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110話 深き縁 1

ニナの出産から11日が経過した。

ニナはその後はみるみる元気になった。

そして、「レオニス」の方も健康状態は良好だそうだ。

俺は出産のあと、絶対安静のため外に出られないニナの代わりに、医者から赤子の世話の手ほどきをされた。

そして、赤子の世話のために必要なものを調達、作成し、それを実行した。

それでなんだかんだで10日以上も忙しくしていた。


そんな中、俺は今日は墓地にいた。

時刻は夜になっていたが、日中は忙しく、手が空いていなかったのでこの時間なのだ。

俺は花束を持ち、とある墓石の前に立っていた。

そこには人族語で「カレラ・パルト」と書いてあった。

そう。

ここは自身の母である「カレラ・パルト」の墓である。

俺はその墓に花を供え、しゃがみ込んだ。

そして俺は、淡々と語り始める。


「母さん。しばらく来れなくてごめん」


俺は終戦後、墓参りに来れていなかった。

そのため、俺の独り言は謝罪からだった。


「報告で来たんだ。俺とニナの子供が生まれたんだ。名前は『レオニス』。男の子だって」


そう言って、俺は少し微笑む。


「俺達の初めての子供だ。母さんにとっては初孫かな?すごい元気な子でさ、指を出したらすぐにつかんでくるんだよ」


そう言った後、俺は昔のことを思い出した。


「母さんが俺やカーラ姉さん、カオルを産んだときも…こんな感じだったのかな。俺には、カオルが生まれたあとの『やっと3人目』みたいな顔しか思い出せないや」


そんな笑い話をしながら、俺はもう一度カレラの墓を見る。


「もっと、みんなが幸せになるように…頑張ります。俺が転生者だからかな?…そういうのに、他のみんなよりも執着しちゃってるみたいなんだよね」


俺はそれに対し微笑む。

そして、言葉を続ける。


「見守ってて…母さん」


そうして、俺は立ち上がり、墓に向かって一礼した。



「レオ〜」


一礼し終えると、遠くからニナが駆け足でやってきた。


「ニナ?レオニスは?」

「カーラさんが見てくれてる。レオを呼んできてって言われたんだ」


そうだったのか。

もしかして、もう夕食の時間かな?


「分かった。すぐ戻るよ」

「うん!」


そう言って、俺は歩き出そうとした。


…なんだろうか。

俺は今、幸せを感じているのかな?

