107話 忠実に味、作りました
終戦から4ヶ月。
俺が村に帰還して1ヶ月が経った。
村には平和が戻り、村人も戦前の生活に戻っていた。
しかし、俺の生活には変化があった。
というのも最近、ニナの出産が本格的に近づいてきた事により、それまでニナがやっていたことを俺が担っている。
村の診療所に行ったところ「あと1ヶ月くらいで産まれるかな?」とのことだ。
俺が戦場に行っている中、ニナもニナで頑張っていたようだ。
その分、俺がサポートしなければ。
そんなある日のこと。
村にとある人物が訪れた。
「よぉ!守」
「純…いや、ジンか…なんでここに?」
その日、村にジン・ゴートが訪れた。
彼は俺の前世の同級生でバンド仲間であった「進藤 純」の転生者であり、転生者達で作られた日本の文化を広める「ジャイフ」のリーダーだ。
「戦争が終わって、ケーズバルトまで来たから、ついでに寄ってみようかなってな」
「ついでで寄る距離じゃないだろ…」
俺は少しため息をつきながら、家の中に入った。
「まぁ来たならしょうがない、家に入れよ」
「あぁ。お邪魔します」
中に入ると、居間にはニナとカオル、カーラがいた。
「あれ?カーラ姉さん。今日は仕事じゃないんだ」
「ニナの出産が近いからね。休みもらってきた」
どうやらカーラもニナのサポートをしてくれるらしい。
「…おい守…じゃなくてレオリオス。この人たちは?」
「あ。そういえば紹介してなかったな」
俺はその場にいた三人を軽く紹介した。
「まず右にいるのが『カーラ・パルト』。俺の姉だ」
「どうも〜」
「あ、どうも」
「そして、真ん中にいるのが『カオル・パルト』。俺の妹だ」
「よろしく願いします」
「んで、左にいるのが『ニナ・パルト』。俺の妻だ」
「…よろしくお願いします」
「なるほどな……ん!?妻!?」
俺の発言に、ジンは驚いた。
「ちょっと待て!?お前結婚してたのか!?」
「え?あぁ…そういえば言ってなかったな」
「てか…見るにもしかして…妊娠!?」
「…あと1ヶ月くらいで…産まれる」
「はぁぁぁぁ!!?」
ジンはあまりの事実に衝撃を受けていた。
「…まず、お前と俺が別れたあとのこと聞いてもいいか?…」
「お、おう」
俺はこれまでの旅と生活について話した。
「なるほど…そんな感じだったのか…」
俺がこれまでについて話し終えると、ジンは立ち上がった。
「まず状況はわかった。疲れてるだろ?今日の飯は俺が作ってやるよ?」
「え!?いいのか!?」
「あぁ。てか、そのために来たからな。調理場借りるぞ」
そう言って、ジンは調理場の方に消えていった。
「…ねぇレオ。彼とはどういう関係なの?」
ジンが去ると、ニナがそう聞いてきた。
「あぁ…みんなには話していいか」
俺は「ジン・ゴート」こと「進藤 純」と俺との関係について話した。
「へぇ〜。彼も転生者なんだ」
「あぁ。俺はその時からの仲でな。ジークバルトで再会した時は驚いたよ」
「…なんか話してるな」
そんな話をしていると、ジンが帰ってきた。
「早っ!?もう出来たのか?」
「まぁ、即席麺だし」
ん?
即席麺?
何のこと言ってるんだ。
「んで…と、ラーメンお待ち」
ジンが持ってきたのはラーメンだった。
けれど、少し違った。
ラーメンの上には野菜が乗っていた。
「一応、妊娠中の人がいるんでね。栄養を考えてみた」
「え?ニンシン?」
「ん?なんか俺、変なこと言った?」
「ジン…この世界では妊娠は妊娠って言わないらしいぞ」
「え!?そんな違いあんのかよ!?」
俺はそんな会話をしながら、ジンに聞く。
「おい。さっき即席麺って言ったよな…まさか…」
「あぁ。俺らの知る、『袋ラーメン』だ!」
「え!?フリーズドライとかこの世界でできんの!?」
「まぁ、物理法則は変わんないからな」
そう言うと、ジンは席についた。
「まぁまぁ皆さん。食べてみましょう」
「あ、あぁ。そうだな」
俺達は箸を持ち、手を合わせる。
「「「「「いただきます!」」」」」
ズルズルッ…
全員が一斉に音をたてて麺をすする。
「あ!美味しい」
「お兄ちゃんが作ってくれたのと違う味がする!」
「…悪くないわね」
ニナとカオルとカーラは絶賛していた。
対して俺は…
「…ジン…まさか、これは…」
俺はジンの方を見る。
ジンは「フンッ!」と笑い、口を開く。
「あぁ…お前の大好物の…」
…!?
「「塩ラーメン!!」」
それはかつて、学校では完成品を食べられなかった塩ラーメンだった。
「まさか…完成してたとは…」
「…家事が出来ないんなら、インスタントはおすすめだが…」
俺が感心していると、ここぞとばかりにジンは言った。
…なるほど。
こいつの今日の目的が分かった。
「…押し売りか」
「まぁ、それもあるけど、お前にこれの評価をしてほしくてな」
ジンがそう言った。
評価か…
「…インスタントとしては100点」
「よっしゃあ!!」
俺がそう言うと、ジンはガッツポーズをした。
「…んじゃ、俺はそろそろ」
俺達が食べ終わると、ジンは荷物をまとめ始めた。
「もう行くのか?」
「あぁ。ケーズバルトでやることもあるしな。さっさと戻ろうと思う」
そう言って、ジンは玄関に行き、扉を開けようとした。
「あ、そうだ。お前に伝えようと思ったんだ」
ジンはそう言って、俺の方を向く。
「なんだよ?」
「お前が探してた『ゼイ』って奴の情報だ」
「…は?」
俺はジークバルトで会った時、ジンにもゼイについて伝えていた。
俺と別れたあと、ジンは情報を集めてくれていたらしい。
「なにかあったのか?」
「役に立つかはわからんがな」
そう言って、ジンは言葉を続ける。
「マントシティにいたジャイフのメンバーからなんだが…あいつ、海の向こうから飛んできたらしい」
「海?」
「あぁ、ただの目撃情報なんだがな」
俺はその時、疑問が生まれた。
というのも、この世界の海の向こうはなにもないとされている。
それなのに、あいつが海の向こうからやってきた?
………。
「すまん。これくらいしか情報がなかった」
「いや。これだけでも助かる。ありがとな」
「おう。んじゃ、またな」
そう言い残し、ジンは村を去った。
「…調べてみるか」
俺は自室に戻り、調べ物を始めるのだった。




