111話 深き縁 2
「じゃあ…足掻かせてもらおうかな」
俺は杖を構え、即座に魔術を撃つ。
「光襲の矢・雨!!」
「部分結界」
俺が魔術を放つと、ゼイはその攻撃を最小限の結界の大きさで正確に防ぐ。
部分的に結界を発動する魔術のようだ。
「影の槍」
「おっと」
俺は光の矢を放つ中、ゼイの足元から槍を出現させる。
ゼイは後ろに飛び跳ね避ける。
そして、それを見たニナは技を出す。
「水炸裂!!」
キンッ!
ニナはゼイに術を出すが、結界により防がれた。
「氷の柱」
そして、ゼイはニナに術を出す。
「影球体!!」
俺はそれを見て反射的にニナを影で包む。
パリンッ!
すると、ニナの足元から氷が生えてきた。
しかし、その氷は影球体により防がれ、砕かれた。
「ニナ!?大丈夫か!?」
「だ、大丈夫。ありがとう」
俺は体勢を直し、ゼイの方を見る。
ゼイは次の攻撃を待ち構えるように、体勢をやや低くして立っていた。
「どうした?次の攻撃は?」
「………」
「無視かい?それとも考えてるのかい?私を打ち負かす方法を」
…俺はその言葉を聞いた瞬間、少しだけ力が抜けた。
こいつと話すといつもそうだ。
声を聞くと体から力が抜け、警戒心が薄れる。
きっと、これはゼイが言う「共鳴」の効果なのだろう。
そう考えれば、説明がつく。
「…フッ」
そう考えていると、ゼイは小さく笑った。
「何がおかしい」
「いや。面白いことを考えているなと思ってね」
面白いこと?
俺はそんな事を考えた覚えはないのだが。
「じゃあ、続けようか。『光柱』」
「…!?影球体!!」
俺はゼイの攻撃を影球体で防御しようとした。
しかし、これは失敗だった。
ズンッ!!
俺が影球体を発動すると、ゼイの光の柱は影球体をかき消すように俺に降ってきた。
影球体にはポッカリと穴が空き、俺はゼイの攻撃をくらった。
「…ぐっ!!」
俺は驚いた。
影球体が破壊されたのはこれが初めてじゃない。
しかし、こんなふうに打ち消されるように破壊されたのは初めてだ。
「『光は影を打ち消す』…君たちが学校で似たようなことをやっていたようじゃないか」
俺はその言葉にハッとした。
たしかにそうだ。
俺がドラマルトの学校で七不思議の調査をしている時に接敵した影魔術使いの攻撃を、俺とナナ師匠の光魔術で一時的に中和したことがあった。
まさかそんな法則があるとは…
「…太陽爆発」
俺がゼイの攻撃に怯んでいると、突如として辺りが眩い光に包まれた。
俺はその光に気づいた瞬間、ゼイの方を見た。
そこには眩い光の光源と思われる火の玉があった。
(魔術!?)
俺は咄嗟に模倣眼を開く。
すると、俺の右目に電撃がはしったような激痛が走る。
間違いない。
これは神級の魔術だ。
「…!?内透結…」
俺はすぐさま結界を出そうとした。
その時だった。
グハッ!!
俺は吐血した。
どうやら、さっきのゼイの攻撃がかなり効いていたようだ。
俺はその場で膝をついた。
「限界のようだね」
そう言って、ゼイはその火の玉を投げてきた。
マズい。
このままだと、俺諸共村が吹っ飛ぶ。
どうにかしてこの攻撃を防がなくては…
しかし、俺の体は動かない。
立ち上がろうとしても、腕を上げようとしても、体は不動をつらぬいた。
「レオ!!」
俺が動けないでいると、ニナが俺とゼイの間に入った。
「…!?ニナ!!逃げろ!!」
「ダメ!!それだと私は後悔する!!」
そう言って、ニナは腕を前に出す。
「吸魔結界・外!一点特化!!」
ズドンッ!!
ニナは前方に結界を展開した。
そして、ゼイが放った火の玉を受け止める。
「…うっ!」
火の玉の威力は凄まじく、受け止めたニナをズルズルと後ろに押していく。
「…あぁぁぁぁ!!」
ニナはかつて出したことのない咆哮を上げる。
すると、火の玉は結界に吸い込まれていった。
「…へぇ…これを吸収するんだ」
ゼイはそれを見て驚きと感心の声を漏らす。
そしてその数秒後、火の玉は完全に吸収された。
「今!!」
吸収が終わった瞬間、ニナの結界は眩い光を放ち、魔力を前方に飛ばした。
「吸魔結界」の特徴である「術者に還元できない魔力が跳ね返る」が発動したのだ。
ズドーン!!
跳ね返った魔力は凄まじい音を発しながらゼイに飛んでいった。
「流石にまずいか…『龍鱗結界』」
ゼイは前方に結界を展開し、魔術を防いだ。
その瞬間、ニナは俺の方に駆け寄った。
「…ー・〜・『球陣治癒』」
そして、俺に治癒魔術をかけた。
「ニナ…」
「…ごめん。出てきちゃって。でも、死なないで」
ニナの言葉はカタコトだった。
しかし、その言葉は俺の心に深く刺さった。
「…うん。分かってる」
俺は収納魔術で杖と剣を持ち替えた。
そして、全身に剣力を込めて、ジャンプした。
「…ふぅ…やっと…!?」
ゼイは跳ね返ってきた魔術を全て防いだ。
そして、俺達の方を見る。
だが、ゼイは驚いた。
さっきまで俺とニナがいた場所にはニナだけがいた。
俺は姿を消していた。
「…!!?」
そして、何かに気づいたゼイは空を見上げた。
そこには、居合の構えを取る俺がいた。
ズンッ!!
俺は空中を蹴り、ゼイをめがけて突っ込んだ。
「天地一閃!!」
そして、剣を振った。
「…っ!!反射結界!!」
ゼイは「反射結界」を展開する。
しかし、咄嗟の発動だったため、結界は不完全な形だった。
パリンッ!!
それにより、俺が剣を振ると、結界は俺の攻撃を跳ね返すことなくあっけなく割れる。
スッ!!
ズドーン!!
ゼイはその瞬間、体勢を若干そらし、攻撃を避けた。
しかし、完全には避けきれず、俺の剣はローブのフードを切り裂き、顔に傷を入れた。
そして、俺は落下の勢いで地面に激突する。
俺はなんとか着陸したが、その勢いが凄まじく、地面にくぼみを作りながら衝撃を放つ。
ゼイはそれにより数メートル先に飛ばされた。
ゼイにはダメージは少ないものの、魔力の連続消費により、少し怯む。
そして、切れたフードを頭からはらった。
「…え?」
フードを脱いだ瞬間、ゼイを見ていたニナは声を漏らす。
それは驚きと混乱が混じったような弱々しい声だった。
そして、その声につられて俺もゼイを見る。
「…は?」
そこには女がいた。
右目は赤く輝き、鋭いようで、穏やかな目でこちらを見る。
外見は若めで、茶色い髪をしていた。
そして、頬に傷をつけながら、その女は穏やかでもあり、不気味でもある不敵な笑みを浮かべる。
「…なん…で…?」
その姿を見た瞬間、戦意を完全に忘れ、剣を落とした。
そして、記憶の片隅にある顔を思い浮かべ、俺は何も考えられなくなった。