これからの生活を考えると、胸が温かい。

そう思いながら、俺は一歩足を出す。



この生活が…




「…”ずっと続けばいいな”って言いたいのかな?」





その言葉が聞こえた瞬間、血の気が引いた。

俺がニナのいる方向に歩みだそうとした瞬間、後ろから声がしたのだ。

その言葉は不意にやってきて、俺の心を貫いた。



「…は?」



俺が後ろを向くと、そこにはカレラの墓と、その後ろに木が生えている。

雪がつもり、今は葉のない木だ。

そして、その上に何かがいる。

それは全身ローブに覆われたもの。

ローブの中からは小さな光が一つ漏れている。

そして、ローブからは人の足が生え、中から不気味な気配を感じる。

そして、それは女の声で言葉を放つ。



「何年ぶりだか忘れたけど…久しぶりだね。『佐々木 守』くん。いや、『レオリオス・パルト』くん」



そこにいたのは、『ゼイ』だった。






「ゼイ……」


俺はニナを守るような形になり、右手に杖を構えた。


「おっと、待った。さすがに墓地で君と戦いたくはない。場所を変えよう」


俺はそれを聞き、ゆっくりと杖を下ろした。


「…いいだろう」

「物わかりが早くて助かるよ」


そう言って、ゼイは村の外の方へ飛んでいった。

それを見た後、俺はニナに声をかけた。


「ニナ。このことを、みんなに伝えてくれないか」


「え?でもレオは?」


「俺はゼイを追う。ニナは、みんなにこのことを伝えて、家にいてくれ」


その言葉を聞くと、ニナは目の色を変えた。


「ダメ。レオを1人では行かせられない」

「ニナ!?」


俺は少し動揺した。

俺は、まさかニナに却下されるとは思っていなかった。

だが、ニナは言葉を続ける。


「ただでさえ危険なのに、あいつはたしかレオの仇なんでしょ。そんな相手と1人では会わせられない」


ニナは真剣な眼差しで、そう言った。

その言葉に対して、俺は少し考え込んだ。

そして、俺はその言葉に納得してしまった。


「わかった…けど、危なくなったらすぐ逃げろよ」

「うん。わかった」


俺は分身に伝言を託し、ニナと共にゼイの元に向かった。







「…来たね」


村を出てしばらく歩いたところに、ゼイはいた。

奴は逃げるわけでもなく、近くの岩にポツリと座って待っていた。


「しかし、妻の方も来るとは思っていなかったよ。てっきりおいてくるものだと」


ゼイはニナの方を見て言った。


「ゼイ。戦う前に、聞きたいことがある」


俺はゼイに向かってそう言った。


「君が聞きたいことねぇ。何だい?」



「お前は、竜獣を洗脳していたのか?」






なぜ俺がこの質問をしたかについては、終戦してから約1ヶ月経ったくらいまでの日に遡る。

俺はその日、ドラマルトの留置所に来ていた。

そこで、ある者と面会していた。


「戦線ぶり…かな」


「あぁ。そうだな、ロン」


ロン・アイアンズ。

竜獣の双翼の右翼にして、幹部の中で唯一生け捕りに成功した者。

俺は名指しでこいつに呼び出されたのだ。


「それで、何のようだ?」

「お前に、ソーザで起きたことを話しておきたい」


その発言に、俺は目を見開いた。


「竜獣王の死は、やはりなにかあるのか?」

「あぁ。そうだ」


竜獣王の死。

シンさんによれば、王宮内には竜獣王の白骨化した死体と、王宮の重役と思われる奴らの死体があったとなっている。


「まず前提から話す」


そして、ロンは語りだす。



「竜獣王は、竜人族との和平を目指していた」


「は!?」


俺は思わず、座っていた椅子をふっとばして立ち上がった。


「和平を…って、どういうことだ!?」

「言葉の通りだ、竜獣王は平和主義者で、長年の因果にけりをつけたいと考え、竜人族との和平交渉を考えていた」


そんなことがあるのか?

俺はそう思ったが、同時に、ここで嘘を付く必要性がないことにも気づいていた。

だから、俺はその言葉を信じ、語りの続きを聞いた。


「20年前に即位してから、その計画を進めていた。しかし、8年前に状況が変わった」

「は?」



「8年前。人族の女により、竜獣王は殺された」



俺はその言葉を聞き、言葉では表せない感情に襲われた。

衝撃とも疑念とも違う、恐怖に近い感情だった。


「そいつは竜獣王を殺したあと、何らかの能力で俺達の記憶と感情を支配した。重役や俺達のような軍の精鋭はある程度の感情は与えられたが、逆らった瞬間に殺された」

「そして、今にいたる…と?」

「そういうことだ」


俺はその話を聞いて、最後に質問した。


「その女の特徴を…知っているか」


そう聞くと、ロンは応える。



「あいつは、全身ローブで覆われ、左目を輝かせた女だった」



時系列は現在に戻る。

俺はゼイを見る。

奴は全身ローブに覆われ、ローブからは一筋の赤い光が見える。

特徴が少ないからあれだが、酷似しているのだ。


「…洗脳…か…」


そして、ゼイは言葉を放つ。



「まぁ、洗脳と言われれば、そうかもね。少し違うけど…あえて言うとしたら…『共鳴』かな?」



やはり、竜獣を操っていたのはゼイだった。

そしてそれと同時に、俺は気づく。


ゼイは、戦闘を得意とする竜獣の王を殺せるほどの実力者ということに。



「他に質問はあるかい?」


ゼイはそう聞いてきた。

そして、俺はこう言う。


「ない」


「そう?ならどうする」


その言葉の後、俺の足元から影が広がる。



「ここで討つ!」



「じゃあ…足掻かせてもらおうかな?」


そう言って、ゼイは右手を出す。

俺は杖を構え、ゼイに向けるのであった。

おまけ話

実はレオリオスは帰還後、ドーラ師匠から「天地一閃」を教えてもらった。

他の剣術も模倣眼などを使ってやってはみたが、できるようになったのは「天地一閃」だけだった。

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