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109話 深き緑

時刻は夜。

この日の夜は慌ただしかった。

村は静寂に包まれているが、我が家はそうではなかった。


「ニナさん。体調はどんな感じですか?」

「今は…落ち着いてます」


医者の呼びかけに、ニナはそう答える。

この日の夕方頃、ニナに陣痛が起きた。

俺はその後、診療所に駆け込み医者を呼びに行った。

医者を家につれてきたあと、村の各所にいた家族を呼びに行き、家に集まった。

家に集まったあとはニナに付き添い、今にいたる。

ニナのところには医者とルカがいて、3人で出産のサポートに当たった。

カーラが帰ってくると、ルカとカーラが交代し、ルカは他のみんなに食事を提供しに行った。

俺はその間もずっとニナの元にいる。


「レオも1回ご飯食べてきたら」


カーラは俺を見てそう言った。


「いや。いさせてくれ」


その呼びかけに、俺はそう答えた。


たしかに、一度食事に行ったほうがいいとも思った。

しかし、それ以上にニナのところにいたいという気持ちがあった。

これまで戦線に行ったり仕事があったりで、ニナとはほとんど一緒に入れなかった。

この時くらいはそばにいてやりたい。

そういう気持ちが働いたのだろう。


「…わかった」


俺の目を見て、何かを察したのだろう。

カーラはそれ以上何も言わなかった。






「大丈夫ですか?」


ある程度時間が経った頃、ルカが帰ってきた。

他のみんなは「部屋が狭い」という理由があったため、下で待っているらしい。


「ニナ〜」

「大丈夫?」


待っているとは言ったものの、定期的にラーラやエルが様子を見に来た。

サークル仲間として、心配してくれているらしい。


「ラーラ…エル…」


ニナはそれに対し、弱々しくも応える。


「平気だよ。心配しなくても大丈夫だよ」


それを聞いたラーラとエルは少し安心した顔をした。

そして下に戻っていった。






「あ…」


「「「え?」」」


「い…痛い」


「「「き、来た!?」」」


しばらくすると、ニナの何度目かの陣痛が来た。

それを見た医者は、


「多分、ここで出ます!」


「「出る!?」」


出る。

つまり「もう産まれる」ということだ。


「はい、ニナさん聞こえますかぁ。痛いかもしれないけどがんばってくださいね」

「は、はい」


医者の呼びかけに、ニナは何とか答える。


「はい!力んでください!」

「うぅぅぅぅ!!」


そして、唐突に出産が始まった。


「俺は何をすればいいですか!?」

「治癒魔術をかけながら、ニナさんの近くにいてください」

「はい」


俺は治癒魔術を発動しながら、ニナの手を握った。


「頑張れ…」


俺は願うようにそう言った。


「あ、ルカさんとカーラさんは私の手伝いをお願いします」

「「はい!」」


医者の呼びかけに応え、ルカとカーラは医者のサポートを始めた。


「あ!頭!」


医者はそう言った。

どうやら頭が出てきたらしい。


「頑張れニナ!もう少しだ」


俺はニナに呼びかける。


「はい!もう1回力んで!せーの!」

「うぅぅぅぅ!!!」


この工程を永遠と繰り返した。

俺はひたすらニナと子供の無事を祈り、ニナの手を握った。

そして、




オギャァ!オギャァ!……




部屋に鳴き声が響いた。


その声は強く、そして心に突き刺さるように聞こえてきた。



「おめでとうニナさん。男の子です」


遂に、子供が生まれた。

それを聞いた瞬間、俺とニナの目から涙が落ちた。


「うま…れた…」

「やっと…」


「「はぁ………」」


俺とニナは少し泣いたあと、同時に安堵のため息をついた。


「ニナさん。どうぞ」


俺達がそんな反応をしていると、医者はニナに赤子を渡した。


「これが…私達の…」


赤子を見た瞬間、ニナは再度涙を流した。

そして、ニナは俺に赤子を渡してくる。


「レオも」

「あ…あぁ」


俺はニナから赤子を受け取り、抱きかかえた。


そして、俺の目からも再度涙が落ちる。


「…ありがとう…ニナ…」


俺はニナに向けてそう言った。


「レオ…名前…どうする?」


ニナは俺に対して聞いてくる。

そして俺は少し考え、こう言った。



「『レオニス』…は、どうだろ?」


俺の「レオリオス」と「ニナ」からとった安直な名前だ。

けれど、それでもこれがいいと思った。


「安直だけど、私達の家らしいんじゃない」

「いいと思います」


俺の発言に対し、カーラとルカはそう言った。


「うん…いいと思う」


ニナはそう言うと、再度赤子を抱いた。


「これからよろしくね…『レオニス』」


こうして、俺達に遂に新たな家族ができた。

その子はカーラいわく、目の色はニナと同じ緑だが、顔が少し俺に似てるとのことだ。

その後、俺とニナはレオニスを抱きかかえながら、小さく笑い合った。

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