



ーマントシティにいたジャイフのメンバーからなんだが…あいつ、海の向こうから飛んできたらしいー



ジンはたしかそう言っていた。

そしてこの地図を見る。

マントシティの海は東の海。

そして、ゼイが言っていた「忘れられた地」。



この地図にある大陸は、まさしくその特徴と状況にあっていた。



「ファスト様。ありがとうございました」


「…何か、決心がついたようだな」


「…はい」


俺は地図をもらった後、その場を後にした。

そして村に戻り、俺は計画を立て始めるのだった。


忘れられた地への行き方を。

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