108話 自宅待機でできること
終戦から5ヶ月。
季節は冬となり、雪が降り始めた。
この時期になり、遂にニナは動けなくなってしまった。
いや。
正確には動けないと言うより、「動くな」と言われているのだが。
そんな中、俺はニナに付き添いながら魔術の研究をしていた。
終戦後は後処理の関係で主にエイサール周辺の復興を手伝っていた。
だが、最近は「できるだけニナと一緒にいなさい」と言われているため、自宅待機を命じられている。
だが、俺の立場上、何もしないわけにもいかない。
さらに、この前のジンからもたらされたゼイのこともある。
終戦はしたものの、いつゼイ関連のこと、あるいは他のことがあってはたまらない。
そのため、俺は自宅にいながらひたすらに魔術の研究をしている。
ここ2週間くらいは、ニナと一緒の部屋で作業をしている。
「…レオ?」
俺が作業をしていると、ニナが話しかけてきた。
「今は何の研究をしてるの?」
「あぁ。魔術を纏う練習をしてたんだ」
「魔術を纏う?」
俺が今研究しているのは「魔力被り」という魔術だ。
この魔術は、かつて戦った「ソオ・ラップ」が使っていた魔術だ。
ソオはこの魔術を剣や体に何重にも重ねていた。
模倣眼で解析はしてみたものの、仕組みはわかったがうまく再現できなかった。
俺はこの魔術には活用法が多数あると考え、この期間に研究することにした。
しかし、進捗的には詰まっている感じだ。
「…ねぇレオ」
俺が研究を続けていると、ニナは再び俺を呼んだ。
「暇だからさ…なんか話そうよ」
俺はそれを聞いて、とある事を考えた。
そういえば俺…終戦後あまりニナと話してなかったな。
今のような時間は今後減るだろうし…
「…そうだな」
俺はメモに使っていた筆を置き、ニナの方を向いた。
「最近のカオルちゃんはどんな感じ」
「最近はサラさんと衝術の練習をしてるよ。結構楽しいみたいだぞ」
「魔術の方は?」
「時々一緒に練習してるよ。けどまぁ、あいつは衝術の方が才能ありそうだし、今も特級魔術使えるし、今のままでも大丈夫かなって感じ」
俺とニナは日常の話で盛り上がった。
というのも、平和になったとこの前言ったが、俺達の生活には少し変化があった。
まずはサラさんについてだ。
サラさんは最近、我が家の別邸に住んでいる。
住み込みでカオルに衝術を教えてくれているみたいだ。
食費の消費が増えたというのは…ココだけの話だ。
さらに、ルカが我が家の料理担当として、最近は朝昼夜全て作ってくれている。
「こっちのほうが好きです!」って言って、かなりウキウキで料理をしている。
他にも結構あるが…まぁ、小さなことだしここまでにしよう。
「不思議だよね〜…」
二人で話していると、ニナがそう呟いた。
「何が?」
「私達がこの村で出会ったのが5歳とか6歳の時で、気づいたら2人とも18歳になってて、気づけば子供まで出来て、何というか…」
「…感慨深い?」
「そう」
ニナはそう言って、余韻に浸ったような顔をしている。
…たしかにそうだ。
俺とニナが出会ったのは、俺が6歳で、ニナが5歳の時だ。
そして襲撃によって別れて、再開したのは7年後のドラマルトでの学校内。
その時はニナはカナルという偽名を使っていて、さらには分身だったから俺は気づけなかった。
その後、俺が正体を知るのは1年後の冬のソオとの戦いの後のことだ。
そこから付き合い始めて、去年結婚した。
そして今にいたる。
考えてみればいろんなことがあった。
そう考えてみると、俺も感慨深い。
「そういえばレオ。子供の名前とかなにかある?」
俺が考えていると、ニナがそう聞いてきた。
「名前か…そもそも性別もわからないからな…」
「じゃあ、男の子と女の子どっちも考えて」
「りょ、両方!?」
俺は動揺した。
突然そんな事言われてもな…
「アハハハッ!」
俺が困っていると、ニナが笑った。
「…え?どうした?」
「いや…その顔見てたら、レオがカオルちゃんの名前考えてたときのこと思い出しちゃった」
「あぁ…そんな事もあったな」
俺はそれを聞いた瞬間、思わず笑ってしまった。
「あの時は驚いたな〜。カーラ姉さんが突然そんなこと頼んできたんだもん」
「その時と全く同じ顔だったよ」
「え?そうだった」
「うん!」
俺とニナはそんな話をしながら笑い合った。
そんな話をしていると、気づけば夕方になっていた。
「もう夕方か」
「そうだね」
俺とニナは窓の外を見た。
窓からは夕方の村と我が家の庭が見えた。
庭にはサラさんとカオルがいた。
どうやら衝術の練習をしているようだ。
「カオルも大きくなったよね」
「そうだな〜。もう11歳だもんな…」
「逆にすごいよね!11歳であんなに戦えるの」
「フッ!たしかに!」
コンコンコン!
そんな話をしていると、扉がノックされた。
「失礼します」
扉が開かれると、扉からルカが入ってきた。
「ルカか。どうした?」
「もうすぐ食事が出来上がるから、呼びに来ました」
「そっか。もうそんな時間か」
ルカの呼びかけに、俺とニナは立ち上がった。
そして、今に行こうとした。
その時だった。
「ヴッ!!…」
立ち上がった瞬間、ニナが動きを止めた。
「え?どうしたニナ」
ニナを見ると、少し苦しそうな表情をしていた。
そして、ニナはこう言い放つ。
「お腹が…痛い…」
「「え?」」
ニナの言葉に、俺とルカがハモる。
「今までよりも…もっと痛い…」
「え!?」
…俺の脳内は混乱した。
そして、一つの結論にたどり着く。
これって…
「陣痛!?」
その後、俺は家を飛び出し、診療所へと駆け込んだ。




